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作者: make

些細な日常に違和感を覚えた幼稚園の頃。


仲良くしていた幼馴染の男の子との、子供ならではの微笑ましい口約束。


「おおきくなったら、けっこんしようね。」


この時感じた不思議な感覚は一瞬で消え、私は首を傾げながらも

「うん。」と答えた。

約束の証としておもちゃのブローチをくれた男の子は、半年後に引っ越していった。





小学校の高学年になると、サッカーが上手くて、勉強もできる同じクラスの男の子が急にモテ始めた。


バレンタインには沢山のチョコを貰い、遠足では同じグループになろうと争奪戦がおこり、靴箱にはラブレターが…という大人気の男子、葉山君とまさかの同じ学級委員だった私。


なりたかった訳じゃない。あみだくじで決まったんだ。


何かとペアにされていたから、他の女子からの視線が痛かった。

イジメには発展しなかったけど、圧力に日々怯えていた。






中学生になると、ちょっと危険な香りのする不良の先輩が人気だった。

不良なのにどうして人気だったかというと、単純にイケメンだったからだ。


いくらイケメンでも関わりたくない小心者の私だったが、何故か不良先輩とよく遭遇した。


図書室や帰り道、近所の公園など。


怖そうな見た目だが実は動物好きで可愛いものや甘いものも好き。

という情報を知っている程度には親しくなった。






幼い頃から感じていた違和感は、成長すると共に自分の中にスッと溶けるように馴染んだ。


結論から言うと、私にはおそらく前世の記憶というものが存在した。

いや、記憶というよりも知識があった。

その知識も、きっかけがなければ思い出せない。


例えば勉強。

初めて習うはずなのに、あぁそういえばこうだったなとまるで復習をしているような感覚。


前世の私がどんな人間だったのかはわからない。

名前も、性格も、家族についても。

でも、女性だったことは確かだ。


今生で初潮が訪れたのは小学6年生の夏休み。

感じたことのない鈍いお腹の痛みに戸惑ったのは一瞬で、すぐにあ、生理か~と納得し、慣れた手つきで処理をしたのを覚えている。

さすがに男性にはわからない痛みだからね。



生活していく上での知識はそうやって少しずつ思い出していったが、それとは別にずっとモヤモヤとしていたものがある。


でも何に対してモヤモヤするのかもわからず、モヤモヤするタイミングも関連性が掴めない。

不思議に思っていたある日、全てを思い出す切欠となる出来事が起こった。






中学3年生。

受験も終わり、第一志望校に無事に合格して一安心という時期のこと。

放課後の校内で高校生になった不良先輩に会った。


私が知ってる先輩は、制服を着崩し、きんきらきんの長髪を無造作に遊ばせて、鋭い眼光で周りを威嚇する野生動物みたいな危険人物だった。


それが今目の前にいるのは、私の志望校でもある高校の制服をピシッと着こなし、自然な茶色で清潔感漂う髪型の爽やかイケメン。

目元のホクロを見なければ先輩だと気付けなかったと思う。


ふんわり自然な茶髪は地毛で、クオーターである先輩はそれが原因で小さい頃イジメられてたそうだ。


自棄になっていっそ金髪にと染めてみたものの、今度は近寄ってくるのは不良達ばかり。

だんだん人間不信気味になり、気づけば本当にグレてしまう。


試しに売られた喧嘩を買ってみた所、圧勝してしまい、あっという間に不良達のトップへ。


群れるのは嫌い、信じられるのは自分だけ。


頭だけは良かったけど、そんなザ・不良からいきなり好青年にシフトチェンジした先輩曰く、


立ち直れたのは私のおかげで感謝してる。


偏見を持たずに接してくれて嬉しかった。


バレンタインに貰ったチョコレートクッキーの味が忘れられない…

などとおっしゃいました。が!

先輩、全然違います!


私は近づくの思いっきり嫌がってたし、むしろ遭遇しないように避けてたし!


何故か二人きりになることが多かったけど、怒りを買わないように常にヘコヘコして。


バレンタインだって無理矢理じゃないですか!


あんな持ってこないとコロスみたいな目で脅されて、無視できる人がいますか!?

すっごく慎重に作った自信作のクッキーだったけど、結局一口食べて「ふん、まぁまぁだな」しか言わなかったくせに!



先輩の真意がわからず、曖昧な返事をしていると急に壁に追い詰められ、顔の横には先輩の腕が。


額が触れそうな至近距離で目元を染めた先輩はこう言った。




「お前が好きだって言ってんだよ!…っ気付けよ!」



この瞬間、ものすごい数の単語が頭の中を飛びかった。




乙女ゲーム


攻略対象


イケメン


ヒロイン


幼馴染み


王道


ツンデレ


壁ドン


フラグ






そして気づいた。


そう、これはフラグだ!

しかも今まさに回収しようとしている!


え、これどうするの?と思たのは一瞬で、すぐに頭は高速回転する。


ここでフラグを回収するイコール先輩とラブな関係に…


それだけは絶対にイヤだ!

周りからの視線や陰口に耐えられない!


だいたいイケメンは好みじゃないのに昔から何故か周りのイケメン率が高くて、しかもかなりの確率で親しくなってしまう。


おかしいと思ってたんだ。


だけど、ようやく理解した。フラグだっのだと!


恐ろしすぎる…



とりあえず、照れて油断している先輩を突き飛ばし足払いをかけ、すぐに追ってこれないようにした後 、素早くお断りの言葉を伝えて逃げた。


全力ダッシュした。帰る前で鞄持っててよかった!





家に帰ってからフラグについてじっくりと考察してみる。


先輩のフラグもまだ完全に折れてないだろうから不安だけど、それよりもこれまで無意識に立てていたであろうイケメン達とのフラグが怖すぎる。


幼稚園の時の幼馴染みなんて確実に再会フラグが立っている!


乙女ゲームじゃあるまいし、ましてや私はヒロインでもない。

なりたくもない!


私はキラキラしい顔のイケメンよりも、穏やかで笑顔が優しいフツメンが好きなのだ!


恋愛対象はフツメンです!




これからは今までのフラグを折りながら、新たなフラグを立てないよう慎重に行動しなければ。


大丈夫、私には前世の知識がある。かなりの量だ。


こんなにどっさりあるということは、かなり乙女ゲームやその他二次元にハマっていたんだな…


前世の自分がちょっぴり怖い。









さて、ひとまず進学先を女子高に変更しようか。

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― 新着の感想 ―
[一言] そして転校先の女子高で百合百合しい学園生活を送るのですね
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