変な学校 〜番外編1〜
これは、自分が書いた「変な学校」と言う作品を、割とコメディータッチで書いた番外編です。
とりあえず、深く考えずにお読みください^^
週末の晴れは最高の気分どころじゃない。
最悪の気分になる(ため息)
確かに今日学校へ行けば明日、明後日は休みだ。晴れているのだし、普通ブルーにもならないだろう。
けどそれが、ブルーになる要因なんだよな…
僕は伊井森 耕輔。
ここは僕の家で、僕は今洗面所にいる。朝食の前の眠い目を醒ます為に洗顔中だ。
そこに、「とことこ」と聞き慣れた足音が近づいてきた。この足音は…鈴だな。
「おはよ〜…」
「おはよう、鈴」
早朝だからか、鈴はとてつもなく眠そうな顔をしているが、実はこれは違う。早朝だからではなく、ある人物のせいで夜眠れなかったから、その通り眠いのだ。
「昨夜もあいつに抱き枕にされたのか?」
「うん…」
…;ホント仕方のないやつだな、アイツ;
「今日金曜だから、お昼ゆっくり眠るといいよ。明日になったら、最悪眠れなくなるかもしれないからね」
「うん、そーするー…」
眠そうな目をこすりながら、鈴はまたとことこと寝室に戻っていった。
…難儀な子だな;
洗顔を終わらせ、ダイニングに向かった。
「起きたか、耕輔」
見えない所から、鏡が挨拶してきた。大して物音を立ててないにも関わらず。まあなんていうか、彼は物凄く耳と勘がいいからそんなことが出来る。いや、出来るんじゃない。無意識ににしているのだ。
「今日も早いね、鏡」
姿は見えないがこちらからも挨拶する。
「当然だ。朝食は一日の原動力、いわば最重要補給物資。それなくしては戦争も出来ん」
「いや、しなくていい;」
席につこうと前に向き直ると、いつの間にやら白髪の少年が立っていた。
「おはようございます耕輔さん」
が、耕輔は驚かない。これで“普通”、“日常”だからだ。
「おはよう雄谷」
彼は挨拶をしてもニコリともしない。これもいつものことだ。で帰ってくる言葉が
「今日も髪型変ですね」
「ほっとけ;」
だ。ってかこれはイレギュラー行為でいいだろ;
席に座り、携帯を少しの間イジってから気付く。
「あれ?アイツどうした?」
「ああ、ヤツなら隣の智香の家へ行ったぞ」
「ああ、そう…」
朝もはよからこんにちはですか…。まあこうゆうトコも普通だったりするんだけどね;
「それよりメシが出来たぞ。鈴はどうした?」
「寝なおすって」
それだけ言えば鏡には通じる。
「そうか。なら今日はお前が食料を運べ。お前だけ働かんと言うのは尺だ」
「はいはいっと…」
僕は席を立って、キッチンに向かった。
朝食が終わって、鏡がガチャガチャと食器を洗っている時間、TVを見て気付いた。
「もうこんな時間か…」
アイツを迎えに行かなきゃまずいな。いや、でも智香さんがいるんだし、大丈夫か?
