次世代人とは何か? その3
あたしはマリア。唯のマリア。
例えばね、どれだけ人殺しの能力に長けていても、法がその自己アピールを好しとしない限り、唯の人間なの。
だから、あたしは唯のマリア。
「恥ずかしい?なら、あたしの部屋でもいいのよ。」
あたしの、あたしの声で動揺する彼女が眼前にいる。顔を赤らめて、ほんとに可愛い。
「私の、その……」
「全部よ、もちろん。」
彼女の言葉を遮り、おそらくその先に続いたであろう質問に答えた。
「言えば。」
意外にも彼女の返答は淡泊だった。イタズラを母親に報告される。その程度のトーンだった。
「あら?あなた何か勘違いしてるの?」
「?」
「罪を償わせたいわけじゃない。ただあたしは、キスしたいの。そう、情熱的に。」
自分がすべき行動を決めあぐねているのかしら。いえ、そもそも何か判断を下せる状態じゃないのね。でも、全く動じていないかのような、その物言いだけは変わらない。
「なら、まずはお互いを知りましょう。」
彼女はそう言い放ち、歩き始めた。
「あたしは、あなたを見ていたの。そう、ずっとよ。」
「それから?」
「恋をしたの。あなたをいつも見てた。だから、あの日は狂いそうだったわ。」
「目撃たのね。」
「あの男は許されない。あの程度のことで、あなたの味を知るなんて。ああ、こっちよ。」
あたしは、彼女を自らの家へと誘う。
従順、無抵抗、諦め。どれなのか。いや、全てなのかも。それらが彼女の人生なんだろうか?
あたしは貪った。初夜を迎えた男のように。
「満足?」
苦痛と、その先の快楽に顔を歪ませる彼女は、美しくいとおしかった。
「好きよ。あなたの醜い自己愛よりも、あたしの想いはもっと醜くて汚いの。」
「私はあなたが好き。そしてあなたは私が好き。」
「どうしたの?そんなに良かった!?」
「興奮しないで。最後まで聞いて。」
「ええ、分かった。」
「そんなの不純だと思わないって話。私が私を好きで、あなたは私を好き。よっぽど、純情よ。」