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まさか猫種の私が聖女なんですか?  作者: まるねこ


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10 怪我人の治療

「お姉ちゃん! 男の人が大怪我しているみたい! 血がいっぱいで今にも死にそうなの! 私じゃ上手く出来ないっ。どうしよう」


 半ばパニックになりかけている妹を落ち着かせて話を聞くと、玄関で血まみれの男の人が数名の男の人に担がれて来たみたいだ。


 ローニャは回復魔法を掛けた方がいいと判断したようだが、怪我人が全身出血しているのと人間が大勢いたので怖くて戻ってきたようだ。


「分かったわ。私が代わりに行くわ。ローニャはここにいて隠れていなさい」


 私は丸テーブルに置いてあったハンカチより少し大き目の布を頭巾のように被り、大怪我を負った人の所に向かうため扉を開ける。


 部屋を出るとすぐに血の匂いが鼻を突いた。この匂いを辿れば部屋に着く。

 私は急ぎ足で部屋に向かった。


 ……ここね。


 血の匂いが濃くなっている部屋の前で立ち止まる。


 扉の開いた部屋の中から数名の男の人の声が聞こえてくる。


 私はその緊迫した声を聞いて無意識にヒエロスの指輪をつけて扉を開けた。


「!!! お客様、ここへ来てはなりません!!」


 ロキアさんが驚いたように声を挙げた。


 ベッドに居たのはローニャが言っていた人だろう。周りに三人ほどの男の人がいる。


 一人は「隊長!気をしっかり!!」と気を失わせないように大声を上げ続けている。


 後の二人は止血のため布で傷口を押さえているようだった。


「離れて!!!」


 私は大股で歩きながら大声を上げ、ベッドのそばに歩いていく。


 声に驚いた男の人達が一瞬手を止めた。私はその隙に男の人達の間に入り、ベッドで寝ている怪我人に手を当てて魔法を唱える。


「ヒエロス!」


 すると魔力はすぐに怪我人の身体を包み込んだ。十カ所以上ある傷。そのうちの三カ所は特に深いようだ。致命傷になりそうな深い傷に魔力を流し、重点的に回復していく。


 回復魔法は柔らかな光を帯びて男の人を包んでいる。とても傷は深く、失った血も相当量だろう。

 傷はじわじわと消えていく。それと共に怪我人の荒かった息も穏やかになっていく。


「嘘だろ!? 傷が消えているぞ??」


 止血していた男の人が手を放し、驚愕している。


「ロキアさん、怪我は治したけれど、失った血は戻らないわ。この人間は足を少し高くしてしばらく休ませた方がいいと思います。では妹が心配しているので」

「おい!!? ちょっと!?」


 誰かが後ろから声を掛けようとしていたけれど、私は無視して走って部屋に戻った。


 バクバクと壊れそうなほど心臓が叫んでいる。


 切羽詰まって怒号のように叫ぶ人の声。

 血まみれの怪我人を見てあの時の事を思い出してしまった。


 我を忘れてなんとか助けなきゃ、と。


 言い逃げするように部屋を出た。勝手に回復させてしまった自分は出過ぎた真似をしてしまったのではないかと後悔しながら部屋に戻ってきた。


「お姉ちゃん、手が汚れているよ。拭こう?」

「そ、そうね」


 いまだドキドキと興奮している私を落ち着かせるようにローニャはピョコピョコと尻尾を揺らしながらマーサさんが手渡したハンカチで私の手を拭いてくれている。


 まだ下の階ではバタバタと騒がしい様子だったけれど、私とローニャは気にしないように部屋で静かに過ごすことにした。


 ローニャは隣の部屋に案内されたけれど、一人は嫌だとわがままを言った。仕方がない。


 知らない世界にポツンと一人になれば寂しい。両親が亡くなってからずっと一緒だったもの。私も一人では心細い。



 ロキアさんはあれから忙しく動き回っているようで会う事は無かったけれど、その代わりマーサさんが食事や湯浴みの準備をしてくれたり、服を用意してくれたりして私達は感謝しながら恩恵に与ることにした。


「おねえちゃん見て! 窓から見えてたあの花のつぼみ。白い花だったね」

「本当ね。一週間経つのはあっという間だったわね」


 怪我人を治療してから二日後、怪我人の意識は回復したらしい。


 マーサさんが泣きながら教えてくれた。そこからは医者が連日邸を訪れて怪我人を診ていたらしいけれど、怪我が治ったので薬を飲ませるだけになっていたようだ。


 私達はというと、静かに部屋から出ることなく過ごしていた。


 ローニャは私が背負っていたリュックから魔法の教科書を読むことにしたようだ。といっても、私が背中を攻撃された時に教科書と書類が怪我の肩代わりをするように千切られてしまっていたが。


 読みにくいと言いながらもローニャは本を読んでいる。


 私はマーサさんにお願いをして刺繍のセットを用意してもらった。この世界の刺繍針はやや小ぶりだったけれど、私達のいた世界の物と大差はないようだ。


 針が小ぶりに思えるのは獣人が人間に比べ少し大きいからなのだろう。私にはピッタリサイズだったので良かった。


「ナーニョ様、ローニャ様。エサイアス様がお呼びです」


 ロキアさんがにこやかに私たちを呼びに来た。どうやらあの怪我人はこの邸の主であるエサイアス様だったようだ。


 私はロキアさんに連れられて執務室へ向かうことになった。


 もうベッドから離れているのは無理し過ぎなのではないだろうか?


 どんなに身体の強い獣人でもしっかりと一週間はベッドで休むものだと教えられていたのだが、人間は違うのだろうか。


 ロキアさんに連れられて執務室の前に立った。ロキアさんが扉をノックし、中から「入れ」という声が聞こえてきた。


「失礼します。ナーニョ様、ローニャ様をお連れしました」


 私はロキアさんの後ろからそっと顔を出すと男の人が私を見て声を掛けてきた。


「君がナーニョ嬢かい?」


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