表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/101

第61話・真の狙い

古渡城に潜入し信秀の側に近づく事に成功した禰津神平たち。

警護対象者:信秀は草薙剣に興味無しみたいだが…

話し 聞いて呉れるのだろうか…

そして、どこへ行ったんだ雪斎党?

いい加減、姿見せろよ雪斎党! と思う今日この頃。

戦国奇聞!(せんごくキブン!) 第61話・真の狙い


 尾張、宮宿(みやしゅく)(熱田宿)の八幡部隊(はちまんぶたい)のアジトである。

 八幡部隊はリーダー:禰津神平(ねづしんぺい)、サブリーダー:原彦十郎(はらひこじゅうろう) 並びに望月源三郎(もちづきげんざぶろう)工藤籐七郎(くどうとうしちろう)も不在であった。

 その為、真田忍芽(さなだしのめ)望月千代女(もちづきちよ)禰津里美(ねづさとみ) と言った女性が目立つ、ある意味艶やかな、宮宿で目立つ存在となっていた。

 密命を帯び、他国へ潜入している部隊としては、如何なものか…とも思える状態であるが、そこはそれ 色々と興味を持ったり下心を持ったりした者たちが近づいて来るのである。

 雑多な情報ではあるが、それに混ざっている掘り出し物を探るのが情報インテリジェンス収集であるのだ。

 千代は占い巫女の(てい)望月新六(もちづきしんろく)は商売人の(てい)で情報を聞き出していた。

 そんなアジトに中間(ちゅうげん)姿の海野十座(うんのじゅうざ)が現れた。

 古渡(ふるわたり)城の禰津神平からの物資調達の連絡文であった

 書面には平手政秀(ひらてまさひで)が受け取っていた “北畠文書(きたばたけもんじょ)” の存在とその内容、織田信秀(おだのぶひで)為人(ひととなり)、そして信秀の近くで待機する事が可能になったので、物資を持って古渡城に来る様に記されていた。

 直ぐに神平の指示に従い動くかと思いきや、宮宿の実質的リーダー 真田忍芽は考えがある様で、協議(ランチミーティング)に入った。

 煮魚と漬物、炊き込みご飯をいただきながら、忍芽が神平の文を掻い摘んで説明し、古渡城に入る事の懸念点を問う。


「…と言う訳でありますが、皆様 如何お思いかな?」


 目を閉じて聞いていた若き参謀、工藤源左衛門(くどうげんざえもん)がゆっくりと目と口を開いた。


「神平殿は随分と織田信秀様を買っておいでの様ですが、()の強い当主は少々恐ろしく(おそろしゅう)御座る…

我等の父 虎豊は先の御屋形、信虎様の(あつ)き信任を頂戴しておりましたが、衷心からの意見が気に障られ 討たれ申した。

結果一族郎党追われる身となった者としては、皆が城に入るは(いささ)か危険かと。

尾張織田家は親類同士が寝首を掻く有様なれば、疑心暗鬼を生み易く、織田信秀の心の動きも読み切るは至難の業。

距離を置くが宜しいと存じます」


 忍芽は頷きながら


「左様ですね…私も源左衛門殿の意見に賛成です。

神平殿の文には具体的な雪斎党の動きは記されて居りませなんだ。

敵の出方が判らぬ以上、視野は広くし取るが良しと思いますが、城に入るとそれは出来ませぬ…」


 忍芽の言葉に望月新六が同意する。


「…儂もそう思う。

こちらが睨んだ通り、草薙剣を撒き餌としているのは判ったが、これだけ探っても次の一手、どの様に信秀様を釣るつもりか全く判らん…

このままで全員が信秀様の周りに張り付いても、後手に回るだけの気が致す」


 源左衛門が言葉を足す。


「織田が受け取ったと言う北畠家からの書状(北畠文書)は偽書であるは明白。

これの流れを追えれば雪斎党の尻尾が掴めるかもしれませぬな…」


 新たな意見も加味し忍芽が案を示した。


「されば、持って来るように申されて居る 毒消しの薬(セイロガン)丸餅(石鹸)…それに、何かの折の用心に “煙玉” を送り、我等は城外で偽書の流れを探りましょう」


 皆が頷き全員一致で結論が出た。

 安心してランチミーティングの食事に集中か、という時 十座が手を振り回した。

 飯を口いっぱいに頬張りながら、発言しだしたが 何を言っているか聞き取れない。

 視線が集まるのをそのままに、じっくり味わい 飯を飲み込み 再度 口を開いた。


「医者はいるのじゃ!

