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失った恋文

作者: 真崎 奈緒

こんにちは。

変わりなく元気に過ごしていますか?

こうしてお便りするのも久しぶりになりますね。

あなたも知っている通り、あれから色々な事がありました。

閉じこもっていたのも、何だか昔のことみたい。

そんな中でも、自分のことについてじっくりと振り返る時間を持てたことは有意義だったのではないかな、そう思います。

漸く私の中で、ある種の結論が出ました。

それはあなたにとって迷惑なことかも知れない。

けれど、最後に一度だけ私の正直な気持ちを伝えておきたい。そう思うのです。


まわり道をしても仕方がないから、はっきりお話します。

迷惑かも知れないけれど、ごめんなさい。私はあなたのことが今でも一番好きです。

最初はいっそあなたを嫌いにでもなれないかと思った。けれど、そんな風にはやっぱり思えなかった。

誰も代わりになんてなれない。

お互いの立ち位置が変わってしまっても、あなたの気持ちが変わってしまっても、私にとっての「あなた自身」に代わる人はいないのです。

…たとえ、あなたにとって「私」の代わりになる人がいたとしてもね。


いつだったか、あなたに話した事があるかも知れないけれど、私は今まで人から好かれた事がありませんでした。

誰かに好きになって貰える自信も、持てたことは無かった。

少なくとも、あなたに出会うまでは。ただの一度も。

私のうわべだけを見て好意を寄せられた事はあったのかもしれない。

でも、私の人となりに触れて、それでも理解しようとしてくれた人は、一人もいなかった。

私を愛してくれない人たちは、けれど暴力で、言葉で、私の内側に容赦なく触れてきました。

だから私は、誰の事も好きにならないことで、ずっと自分を守っていたのです。


私みたいな人間を、誰かが好きになってくれる筈が無い。

これはね、私の勝手な思い込みじゃなくて、実際に投げられた言葉でもありました。

もう傷つきたくない。

だから、一生自分の中に残るような「大切な人」を作らないようにしよう。

そんな人が出来てしまったら、その人に自分を拒まれてしまったら、耐えられないから。

相手の存在が自分にとって一生ものなら、つけられた傷もきっと一生残ってしまう。

私も、誰かの「大切な人」になるのはやめよう。

私みたいな人間に関わって、大切な時間わや台無しにしては可哀想だから。

…そう思っていたから、だから、私はあなたを好きになルのがとてもとても怖かった。

本当はね、形振り構わずあなたを好きになりたかったよ。あなたに私を好きになって欲しかった。

人に求められる自分になりたかった。誰よりあなたに。

だから、あなたの腕に飛び込めたのかも知れない。

あの頃はね、色々と失ったばかりで、大事なものは自分自身以外何も持っていなかった。

だからあんなに思い切った事を出来たのかも知れないね。


でも、受け入れてくれて本当に嬉しかった。同時に信じられないくらい驚いたけど。

…ねえ、本当にごめんなさい。


先に裏切ったのは、多分私の方だった。

私は、信じていなかった。

どれだけ好意を示されても、あなたの愛情を信じ切る事が出来なかった。


上滑りして空回る愛を、あなたがいつまでも注ぎ続けてくれる筈もないのに。

許して下さい。

あなたの言う愛を、永遠を、私には理解できなかった。

だから、さよならを告げられても、食い下がることができなくて。

去っていく背中を、縋る視線でいつまでもいつまでも追うことしかできなくて。

あなたの事が好きです。

あなたの愛を信じられなくても。


さよならと言えばあなたは安心出来るのかな。

元気にしていて。



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― 新着の感想 ―
[一言] 恋文を渡せなかったとしても、態度や表情で、言葉を越えて伝わっていたと信じたいです。
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