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排他的な村 2


 さて、話は彼等が村の入り口にまで到着したあたりから再開する。

遠目で見る限りでは、あの村は活気があるような様子が伺えた。……しかし、今はどうだろうか。恐らくあちらがこちらを察知できるような距離に近づいた辺りから、なんだか空気が変わった。まるで……いや、確実にこちらを警戒しているようだ。

「…なんか、嫌な雰囲気だねぇ…」

「……噂は本当だったかもしれないね…」

杞憂に終わるかと思っていた内容がどうやら真実であるらしいことに少々落胆を隠しきれない少女。しかしそんなことを悔やんでも今更遅い、というのが事実だ。さて、どんな風に避けられるか……。そう気が重くなりつつも、少女は村へと足を踏み入れた。

そうして彼等の領域へと侵入した瞬間から、途端に鋭い視線が少女達に突き刺さる。明らかに彼女達に近づこうとしない。もし、こちらから寄っていこうとしても一定の距離を保とうとして離れていくだろう。そんな様子が伺える。

「…随分と警戒されてるねぇ」

自分達の置かれている状況を茶化すように言う剣。しかし実際は(それ)が振る舞っているような余裕があるものではない。ここまで明確に拒絶されていると今後のための情報収集にも影響が出てくる。

「ここまでとはちょっと思ってなかったかな…」

かなり調査が難航しそうなことが容易に想像できた少女が少し気弱そうに呟く。流石の(それ)も揶揄う気にはならないようで、

「……そうだね、僕も同情するよ」

「…全く、他人事だと思って…」

「だって、他人事だし」

そこはもっと寄り添ってくれてもいいじゃないかと彼女は少し不満を覚える。しかしそんなことが(それ)に伝わるわけもなく、

「そうだった」

と、溜息を吐いた。そして辺りを見回して、まだ話し掛ける余地のありそうな人を探す。……これは骨が折れるな…。

しかしこのままでは事態が好転する筈もない。恐らく何が起きても()い気はしないだろうな…。そう嫌気が差しながらもとにかく行動に起こすしかなかった。ふと目に映った女性に声を話を聞こうとする。

「…あ、あの…」

「…なに、何か用?」

……早速突き放すような気迫で言われてしまった。ただでさえ小さな少女の声が更に弱々しくなってしまう。

「え、えっと……その…」

「なんなの?今度は私たちに何をする気なの?」

なんだか村人の彼女は苛立っているようだ。不機嫌な様子をこちらに隠す素振りも見せないまま半ば八つ当たりみたく語気を強める。それにやはり気圧されて言葉が出なくなる少女。

当然彼女達のやり取りが周りに聞こえない筈もない。皆こちらに視線は向けている。…が、それは感情が昂っている女性ではなく、彼女が矛先を突き付けた少女の方へと集中していた。…女性とほぼ同じような雰囲気を漂わせながら。

……あぁ、これはちょっとまずいな…。

話し掛けたこの機会を逃せば、こちらをより警戒した村人たちに話しかけることは困難になるだろう。…しかし、だからといってここで強行して彼女に質問を続ければ、今度はこちらを敵と認識して攻撃してくることも考えられる。…仕方ない。ここは引き下がるのが最善か。

「えと、その……ごめんなさい…」

少女がそう頭を下げたことを確認したであろう女性は、不機嫌そうに鼻を鳴らした後、わざとらしく身振りを大き取るくさせてその場を立ち去った。そしてそれに合わせて周囲にいた人間も同様に続々と立ち去っていく。

「あっちゃあ、思ったよりまずい状況だね、これ」

「えぇ、そうね…。嫌な予想が的中、…いえ、もうちょっとひどいかも」

その一人と一振りの会話からは、明らかに勢いがなくなっている。無理もない。最悪の事態を考えていたとはいえ、実際にこうも拒絶されると流石に元気もなくなるというものだ。更にはもう次の機会もほぼ絶望的だということが、現在の周囲の反応からも容易に見て取れる。……これはもう、ここでの収穫はほぼない、か…。

がくり、と肩を落として溜息をつく少女。こんな様子では、この村で宿を取ることもできないだろう。故にこの周辺で宿を探すか、それとも野宿で乗り越えるか…。

念のために、こことは別の村の所在も仕入れていたが、もう昼過ぎであろう今からだと、ここからでは途中で夜を迎えることになる。つまり、

「どっちにしろ、野宿、か…」

そこに向かおうとすると結局道中で野宿をすることになるだろう。幸い、朝から発てば次の村には日暮れ頃には着くらしい。…さて、取り敢えずは身の危険も少ないこの村の周辺で野宿をしてから明日一日をかけて次に向かうか、それとも今からでもできるだけ距離を稼いでおいて、明日を有効に活用するか…。

頭を抱えていた少女に、

「――ねぇ、君、困ってないかい?」

と、とある青年が話しかけてきた。

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