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排他的な村 5


 話はおよそ一ヶ月近く前に遡るところから始まる。その日とて村はいつもと変わったこともない、訪問客を幾人か相手にした日常を送っていた。

当時は勿論、村人達は訪れた彼等を排斥することもしない。むしろ、彼等との交易のおかげでこの村は貧しさから更に程遠いものになったのだ。彼等の存在に感謝をしていた、と言った方が近いだろう。

その時も同じように応対をし、そして変哲もない日を送った筈だった。…だが、その翌日に良からぬことが明るみにでてしまう…。

「……殺されてたんだよ、旅人が一人、ね…」

そう言って表情に暗い影を落とす青年。しかしその態度は、内容に対して至極当然なものだった。

「殺され、た…?」

彼に勧められて少しずつ料理を口に運んでいた少女も、その言葉に思わず手が止まる。そんな様子の彼女に頷いて再び口を開く。

「そう。それも結構な残忍さでね。皆が一時的に混乱状態に陥ったぐらいだよ。…いや、今でもまだ継続中、か…」

確かにそんな状況ならば気も動転するだろう。ましてや、殺伐とした空気に触れる機会の無かったような穏やかな村の人間では冷静に対処するほうが難しいかもしれない…。

「勿論、今までそんなことなんてなかったから、村の誰かを疑うこともなかった。…けど、それから外からの来訪者がいた翌日ばかりにそんなことが起こってね…。旅人だけじゃなく、村人も犠牲になったときもあったんだよ…」

…なるほど。そんな条件が揃ってしまえば、ああなってしまうのも無理もないだろう。彼等の過剰ともいえる警戒心の原因を知った少女はむしろ彼等を案じ、

「そ、それは…、怖い、です、ね…」

「…うん、そうだね。何せ、根本的な問題は何一つ解決していないからね…」

「じ、じゃあ、貴方はなんで、わ、私、を…?」

ふと生じた疑問を彼にぶつける少女。…まるで他人事のように村人達のことを語っているが、彼本人も村人には違いない。ならば、何故彼は自分を警戒しないのか?彼は恐怖を感じないのか…?

「それはね、君にはそれをする雰囲気が感じられなかったからね。商人の勘、ってのは案外馬鹿にならないものだよ?」

そう言っておずおずと訊ねる彼女に微笑み返す彼。そして続けて、人を見る力がなければ利益を出す商売に繋がらない。故に商いには時に直感を重視する。そう彼は語った。

人を惨殺するようには見えない…。なんだか自分が褒められたような気になった少女は顔を背ける理由が不安から照れ臭さに変わったらしく、

「え、あ、その…、ありがとう、ございます…」

と少しばかり頬を赤らめた。そんな彼女の様子を微笑ましく眺めた後、青年は料理の熱が冷めきらないうちに、と食事を勧めて自らもようやく手を付ける。

そうして二人はまだほんのりと暖かった料理を食べ終わると、

「何かしたいことはあるかい?できるだけ協力するよ?」

「あ、えと、じゃあ、訊きたいこと、があって…」

彼が商人だと言うのならある意味都合がいい。きっと多方面からの情報を仕入れているはずだ。そう思い彼女はなるべく多くの街とその概要をについて訊ね、青年もそれににこやかに応じる。そして、それから暫くは彼からの情報を纏める時間を過ごす。…流石は商人だ。その範囲の広さだけでなく詳細な部分まで把握している。

「あの、助かり、まし、た…」

既に仕入れていた街の詳しいことや、まだ認知していなかった場所のことまで知ることができた。やはり商いをしている者の情報網は頼りになる。期待以上の成果に感謝を示す少女。

「僕の情報が役立ったのなら嬉しいよ。また何かあったら言ってね」

そんな彼女に、にこやかに返す青年。そして想像以上に時間が過ぎていたことを知ると彼女に部屋で休むように促す。確かに外はもう真っ暗だ。いつの間にか日も完全に沈んでいる。一旦は部屋で落ち着いたほうがいいだろう。

「じ、じゃあ…」

「場所は大丈夫かい?案内しようか?」

「あ、だ、大丈夫、です…」

そうして少女は彼の提案を理、先程案内された今日自分が泊まることになった部屋へと向かった。

この家が普通よりも広いとはいえ、流石に迷ってしまうほどのものではない。彼女は難なく目的の部屋に辿り着く。そしてゆっくりと部屋に入り、扉を閉じ切った後、徐に深い溜息をついた。

「…疲れたかい?」

「…えぇ、そりゃ、ね…」

迷いなくベッドに向かう少女にそう話し掛ける剣。それに気だるそうにベッドの端に座りながら少女は応える。その際、つっかえないように剣を正面に抱える様にして持つ。

「じゃあ、このまま寝るかい?」

「……えぇ、そうする」

そしてそのままゆっくりとベッドに寝転び、剣を抱えたまま小さな寝息を立て始めた。


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