智香さんは、まれに見る優等生でかなり真面目な人だ。律佳がそこにお邪魔してるんだから、任せて大丈夫のハズだが。
いや、駄目だ;
以下駄目な理由:
過去、アイツと智香さんとで外で会話していた時、車が制限速度無視で、やや律佳に当たりそうな角度で突っ走って来たことがあるのだが、なんと智香さんは「○○ちゃん(アイツの名前)が轢かれるかもしれない」と言うある意味超妄想的なことを思い、壁に埋まるほどの力でアイツを突き飛ばし、大の字で突っ立ったあげく吹っ飛ばされたことがあった。嘘ではないし、その場で見た僕が言うんだから何の間違いもない。
結局重傷を負った“車の運転手”を、壁にぶっ飛ばされた“アイツ”が運んだ。
ちなみにおもいっきり轢かれた智香さんは、“服まで無傷”だった。
以上。
…今思っても無茶苦茶だが、全部本当のことである。
やっぱり智香さんの家に行こう!!;今更ながら二人にしておくのはまずいッ!;
っつか気付けよ自分!!;
「鏡、智香さん家行って来るッ!」
「ああ。…気をつけてな」
あたぼうよ!!;
「おっはー!!こうすけぇ!」
「…お…おは…ってーかイテェ…」
何が痛いのか…
わかりやすく言うと、ドアに挟まれました。
「それ、わけわかめですよ」
ッ…智香さん、ダジャレ突っ込みってないで…助けろよ…。
僕の意識はそこで潰えた。
「寝ている耕輔クンの代わりに私が説明致しますね。
まず耕輔クンはインタフォンを押しました。
しかし家のインタフォンはカメラ付き+電話付きで、まず相手の顔、姿、声を確認するんです。
ですが確認をしようと思った所、家に来ていた“律佳”ちゃんが、耕輔クンの気配にいち早く反応して、私の、耕輔クンに対する電話越しの問い、『どなたですか?』に、耕輔クンが答えようとマイクに体ごと顔を近づけた所、あのような惨事に…」
「…冷静ですね」
「あら。起きてらしたんですか?」
「ええ、『カメラ付き+電話付き』あたりから」
「そうだったんですか…」
「ちなみにアイツってのは文中の律佳って人のこ」
「おっはーこうすけぇ!」
忌むべき甲高い女の声が聞こえた瞬間、僕の体に物凄い衝撃が!
「どぅわっ!?」
目の前は真っ白い世界になった。
「耕輔くん!?」
智香さんが僕の肩を優しく掴んで、上半身を起こしてくれた。
そのおり見えたが、どうやらここは学校の保健室で、俺は今“アイツ”の一撃で前に座ったままのめったらしい。しかしなぜ学校でしかも保健室にいるんだ…僕。
「…よかった、無事のようですね…」
「いや、よかないですよ。ほら、セットした髪がグシャグシャに…」
「まぁ本当…より変な髪形になってしまいましたね…;」
うわー。傷つくなぁそれ。
「それより、律佳」
「はぁい♪なぁに?」
紺のセーラー服、大きな赤いリボンに太股まである長いおさげ、幼い輪郭に大きな緑の目の少女、朔未 律佳が、そのおさげを揺らしながら答えた。
この少女こそ、例の“アイツ”。先ほど僕をドアに挟み、僕を後ろから殴った張本人だ。
「ドアくらいゆっくり開けろよ」
「 ? 何の話?」
お前何分で自分のしたこと忘れるんだよ。と言いたいが、恐らく『五秒くらい』がオチなので、
「…やっぱりいい…」
やめておこう。
ん?何分て咄嗟に言ったけど…
…僕が寝ていた気絶していた時間は、本当に分単位なのだろうか。外は見た感じ、まだ朝方だが…。もしかしたら何時間も眠っていたのかも知れない。
「智香さん、僕が気絶していた時間って、どれくらいですか?」
「ん。約…20分と22.4509秒程度です」
それ正確過ぎて逆に分からないですよ…。
とりあえず21分くらいか。余裕だ。
「ねーこうすけー…」
お。珍しい。反省してそうな声だ。しかし
「お前とは今喋りたくない」
