デスゲームの始まり
一行目でオチが読めるかとは思いますが、そのまま最後までお読みください。
「妹のほうだけを選ばれたのですね」
「え?
あ。
おはようさん。
突然寝室に入ってきたら、びっくりするじゃん。
ま、ここはあんたの家だけどさ」
「姉のほうが、私はお選びいただけませんでしたと、さびしそうに申しておりました」
「傷つけちゃったかなあ。
ごめんね。
あんたのほうから、うまくフォローしておいて。
って、本人連れてきてんじゃん」
「念のために申し上げます。
私が娘二人をあなたさまの妻にと差し出したのには、わけがございます」
「ワケありの娘たちだったんだ」
「妹のほうはたおやかで美しく、ほがらかでございます。
若さと美と、そして新しい命を生み出す霊力をその体に宿しておるのでございます。
いっぽう姉のほうは、姿はみにくくごつごつしており、気質は暗く陰湿で、声もしわがれておりますが、健康と力強さと生命力を保ち続ける霊力をその体に宿しておるのでございます。
いと尊きおかたよ。
妹のほうを妻となさり臥し所を共になさいましたので、あなたの子孫は生まれ続け美しく育つでしょう。
やがてはこの広大な大陸いっぱいに満ちるほど、増え広がり繁栄していくことでございましょう。
いっぽう、姉のほうを拒絶なさいましたので、あなたの子孫は短命の呪を受けましょう。
生まれるそばから老い始め、美しさと健康を失ってゆき、百年とたたず死にましょう。
それは生まれ変わることもなく、はるか高き神々のうてなで至福の時を過ごすこともない、永劫の闇の眠りでございます」
「え゛。
そりゃ、かわいそうじゃん」
「では今からでも、姉も娶られますか」
「あ、やり直しきくんだ。
親切なシステムだね」
俺は、横ですやすやと眠っている妹を見た。
うつくしい。
愛おしさがこみ上げてくる。
それから姉を見た。
照れている。
が、照れている姿もかわいくない。
娶るってことは、こいつを可愛がるってことなんだよね。
「あのさ。
その短命の呪いって、俺の子孫にはかかるけど、俺はかからないよね」
「はい。
あなたさまは神族であらせられます。
しかも格別に尊貴なご一統に生まれ、この地を治めるためご降臨くださったおかたです。
老いることも死ぬこともありませぬ。
生きるのにお飽きになったら、常世の国に身を隠されるのみにございます」
俺はもういちど姉と妹を見た。
そして決断した。
「やっぱ、パス。
無理。
悪いけど、妹のほうだけでいいや」
かくしてデスゲームは始まった。
あなたの時間を2分間も無駄にして、ごめんなさい。