104 魔力の測定
「そうでしたか。今、彼は魔法を封印されている状態で、とても身体は辛い状態だと思います。私もローニャも経験がありますが、数日で音を上げました。彼は辛いながらも頑張っています。
それに彼は未成年ですし、私としてはカシュール君を魔法使いになってもらいたいです。ですが、今の彼では周りと衝突してしまう可能性が残っています。
私としては王都の神殿でグリークス神官長の下、基礎的な魔法を学んでから王宮の研究室で訓練を行ってもらいたいと思っています」
「神殿の預かり、ですか」
「ええ。グリークス神官長も魔法が使える一人です。人格者であり、神官長の下で勉強できればカシュール君はもっと伸びていくと考えています」
そこまで言って気づいた。グリークス神官長に確認を取っていなかった。
でも、まあ、何とかなる、かな。
部屋に戻ったらすぐに神官長に連絡をしなければいけないわ。
「王都の神殿は総本山。そこの神官長の下で修行となれば栄誉にほかなりません。どうか息子をお願いしたい」
「分かりました。神官長には伝えておきますね」
こうして子爵を交えた滞在期間中の計画を改めて話し合った。食糧が確保できた事や今後の食糧に明るい兆しも見えたことで子爵もホッとしているようだ。
翌日。
「ローニャ、基準を決めておきましょう?」
「そうだよね。グリークス神官長が十としたらカシュール君は八位だよね? 子爵は五位だと思うんだけどどうかな?」
「十段階だとそれくらいが妥当よね」
私たちは一人一人魔力を通して数を言っていき、騎士が名前と年齢、数字を書きとってくれることになっている。
子爵はこの日のために街の人たちに集まるように話をしてくれていたようだ。
この街の人数は二千人程だ。どこの街も同じような感じだろう。
私とナーニョはひたすら魔力を調べていく。
「四かな、二かな、六、……」
騎士たちも書き疲れたと思う。
夕方まで掛かってまだ調べきれなかった。二日目までも持ち越したけれど、ようやく全員調べられた。
「終わった~! お疲れ様! 私も疲れちゃったー」
ローニャは満面の笑みを浮かべ、パクパクと木の実を食べている。
「ナーニョ様、ローニャ様、お疲れ様でした」
「皆様お疲れ様でした。協力ありがとうございます」
魔力を調べている間、何人か質問された。
もし、魔力が多かったら魔法を勉強するのですか? と。こればかりは私には答えはすぐに出せなかった。
きっと指輪を配布して魔法を使う下地を作るのだろう。
カシュール君や他に魔力の高い人を魔法の勉強をしてもらって街に戻り、魔法を広めてもらう方がいい。
調べた限りではグリークス神官長を超える人はいなかった。カシュール君と同様の人は二人ほどいた。
一人はカシュール君の妹シェールちゃん八歳。もう一人は農家のフェゼットさん三十歳。フェゼットさんは畑に出てくる獣や小さな魔獣を魔法で退治していたらしくずっと魔法を使っていたおかげで魔力が高いようだ。
シェールちゃんはまだ子供なのにカシュール君並みの魔力を持っている。
もう一人の妹、マーラちゃん五歳も六あった。ヒェル子爵家は魔法使いの血をしっかりと継いでいるのかもしれない。
街の人たちも平均で四くらいはあった。幼い頃から訓練していけばもしかしたらグリークス神官長ほどの魔力を持つことができそうだ。
私は見えてきた希望に少し浮かれている。
魔力の結果を子爵にも伝えると、子爵は驚いていたようだ。自分の子供たちが街で一番の魔法使いになるかもしれないのはとても栄誉なことだと言っていたわ。
王都に行くのはフェゼットさんとカシュール君になりそうだと子爵に話をする。フェゼットさんは王都へ行くことを不安がっていたが、彼がいない間、別の人がしっかり畑の世話してくれることを聞いて安心したようだ。
そこからの数日は報告書を送り、王宮の従者の居住区に住む部屋の準備をしながら忙しく過ぎていった。
グリークス神官長はカシュール君の話を聞き『是非、私の元へ連れてきて下さい』と言っていたわ。
神官長ならカシュール君をしっかり者にしてくれると思う。フェゼットさんは研究所で魔法の勉強をし、知識を身につけたあと、街に戻って魔法の知識を広めてみんなが使えるようにする使命が託されることになった。
そこからの毎日はとても忙しくなった。
街の人たちも魔法が使えるようになるかもしれないという期待。食糧の確保。自分も学びたいと駐屯所に直接くる人もいた。
そんな中、父からの手紙が送られてきた。ちょうど私とローニャが駐屯所の食堂でみんなと食事をしている時だった。
「お姉ちゃん、お父様からの手紙はなんて書いてあったの?」
「ローニャ。ローニャのおかげで少女誘拐の犯人が捕まったそうよ」
「本当? 良かった!」
「それでね、そろそろ帰ってきなさいとお父様が言っているわ。どうする?」
「そうだね……。そろそろ王宮に戻らないとみんな心配するよね。アイツも居なくなったし、帰るね!」
「分かったわ。なら私が送ってあげるわ。彼らも一緒に連れて行ってくれる?」
「もちろんだよ!」
騎士たちはローニャが王宮に帰る事を心配してくれた。子爵に連絡を取り、明日王宮に戻る事を伝えた。
フェゼットさんやカシュール君はすぐに荷造りをしたようだ。