僕が余計なこと言いそうだから。悪い。
…いや?余計じゃない、普通なんだけど、とりあえずそれ一回言うにつき、パンチ一発の代償があるだろうから、結果的に言わない方が利口だろう。
「むぐ」
律佳が口を一文字に引き絞った。やはり反省してるんだけど…。
「ヒドイですよ耕輔クン!」
「いや、そうでしょうけど──」
と言っても智香さんは構わずまくし立てる。
「年頃の女の子が己の罪を認めて、男性に対して反省してるんですよ!?それを『今喋りたくない』って気分的な答えで返すんですか!?」
最悪の表現法だ…;どう聞いても僕が悪者としか聞こえない…;
「そうだそうだ!私に失礼だ!」
開き直ってますやん。
「とりあえず、話くらい聞いてあげたらどうです?」
「…そうですね…」
保健室の先生が僕の顔を怪訝そうに見ていることだし、話くらいは聞いてやるか…。
「律佳。言いたいことがあるなら、言ってくれ」
「う、うん…あのね」
律佳は珍しくモジモジしながら話し始めた。…でもこう言う時って、嫌なことしか起こったことないんだよな…。そう、律佳が自然なこと自体、不自然なんだ;
「さっきは…ごめんね?痛かったでしょ…?」
「う、うん…気絶するほ」
「こうすけが起きたから、嬉しくて、ついさ…」
…ああ、ドアじゃなくてそっちね。ってーかついってお前。
「…だ、だからぁ…おわびと言っちゃなんなんだけどぉ…」
律佳が顔を赤らめ、体を意地らしく揺らしている。
うっわ。何かすっごい嫌な予感がする。
「じゃんけんしよう!!」
…何のお詫びだ、それ。
いや、ここで突っ込むのは簡単だが、じゃんけんくらいなら…全然、いや問題は全くない。
「分かった。律佳、よく分からんがじゃんけんしよう」
「だからお詫びだって言ってるじゃん。頭ワルいな」
どっちがッ!;
ま、まあいいか…
「さーいしょーはグー…」
…ん?
どうして律佳はグーさえ出さないんだ?
いやそれどころか、人差し指を顎下に当て首まで捻っている。まさか…;
僕は多少勘付きながらも、律佳の答えを待った。結果、
「グーってグー?」
多少読めていたけどまさか、
こっからとは!;
「い、いいよ;分かった;」
じゃんけんをしようと提案した律佳が、「何でじゃんけん知らないんだ」って突っ込みは、もうこの際しないよ;
「いいか?律佳。じゃんけんって言うのは、要するに“石”と“ハサミ”と“ヤスリ紙”なんだ」
「うんうん」
「じゃあ実際それを使ってやってみようか。律佳、持ってきてく──」
「あ、私持ってますよ。どうぞ」
智香さんが、石とハサミとヤスリ紙を懐から取り出し、手渡してくれた。
どーしてこんなもん持ってるんだ、この人は;
「あ、ありがとうございます…;」
「いえいえ♪」
「じゃあ律佳、説明の続きをするぞ?石はだな──」
僕は律佳に、“石”は“グー”、“ハサミ”は“チョキ”、“ヤスリ紙は”“パー”、と言う説明はせずに、モノで直接に、じゃんけんと言うのを教えた。
…グーやらパーやらで教えると、最悪殴られかねないからだ;
教えた後、律佳は条件をつけてきた。
「じゃあ負けた方が勝った方の言うこと聞くってことで♪」
お詫びじゃなかったのか。
と言うのも今更おこがましく、とりあえずそれで納得した。勝てば律佳におとなしくしていろと言えるわけだし、何より負けないだろう。相手は素人だ。
…そして、数回の勝負ののち、勝負は決した。
「きゃは〜w私の勝ちだね!♪」
僕は…
完全敗北した…orz
そもそも運で生きているような奴だ。勝ち目は最初からなかった…。
「じゃあ、耕輔、負けたんだから言うこと聞けよ?」
…コイツのことだ、ロクな要求して来ないだろう…;
「なあ律佳、お詫びじゃなかったのか?おかしいだろこの展開」
僕がそう言うと、律佳はピクリと神経を怒らせて、