向こうの殿様に腕の良い医者が居ると言ってしまった(しもうた)で、亮按(りょうあん)先生には行って貰わねばいかん」


 今までその他大勢枠で話を聞いていた古澤が思わず声をあげた。


「エッ! 僕ですか?

イヤぁ僕、医師免許持ってないんで、診療すると医師法違反で懲役になっちゃいますから…て、そんな法律 まだ無いのか…

でも、僕 医者としてはヤブですよ、良いんですか?」

「…」


 本人のやぶ医者宣言に周りは否定も賛同も出来ない。

 が、そんな事は気に留めない十座が言い切った。


「良いのじゃ!名医と信じれば病は直るものじゃ。 “イワシの頭も信心から” と言うじゃろ。

つまらん物でも一旦信じてしまえば、ありがたく思える物…自信を持て」 


 亮按先生をつまらん物って言ったよね、今。

 つまらん物と言われて自信を持てる筈無いでしょうが…て、あれ


「そうか、名医と信じれば良いのか…よし、僕は名医だ。僕は名医だ。僕は名医だ」


 …自分に言い聞かせてるよ。…メンタルつえーな、古澤先生。

 忍芽は一瞬 言葉を失った様だが、結論を下した。


「では、古澤先生と薬などの品々を古渡へ送ると言う事で宜しいですね…」


 静かに手を挙げた者が居た。

 坂井忠(現地名:坂井忠継(ただつぐ))である。 …ちょっと遅れたが古澤への突っ込みか?


紗綾(さや)を取り戻す時に顔見知りが居ないとダメでしょ? 俺も行かなきゃ…」


 おぉ、冷静な状況分析と提案である。

 が、すかさず千代が声をあげた。


「それは…亮按殿も紗綾殿と顔見知りでありましょう?

何も忠継殿までも出向かんでもよろしいのでは…」


 当初は役として忠継の母親を演じていた千代であったが、最近はすっかり母親そのものになって居り、子供を手元に置いておきたい表情ダダ洩れである。

 これが(スパイ)が行う 完璧な成切り(アンダーカバー)と言う物なのであろう。

 そんな千代に坂井は微笑みながら


「古澤先生ではダメなのです。

紗綾は教師に不信感を持っているので、私が居ないと信用して呉れないのです」


 うーむ、坂井君 立派になった…偉いぞ。

 最終結論として 古渡城には 大量の毒消し薬(セイロガン)丸餅(石鹸)と煙玉を持って古澤亮按先生と坂井忠継が入城する事となった。

 整理すると、八幡部隊12名の内、神平や彦十郎と言った 腕の立つ武闘派6名が古渡城に詰め、源左衛門と新六 それに千代や忍芽などの、女子供…否、名付けるならば、頭脳派が城外で雪斎党の次の手を探る体制となったのだ。


―――――――――

 こちらは古渡城、神平たちの居室である。

 起請文を出せば、織田信秀の警護に加わる事を許された筈であったが、事はその様には進まなかった。

 家臣たちは用心深かったのである。 (当然ではあるが…)

