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まさか猫種の私が聖女なんですか?  作者: まるねこ


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12 古傷の治療

「申し訳ないが、ナーニョ嬢、私にまた回復魔法を掛けてもらえないだろうか?」

「まだ怪我が治りきっていませんでしたか?」

「いや、傷は治っているのだが自分の目で見てみたいと思ってね」

「分かりました」


 私は震えるローニャの手を一度ギュッと握った後、指輪を取り出し、指に嵌めた。


「失礼します」


 そう言ってエサイアス様の元へ行き、手を取り魔法を唱えた。


『ヒエロス』


 魔力は触れている手からエサイアス様を包み込んでいく。彼は淡い光が包むのを凝視している。


 前回は出血している傷口を塞ぐために魔法を使った。


 こうしてゆっくりと魔力を流してみると驚いたのは私の方だ。


 エサイアス様は私より少し年上、二十歳くらいに見えるけれど、身体には至る所に傷がある。古傷という感じだ。


 場所によっては無理して傷を治したような場所があって筋肉が固着しているようにも感じる。


 相当無理して魔物の討伐をしていたのではないだろうか。


 ヒエロスは古傷全てに留まって淡い光を放ち修復していく。古傷は動けば痛む箇所もあるだろうし、痛みはなくても引きつれを起こしている場合もある。


 私の持っている指輪の限界もある。深い古傷は一度で全てを治しきる事が出来ない場合もある。それに欠損も治すことは出来ない。上級の指輪や特級の指輪なら一瞬で治るのだと思う。


「治療終わりました」


 エサイアス様は立ち上がり、動きを確認している。


「すごい、これはすごい」


 喜んでいるというより感動に打ち震えているようだ。カッと目を見開いたかと思えば私の手を両手で包みこんだ。


「ありがとう。本当にありがとう。素晴らしい」

「い、いえ。特別なことは何もしておりません」

「いや、この世界で治癒魔法が使えるのは君達だけだ。それに古傷まで綺麗に治せるなんてすごいとしか言いようがない」


「よかった……」


 古傷が治ったと知ったロキアさんは小さく呟き、ハンカチで涙を拭っている。今まで口にしない分辛いことも多かったのだろう。


 私達も親を亡くした時、村の惨状を目の当たりにしてきた。


 救えなかった命もたくさんあったに違いない。


 私はそれ以上何も言わずローニャと明日の話を聞いた後、部屋に戻った。


 私達は湯浴みをした後、フカフカのベッドに入り、今日の事を話し始めた。


「お姉ちゃん、びっくりしたね。まさかヒエロスだけでこんなに感激されるとは思ってもみなかったわ」

「そうね、私も驚いちゃった」

「これからどうなるんだろうね、私達」


「まぁ、悪いようにはならないと思うわ。でも、本当に魔法が使えないのかは疑問よね。私達のように指輪を使えば魔法が出来るようになるのかもしれないよね」


「お姉ちゃん、さっきエサイアス様がとっても喜んでいたでしょう? あれを見て思ったの。私にも何か協力出来ることがあるんじゃないかって。まだ子供だけど、みんなが困っているなら協力してもいいと思っている。お父さんやお母さんのように死んじゃう人がたくさんなんでしょう?」


「……そう、ね。ローニャが協力したいと思うなら協力してもいいと思うわ。でもローニャ、私達はまだこの世界に来て右も左も分からないの。人間が悪い人たちだったらどうするの?」


「きっと大丈夫だよ。ロキアさんもマーサさんもいい人だもの。ヒエロスでこんなにもエサイアス様が喜んでロキアさんが泣いているのってとても凄いことだと思う。私、出来る事、頑張ってみたい」


 私はローニャの素直な言葉に涙が出そうになる。


 あの村の惨状を思い出す。


 エサイアス様達はあの国王軍の豹の獣人さん達のようにきっと人々を守るために戦い続けているのだろう。私達のような孤児を作らないために。


 一人でも悲しい思いをする人が居なくなるために。


 きっと私一人なら顧みる事もせず協力を惜しまないと思う。けれど、私には大切なただ一人の家族がいる。


 世界中の人間を敵に回してもローニャを守ると決めている。


 ローニャを幸せにできるのなら私も協力は惜しまない。


「そっか。ローニャは偉いね。お姉ちゃんは鼻が高いわ。その考えはとても崇高だと思う。誰にでも出来る事ではないと思うの。でも協力するかしないかは明日の王様の話を聞いてからでも遅くはないんじゃないかな?」

「そうだよね。私達を無理やり働かせようとする悪い人達かもしれないもんね」


 窓から鳥の声一つ聞こえない外を気にする余裕もなく、私達は自分達のこれからの事を考えたあと眠りについた。


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