「あ?負けといて今更なに言ってんの?ハサミで鼻毛斬られたい?」
すると智香さんも怒りのオーラを全身から立ち上らせ、
「そうですよ耕輔クン。ヤスリで全身の毛と言う毛を削られたいですか?」
「す、すいません…言うこと聞きます…」
…理不尽だっ;
結局この日、耕輔は“律佳の言うこと”を聞き、早退となった。
三日後…
よく晴れた月曜の朝だった。
「タイクツだー」
いつものように彼女、律佳は机に突っ伏してあくびをしている。その姿は、愛玩動物にも匹敵する。
本編では一言も零れないのだが、こうやってくつろいでいるときの彼女は、やたら可愛く、猫に劣らないほど愛嬌があるのだ。本編でこうゆうことに触れないのは、耕輔が恋愛感情を微塵にも持っていないからだと推測出来る。
「よぉ律佳、またヒマそうじゃん?」
耳に騒がしくはないが、やはり騒がしい、いつもの朝、律佳の隣の席は耕輔だが、その反対の席の男子が彼女に声をかけた。ちなみに今日耕輔はお休み、理由は腹痛を伴う風邪、熱アリだ。
「ってかぁーヒマなの〜」
ぶぁーと言いながら体を伸ばす律佳にその男子、渡里 海、通称ハト(由来は、海を越えるのは鳥だからと言うことだが、ハトは越えただろか)が、面白いがワリと面白くないハナシをもちかけた。
「あ、律佳よぉ!ジャンケンしよーぜ!!」
微妙である。
「ジャンケン…?」
ぼけっと彼を見るあたり、彼女はジャンケンを知らないらしい。こうゆうことはよくある。
「何だ。お前知らないのか?」
「うん」
「メンド臭いヤツ…」
「なにがよぅ!」
いつもどおり起立で腕を伸ばしどかんと机を叩く。机がフラフラと迷い、やがてズレた定位置に戻った。
「あのな、ジャンケンってのは」
簡単にルールを教え、終えた頃には律佳はルンルン気分でとてもにっこり笑っていた。
「うわー、おっもしろそーやろやろ、はとぉ!!」
はとぉっていうのは、ハトのことだ。言わずもがなであるが。
ちなみにハトが教えたジャンケンは、あっち向いてホイ方式であった。
「うっし、いくぜー!?」
律佳が一気に臨戦態勢に入る。
「ジャン!」
パーにするか…!?
「ケン!」
いや、手堅くチョキ!?(※意図不明)
「ポン!」
やっぱりここは…!!
ハト、チョキにて完敗!(まだ一戦目)グーを出した律佳がにこーっと笑う。
しかしここからが本題だ。力を思い切り入れる。外したら次はない…!
「あっち向いてー…」
次の瞬間。
ぶおっと風が揺れ、
「どん!!」
「ぐはっ!?」
突然ハトは一点の衝撃により、体が浮き上がり、机の上約40cmを吹っ飛び、教壇の横をかすめ、奥の黒板の下に背中を思い切りぶつけ、さながらストリートファイトに負けた男のように、がくりうなだれた。その頬には、くっきりグーの赤い跡。
「ルールちげ…」
「やったー!私の勝ちぃ!」
みんなの、今現在クラスにいる生徒の、白い注目を受けていることを知る由もなく、彼女は自分の机の上で愉快そうに踊ったのだった。
ある日の月曜、晴れた日のことだったー――。
一方耕輔宅。
彼は自室のベッドの上で三枚もの毛布を被り、体を震わせていた。
「ううぅ、昨日カキ氷早食い大会なんてするんじゃなかった…っ」
理由。
ジャンケンを名前告知なしにて行い、負けたのち、なぜかカキ氷早食い大会になった。
「そういえば…分かりやすいように“紙”と“ハサミ”と“石”で教えたけど・・・今日ジャンケンって教えてやらなきゃな・・・ハックシュッ…(ズー)…あー、さみぃ…」
ここまで読んでくださった方々、誠にありがとうございます^^
原作をお読みになってない方は、「?」のつきどころが多々にあったのではないかと思いますが、「ニッ」とでも笑って頂けたなら幸いです^^
それではまたいずれどこかで^^