第8話 イケメン美人からの教育指導
「ん、こんなとこ」
「え? お蕎麦??」
「あんた、娯楽番組も観たことないん?」
琳が途中まで、と蕎麦粉と小麦粉を混ぜて作ったものは『塊』。
細長くて、茹でる前のそばの形状とは大きくかけ離れていたのでびっくりしたのだ。琳に質問しても、問題ない以外の質問を逆にされてしまったが。
「番組……テレビ、ですよね?」
「もしくは、端末使って動画観たりとか」
「小さい頃はともかく……ここ最近は。昨日だけ、流し見してましたけど」
「ん。これは、寝かすって工程。つなぎとかいっぱい入れたっしょ? それを休ませてやってから、馴染ませるんだよ」
「わざわざ?」
「そ。パンとかといっしょ。発酵ほどはしないけど、ある程度生地同士の結合しないとね。ぼろぼろになるし」
「! なるほど」
「次は薬味か。……包丁使える?」
「……適度に、は」
ネギの刻みはなんとか認められたので、白いところを二本も刻むことになった。その間に、琳は水だけでふるった小麦粉を溶いていた。
質問すると、それが天ぷらのタネらしい。
「大量に食うなら、皿にたっぷり乗せっからな? かけそばに乗せるのは好み。卵もいいけど、重くなってベチャッとするし。スーパーの惣菜コーナーにそんなのない?」
「あります! AIであっためると料金かかるし」
「電気代高いし。で、ここはソーラーの自家発電。でも、璐羽にたっぷり充電してほしっから、手作業大事。覚えてて損なし」
と言って、サッと油鍋に入れた天ぷらがカラッと揚がっていく。種類はわからないが、きっと美味しいかもしれない。食べたい気持ちを抑えて、ネギを刻んだ後にひとつ思い出したことがあった。
「暑いのに、かけそばですか?」
「ん? 冷たいの好きなん?」
「……そうですね。好きです」
「まあ、蒸し蒸ししてってしね。たまにはいっか? シューも基本熱伝導高い作業してっし」
「いいんですか?」
「いーの。考えれば、外暑かったし。さっぱりしたもの食べたいんしょ?」
「ありがとうございます! 大根ありますか!? おろすくらいはします!!」
「ん。なめこはシュー嫌いだから、そっちがいーっしね」
「……キノコダメなんですか?」
「山育ちのキノコでっかいんよ。璐羽とかに、今度見してもらい?」
「はい」
そのあと、シート状に広げたそば生地の切り方を教わったが、やはりど素人だと太めになるので。瞬殺で切り終えた琳にほとんど任せた。
盛り付けだけは指導してもらいながら挑めば、まあまあの家庭料理ぽくはなったと思う。
「ん。お疲れ」
「……すっごく、達成感あります」
「投薬も結構入ったし、身体も楽でしょ?」
「はい! あの、お支払いは?」
「時給でもうもらってっから、いーの」
「はい?」
つまり、時間労働であの服薬の支払いをしたと。物凄く安いのではと言おうとしたら、後ろから手を引かれた。
少し不機嫌そうな、多知獺だった。空いている手には何かを持っているようだったが。