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まさか猫種の私が聖女なんですか?  作者: まるねこ


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20 異次元の空間研究所会議

「あぁ、ただいま」

「後ろのお連れ様は……?」

「あぁ、その事なのだが今から緊急の会議を開くから第一会議室に参加できる全ての研究員を集めてくれ」

「全ての研究員、ですか?」

「あぁ。今すぐだ」

「承知いたしました」


 その男の人は不思議そうにしながらも他の研究室に声をかけて呼びにいったようだ。


 私とローニャは不安そうにしながらもマートン長官の後ろにぴったりとくっつくようにして第一会議室へと入った。


 この第一会議室というのは研究員全て揃って会議が出来るような大きな部屋となっているようだ。


 席も予め準備されているようで次々と研究員達は席に着いていく。ある程度の研究員が集まった所で長官は立ち上がり声を出した。


「急に呼び出してすまない。だが、緊急事態が発生したのだ。情報共有のためこの場に皆を呼んだ。そろそろ始めてもよいか?」


 室長を始めとした研究員達は静かに頷いている。


「先ほど、国王陛下からの呼び出しに参上したのだが、陛下よりこの二人の令嬢のご協力を得られる事になった。右に座るのがナーニョ・スロフ様、左に座るのがローニャ・スロフ様だ。二人とも帽子を取ってもらえるだろうか?」


 マートン長官の言葉で私達は帽子を脱いだ。


 会議室は一瞬にして沈黙がその場を支配する。


 ほんの僅かな間だったけれど、それは何十分が経ったようにも思えたほど会議室は緊張に包まれていた。


「いや、まさか、そんな事が……?」


 そんな中、一人の研究員がそう口にすると、研究員達はお互いの顔を見合い、信じられないような顔をしている。


「みんなも見て思っただろう。彼女達はこの世界の人間ではない。短期の空間から落ちてきた獣人だ」


 彼の言葉に一層どよめきが広がる。


 そして室長の一人が『静粛に!』と声をかけて一斉に会場は静まり返った。


「彼女達はまだ幼いながらも魔法が使える。回復魔法や異次元の空間が開くのを防ぐ魔法が使えるようだ。


 彼女達からの話を聞き、私達の研究が一歩でも二歩でも前進する事を願っている。明日から毎日第一研究室に来てくれる事になった。


 質問がある場合は予め準備をして第一研究所室長に確認しておくように。何か質問はあるか?」


 誰もが興味津々の様子だが質問を躊躇っていると一人の研究員が手を挙げた。


「二人は魔法が使えると言いましたが、この場で見ることは可能なのでしょうか?」

「ナーニョ様、私もまだ見ていない。見せることは可能か?」

「はい。お見せするのは可能ですが、怪我人はおられるでしょうか?」


 ナーニョの言葉に一人の研究員が手を挙げた。


「俺は役に立ちますか?」


 どうやら彼は先日護衛騎士と一緒に魔獣討伐に行き怪我を負ったようで顔を白い布で覆っている状態だった。


「あぁ、丁度良かったな。ゼロ、前へ来い。ゼロは先日魔獣の攻撃で左目を損傷し失明に近い状態、背中も割かれ、未だ怪我が治りきっておらん」


 なぜその状態で仕事をしているのかは疑問だが、それだけこの世界の人間は必死に魔獣と戦っているのだろうと考え、私は一人勝手に納得する。


 ゼロは私達の前で用意された席に座ると白い布を取り、服を脱いだ。


 目の周りや背中は相当深く傷を付けられたようで傷が治りきっていない。


 痛そうな見た目にローニャは震えている。


 忘れかけていたあの記憶が頭をよぎる。

 大丈夫、彼は生きている。

 ヒエロスで治せるじゃない。


 私はそっと首にかかった指輪を握り、自分の気持ちを落ち着かせる。


 そしてヒエロスの指輪を指に嵌めた。


「ゼロさん、では治しますね。『ヒエロス』」


 私は彼の肩に手を当てて魔法を唱えると淡い光は彼を包み、ゆっくりと怪我を治療していく。


 その様子を研究員たちは一瞬たりとも見逃さないように凝視している。


 指輪から流される光が消え、私は治療の終わりを告げる。


「治っている! 凄い! ナーニョ嬢! ありがとう!!」


 その言葉と同時に会場から割れんばかりの拍手が鳴った。


 ローニャは大勢の拍手に驚いてマートン長官の後ろに隠れてしまった。


「静粛に! ナーニョ様の魔法を私達はこの目で確認した。これは奇跡としか言いようがない。そうだろう? 神は我々に一筋の光を与えてれた。これから彼女達の協力でこことは違う世界の話や魔法の話、異界についての話を聞き、研究を進めていく。では各自、研究室に戻るように。解散!」


 研究員達は興奮冷めやらぬまま各研究室へと戻っていった。


「ローニャ様、驚かせてすまない。では我々も第一研究室に戻ろう」


 マートン長官の服をしっかり掴んだままローニャは震えている。先ほどの注目といい、拍手で驚いたのは仕方がない。


 長官の席の横に用意された椅子二つが急遽用意され、私達はちょこんと座った。


 長官の指示でゼロと呼ばれている人が私達に果実水を持ってきた。


「ナーニョさん、治療魔法、凄いですね。僕はもう治らないものだと諦めていたんだ。こうしてまた目が見えるようになって背中の痛みも無くなって救われた気持ちだ。本当にありがとう」


 私は微笑みながら軽く会釈をする。


「さて、彼女達の帰宅までの時間はまだある。色々と聞いていかねばな。マイア、書記を頼む」

「畏まりました」


 五人いる研究室の中で唯一女性のマイアさんは赤い髪をしてキリッとした目で見るからに仕事が出来そうな女性だ。


 ナーニョは年齢と猫獣人である事や生い立ちを話した。


 そして獣人は魔力を持っている事、大昔魔法使いという人間が異界の穴から落ちてきて獣人と交わった獣人に伝わる歴史の話をする。

 みんな興味深そうに聞いている。


 指輪や装飾品によって魔法が使える事も。


 陛下が言っていた古語だと言う事も話をしてヒエロスの指輪をマートン長官に見せた。


 長官はしげしげと指輪を眺めて古語を読み上げた。やはり研究者は読める人がいるようだ。


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