表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まさか猫種の私が聖女なんですか?  作者: まるねこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/103

62 野宿

 エサイアス様達は馬に乗り、私は荷物とともに馬車で移動した。


 総勢三百人の大移動。沿道には涙を流しながら手を振る人もいる。この巡視はみな辛い旅だと知っているのだろう。


 まず、エンカーナ地方をぐるりと巡って魔物の数を減らしていくという話だ。最初に目指す街はロダンの街。


 そこに向かうまでの村は二つほどある。


 この二つの村は王都が近いだけあって何度も騎士団が訪れているので魔獣が出てくることはほとんどないようだ。


「村長さん、これで当分の間、野菜は良く育つようになりますよ」


 村に立ち寄り、私は村の井戸にターローの魔法(水質改善魔法)を、畑にはサーローの魔法(土質改善魔法)を掛けた。


「凄いとしか言いようがありません。土が輝いている。ナーニョ様、本当にありがとうございます」


 魔法の効果は一年をみている。来年は魔法使いが私の代わりに各村に魔法を掛けに来れたらいいなと願うばかりだ。


「ナーニョ様、村の者はとても喜んでおりました」

「私にできることがあって良かったです。次のロダンという街はどんな所なのですか?」


 エサイアス様率いる騎士団の副団長シャローに聞いてみた。


「ロダンという街は人口一万人程度の街です。森と共存するような形の街で過ごしやすい街ですね。ただ、森と共存するだけあって魔獣がたまに街にやってくるようです。その度に街の住人が力を合わせて退治していると聞いています」

「森と共存って素敵ですね。どんな街か楽しみです」



 私たちは三日ほど馬車に乗り、道を進んでいた。


 もちろんその間は野宿する。この野宿も安全に過ごせるようにヒュールトーロという範囲結界魔法を使っている。


 これはしっかりと魔獣からの攻撃が防げるような結界であれば魔力も大幅に使われるのだが、薄い幕のような結界にしてあるためあまり魔力の消費はしない。


 薄い幕でも結界は結界。


 とても優秀で虫などの小さな生き物であれば防ぐことができる。


 魔獣が攻撃するとパリンと音を立てて割れてすぐに消えてしまうのだが、その音で騎士たちも襲撃に気づきやすくなる。


 この結界は寝ていても発動ができるように出発前はずっと練習をしていた。


「では今から結界を張りますね。『ヒュールトーロ』」


 ヒュールトーロの結界が張られると、空気がわずかに震え、静寂が広がった。


「ナーニョ様、ありがとうございます!」


 最初の数日はやはり難しかったけれど、毎日の事になると慣れて今では意識せずに使うことができるまでになった。


 今のところ結界を割るような魔獣は夜中に遭遇していないのでみんな睡眠をしっかり取れているようだ。


 ―チリン


 小さく鈴の音がなり、腕輪が優しく光った。


『お姉ちゃん、今日はどうだったの?私はねー、サーローの指輪でふかふかになった畑に芋を植えていたんだけど、もう芽が出てきてたの。サルンを使ったら一気に収穫できそう! でもあれって無理に成長させるとあまり美味しくないって聞いた気がするんだけど、どうだったっけ?』


 寝る前には必ず、ローニャから魔法で伝言鳥が飛んでくる。


 最初はヒュールトーロの魔法を使いながらでは返事を返すことができず日中の馬車で移動している時に使っていたが、最近では結界魔法を使いながらも返せるようになってきている。


『植物魔法は確かに多用すると味が落ちるって聞いたことがあるわ。今は食糧もギリギリだから味が落ちても収穫量を上げる方がいいかもしれないわね。


 その辺は研究員に確認したほうがいいんじゃないかしら? 今夜で野宿三日目よ。明日には街に入るわ。どんな街か少し楽しみにしているの。みんな元気で過ごしているから大丈夫だと伝えておいてね』


 私が寂しさを感じずに巡視ができるのもこの魔法のおかげ。毎日ローニャの声が聞けるからだ。


 どれだけ離れていてもこうして声を聞くことができるのでホッとする。


 私はこうして内緒でおしゃべりをしているの。


 巡視に同行している騎士たちからは、村に着くたびに手紙を預かり、ファールの魔法でローニャに送っている。


 ローニャの方からも定期的に家族から預かり、手紙が私の元へ届くようになっている。


 私たちが居ない時の巡視はただただ心配して祈るしかできなかったけれど、数日毎に定期連絡が行えるようになって騎士たちからもその家族からも感謝されている。


 こうして王都を出て半月ほどかけてようやくロダンの街に到着した。


「ここがロダンの街なのですね。シャローさんが言っていた通りの街ですね。凄く素敵だわ」


 ナーニョが感動すら覚えるほどの街だった。王都は人々が活気づいた街だったが、ロダンの街は街そのものが一枚の風景画のような感じだ。


 緑豊かな街で樹と建物が共存していて人々は穏やかで静かに暮らしているという雰囲気だ。


 私たちは駐屯地に馬車を止めて騎士たちは宿泊施設へと入った。


 私はグリークス神官長の勧めもあってこの街の神殿にお世話になることになっている。


 もちろんお世話になる以上、怪我人の治療もしっかり行う。


 この街に数日滞在し、騎士たちは毎日周辺で出没する魔獣を狩る。


 大方の魔獣を狩ることができたら次の街へ移動するようだ。今回は英雄エサイアスが巡視だと知り、街の人は歓迎ムードで出迎えてくれた。


「ナーニョ様、明日、朝食後お迎えに上がります」

「はい。待っていますね。騎士さんたちも早めに休んでくださいね」


 私は笑顔で騎士たちと別れ、神殿の中に向かった。

ローニャ視点のサイドストーリー公開しております⭐︎

 猫種の私が聖女?~サイドストーリー~

https://ncode.syosetu.com/n2735lg/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