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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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義母の音

作者: 小埜我生
掲載日:2026/07/10

※介護、暴力、カス夫要素があります。

苦手な方はお気をつけください。

ピーー、、、


私は瞼をゆっくりあける。時刻は午前三時。

ふぅーっと息を吐く。

肌寒いが布団から出る。


ピーー、、、

ピーー、、、


何度も鳴るそれをジロリと睨む。

隣ではこんなに音が鳴っててもピクリとも起きやしない夫。

がぁがぁといびきをかいて。


部屋を出て一階へと向かう。


本来客室用の和室の扉を開ければ義母がグチグチと文句を溢している。

義母は5年前脳梗塞を起こし、それ以来足に障害が残った。

歩けないほどではないがよろける事も多くお手洗いには介助が必要だった。


私は文句を言う義母に適当にはい、はい、と返事をしてお手洗いへと連れて行く。

終わったら手を洗わせて再びベットへと連れ、布団をかけて部屋をでる。


時刻は午前四時....。

お手洗いをさせるだけで一時間。


私は洗面台へと向かい手を洗う。

ふいに鏡に映った自分をまじまじと見つめる。


白髪がちらほら、目の下のひどい隈に頬のひっかき傷。

今年四十だが随分上に見える。

昔は身なり気をつけオシャレが好きだったが今となっては最低限整える事すら出来ているか怪しい。


寝室の二階へ向かおうと階段を上っていると再び音が聞こえた。

私は階段の途中で立ち止まり一瞬間をおいて踵をかえす。


義母は喉が渇いたそうだ。ベット脇に飲み物は置いているのだけれど。

赤ちゃんが使うような蓋のついたコップ。

老人用に弱い力で吸えるように作られているそうだ。

それを手渡すと顔を赤くして投げつけられた。


私の胸に当たって床に転がる。

少し溢れたが蓋は外れていない。

胸には鈍い痛みがじわじわと広がる。


私はプラスチックの普通のコップに注ぎ直して再度義母に渡した。

ゴクゴクと飲み干すと満足したのかこちらに背を向けて寝だした。


医者曰く認知症の症状が出ているらしい。

本人は認めないが年々それは顕著になり、癇癪も多く起こす。


施設に入れてしまいたいがそれは夫が嫌がった。

自分たちにには子もいないのだから親の面倒()()()みるべき、だそうだ。


子がいないのは私のせい。とでも言いたげ。

検査、私は問題なかったんだけどね。

けれど出来なくて良かった。

こんなボロボロな母なんて可哀想だ。


寝室に戻ると先程と変わらず夫は気持ちよさそうに寝ている。

夫がつけた電子ベル。

義母の部屋のスイッチを押すとこちら側が鳴るという単純なもの。


義母は息子の気遣いと喜んでいたが夜間大声で私を呼ぶ声を煩がっただけだ。

何でもないことで呼ばれここ何年かは満足に寝れていない。

そんな私と違って好きなだけ寝る夫。


最初は、音に気付いたほうがやろうとそう決めたが夫が音で起きることはない。

結果私が全てやる。

起こしたこともあったがわざわざ起こすくらいなら起きた方がさっさとやるのが効率的とやりもしない効率について語ってくれた。


好きだった仕事は介護のためにやめて近所でパートしている。

せめて介護に専念したいと言えば、我儘と笑われた。

夫の親の介護をして我儘と言われるのか。


ピーー、、、


ピーー、、、


ピーー、、、


この音を消すには。

いびきをかく夫をジーっと見つめたあと義母の元へと向かう。

手には一本の包丁。


「貴方はお義母さんの声なら起きてくれるものね」


もう音は鳴らない。

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