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慧眼を持つ町 2


 石造りの建築物の並ぶ街路。その頭上を這うように四方に伸びる石造りの水道橋。そして、その一部の先に繋げられている、日光を反射し輝いている噴水。緻密に練られた町の構造、この光景を見た誰もがここは技術都市であるという印象を受けるだろう。

「へぇ、よくもここまで発展できたものだね」

どこか皮肉めいたように、愉快そうな調子で町中の様子を剣が語る。しかし辺りに興味津々な剣とは対照的に、少女はつまらなそうな、まるでどうでもいいと言わんばかりの態度で、

「…そうね」

と冷たく反応する。確かに彼女もこの町独特の施設達に視線を移しているのだが、ちらりと一瞬確認するのみで何も面白くなさそうだ。むしろ、彼女の意識はどこに向かうかを迷っているかのようにして見回しながら足早に街並みを過ぎていく。

「おや、興味ないのかい?」

いつもだったらもうちょっとでも注視すると思うのだが。剣はそう怪訝そうにして少女に訊ねる。それに彼女は軽く溜息をつきながら、

「…えぇ、技術自体は目新しいものじゃないでしょ?」

確かに彼女の言う通り、ここにある産物は全て高い技術の下に生み出されたものであるのだが、そのどれもが時代遅れと言っても過言ではない程度には廃れた古いものだった。更に、今この町に存在する建築物は年季の入り方が同じものばかりなのに、明らかに建築様式が違うものが多々見受けられた。…それこそ、建築技術の博覧会のように。

「まぁ、そうだね。大体どこかで見たものばかりだ」

少女の言葉が腑に落ちたらしく、剣は同意するように彼女に応える。その剣の意見に付け加えるようにして少女は更に口を開き、

「だから改めて見る価値なんかないよ」

そう言って冷めた目で再び町中を一通り見回す。ある意味ではそれは事実なのだが、それはこの町自体に技術力があるわけではない。他の都市からの供給によってこれほどの水準を保っている。…ということのようだ。

そして彼女はそのまま、ふと誰に向かって言うまでもない独り言のように、

「――ここは技術都市は技術都市でも、ただ”技術が集まった”都市、ね」

技術の中心であるのではなく、ただ色々な技術が寄せ集められている。そう言った意味では技術都市というのも言い得て妙ということ、か。

「なるほど?流石は聖者がいる町ってことかな」

「そ、だからここには特有(オリジナル)のものがない…」

重要だからこそ、他に崇められているからこそ、提供されるのみで自ら生み出しているものはない。聖人がいることでそれ以外の発展は他所の町に任せっきりになってしまった…。まるでそう鼻で笑うかのように少女の語気はなんだか強くなる。仄かだとしても敵意を露にする、はっきりとした方向性のある意志を示す彼女は長らく旅路をともにした黒煌の剣さえ初めて姿だった。

「…珍しいね、君がそこまで感情を見せるなんて」

「はぁ…ねぇ、ソード?あなたにいちいち説明する必要なんてないでしょ?」

少女の態度がより冷たいものになる。それは普段の彼女が見せる悪態よりも、明らかに攻撃的なものだった。剣はまさかそこまで少女が厳めしく威圧してくるとは思っていなかったようで、

「確かに知ってるけどね。でもそこまで嫌悪するものなのかい?」

…結局、どこまでいっても(それ)に期待はするべきではないようだ。少女はそう頭を抱え、呆れたような溜息をつく。

「まったく…やっぱりあなたに配慮は無理ね」

「おっと、ごめんごめん」

悪びれる様子もなく軽々しい謝罪を口にする剣に、少女は肩を竦めてもう一度大きい溜息をつく。――なんだか、こんなことで機嫌を損ねているなんて馬鹿らしく思えてきた。そう彼女は気分を切り換えて町を見渡すことを受け入れる。…改めてこの町は優れた技術が存在はしているな…。

「それで?結局どうするんだい?聖者さん達には会いに行くのかい?」

剣の問いかけに少女は一瞬顔を歪め、渋るように視線を逸らす。そして少しの間動かず沈黙した後、躊躇いながらもようやく諦観した声で、

「…まぁ、行かないよりは得るものはあるでしょうね」

すると剣は明らかに嘲笑っている雰囲気を纏い、人の顔があれば確実に不快な笑みを浮かべながら、

「へぇ、そこは{()()()()んだ」

「…流石に不愉快。黙って」

論う(あげつら)ようにわざわざ強調して話す剣を再び鋭い視線で睨む少女だったが、それでも剣は反省を見せることなく、

「ごめんってば。もう言わないよ」

相変わらずあっけらかんとした剣のそれは気に食わないが、これ以上(こいつ)の相手をしてやると更に図に乗りそうだ。少女は不服そうに鼻を鳴らすもそのまま何も言い返すことなく街路を進む。

「このまま向かうのかい?」

「……それはちょっと…明日なら…」

「なんだ。やっぱり怖いのかい?」

「…いい加減にして」

「わかったわかった」

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