3 店長とオレ(短話)
【松村 優吏 25歳】
僕はジムのオーナーで店長。だけど、出張で出かけていることもあるから、ジムにはいないことも多い。
元モデルで、モデル時代の仲間や芸能関係の知人も多いから、彼ら向けの特別なトレーニング・メニューをマンツーマンで教えている。高額だけど効果があるから人気で、今では順番待ちができているほど。
そのマンツーマンの指導のために出張しているというわけ。
先日、僕がジムを離れている時に、イチが男の子を連れてきたらしい。
イチはこのジムになくてはならない存在で、みんなのカリスマ兼アイドルのような存在。だから、イチが人を連れてきたのは初めてだって、すごく噂になっている。今日そのコが一人で来るらしいので、どんなコか見てあげる!
初めて見かける若い男の子が店に入ってきた。
ふーん、このコだね。イチが連れてきたっていうから、どんなコかと思っていたけど、普通じゃない?
まぁ、筋肉鍛えていて、そこそこ見栄えするけど、イチにはまだまだ遠く及ばないし。顔も少しはいいけど、僕の美貌にはかなわないよね。
しかも初めて来たときに、ここで突然脱いで、周りを騒がせたらしいじゃない?
イチがカリスマだって、知ってるの?
「こんにちは」
受付にいた僕に挨拶してきた。
「壬生さんって、次はいつ予約されてるんですか?」
ウソでしょ?まさか彼の次回の予約がいつか聞いてるの?
「個人情報ですので…」と言ったら、黙っちゃった… フリーズした?
あらあら、赤くなっちゃって… うーん、少し可愛いかも。
こういうコって、からかい甲斐がありそう。ちょっと面白くなりそうかも。
◇◇◇◇◇
【イリイチのある日】
ジムに行ったら店長がいた。
「おっひさー❤」
いや、3日前に会ったけど?
「あのコ今日来てたよ」
あのコってお隣君のこと? いや、オレ別に聞いてないよ?
「次の予約、日曜11時だって」
だから聞いてないし、個人情報ペラペラと言っていいの?
「イチの次の予約も日曜日の11時にしとくね!」
なんで?
「たまには、彼の面倒みてあげなよ。イチが連れてきたコでしょ。責任持たないと!」
んー、確かに最初に連れてきただけで、後はほったらかしだったな。
あの後はジムでもアパートでも会ってなくて… そうか、もう1か月経つのか。
その日は空いてるし、いいか…久しぶりにお隣君に会って様子見てみるか…