 扱いは城内の一室に留め置かれ、連絡係の家臣の監視の許 軟禁に近い状態であった。

 しかしこれは 家臣が嫌がらせをしている訳では無いのであった。

 信秀自身、今川の暗殺計画を気にして居らず、()してや 草薙剣の真贋など まったく興味無しで、山積している他にやるべき事を優先し、飛び回っているのであった。

 そんな信秀の周囲に一々、神平たちの場所は用意出来ない。

 結果、暫く部屋で待て…の状態が続き、林秀貞(はやしひでさだ)に抗議しても “医者が来たら目通りさせる” と やんわりと()なされていた。

 と、待ち望んだ医者が来た。

 中間(ちゅうげん)(十座)に薬やら石鹸やらを詰め込んだ柳行李(やなぎこうり)を背負わせた、古澤亮按と坂井忠継である。

 早速 信秀に目通りを願い出て 古渡城 謁見の間に通される 古澤亮按先生、坂井忠継である。

 責任者として禰津神平、献上品の運搬役として原康景(彦十郎)も同席しての対面となった。

 手順通り、全員が平伏している所へ織田信秀が入室し、医師亮按の紹介や なんやかんや やり取りの後、持ち込んだ品々のプレゼンが行われた。

 まずは信秀が興味を示していた毒消しの薬(セイロガン)の説明であるが、これは事前に病人を仕込んでおく訳に行かない。

 効用の解説だけで…と始めた時に 林秀貞が 実はと喋り出した。


「今朝ほどから城内で腹を下して臥せって居る者ありとの事。 その者に飲ませて効き目を見ては如何か」

「ほぉ、それは都合良し。斯様(かよう)な時に腹下すとは、中々殊勝な者じゃ」


 これを殊勝と言うか微妙であるが、聞けばこの辺りは腹下しが多いそうだ。

 熱田は港町で魚市場が賑わっているのである。

 当時の調理は煮魚、焼き魚が主流であるが、加熱が不十分であったり、保存が不適切であったりして、食あたりも多かったのだ。

 と、言う事で急遽 毒消しの薬を処方され、経過観察である。

 効き目を待つ間に丸餅(石鹸)の披露に移ろう。


 今度は事前に仕込んで置いた小皿に盛られた泥やら、墨汁と麻布 そして水が張られた(たらい)と洗濯板が運び込まれた。

 汚した布を洗って洗浄力を見せる、テレビショッピングで良く見るヤツである。

 石鹸は安土桃山時代にポルトガルやスペイン方面から伝わったと言われて居り、この時点では知られていない。

 では洗い物はどうしていたか?と言うと、水洗いが基本で 手に入る時は灰汁(あく)や米の研ぎ汁などを使った。

 なので、洗浄力は低い物であったし、洗濯物は灰色に染まるのが普通。

 それが泥や墨汁で汚した麻が真っ白になる! もうビックリとなると言う寸法だ。

 まぁ種明かしとなるが、汚れと言うのは 付着して直ぐであれば、水だけでも割と落ちるのである。

 頑固な汚れというのは付着+酸化することで固着した汚れなのである。

 従って実演販売やテレビショッピングで “前もって汚しておいたXX” は洗剤抜きでも落ちやすい汚れなのである。

 プチ情報はこれ位にして、洗濯実演は成功であった。

 同席していた平手政秀は大層驚き、書状を(したた)める時の墨跳ねに重宝すると喜んだ。

 重ねて医師亮按が “汚れは穢れであり、病に繋がる。石鹸で穢れを落とせば疫病も防げる!” と、陰陽師の様な解説をして聴衆を惑わした。


 等々 時間を繋いでいた所に毒消しの薬の効き目が報告された。

 結果は…大いに効果あり!

 薬など飲んだことが無い者には少量の薬効成分でも、多大な効果が認められるものである。

 かつて老人がケロリンと赤チンに絶大な信頼を置いていた根拠がこれであろう。

 半刻で快癒したとの報告を聞いた信秀は歓喜し、何かを思いついた様であった。

 上段から林たちに命を下す。


「これは良き物を知った。

林、この医師亮按たちと折り入った話しをするゆえ、酒を持て! 馳走を用意せよ!」


 突然のスケジュール変更に林は焦ったが、信秀の直感は度々 吉と出るので 宴席の用意を進めた。

 神平も聞いていた進行との違いに戸惑ったが、泰然自若の体を装いつつ信秀の狙いを探るのであった。

 そしてドタバタと酒が運び込まれ、即席の宴である。


―――――――――

 信秀の音頭で乾杯し、(うたげ)が始まる。

 と言ってもこれと言った共通の話題がある訳でも無く、腹の探り合いである。

 神平が当たり障りのない話題で口火を切る。


「此度の薬と石鹸、お気に召しましたなれば、行李こうり一杯にお持ちしましたゆえ、是非お納めいただきます様」


 信秀は神平の言葉に一応頷きながら


「ん、であるか…吞んでおるか?林、平手 其の方等(そのほうら)からも()がぬか」


 信秀は何を狙っているのか、盛んに酒を勧めて来る。

 神平たちも注ぎ返し皆が黙々と杯を空ける。

 (あたか)も、呑み勝負の様相を呈してきた。

 平手の顔が桜色に染まって来た頃、(おもむろ)に信秀が神平に声を掛けた。


「禰津。 あの毒消し薬、中々大した物の様じゃの。…あれを織田で売らせては呉れぬか?」

「は?売る?」

「そうじゃ、実はの…宮宿では腹下しが まま 起こるそうじゃ。

あの薬を売りだせば、旅の者も安心であろう。製法を教えては貰えぬか?

只でとは言わぬ。其の方等(そのほうら)にも 利になる様取り計らおうではないか」


 これは…商談か?

 そうか…酔わせて調略するのが狙いか。

思ったよりコスイぞ、織田家は…

 織田弾正忠家の支配地には先ほども触れたが熱田港の魚市場、更に津島と言う湊町(河川港)もあり、こちらは川魚が名産であった。

 宿場に来た旅人に名産の魚介を食わせ、当たったら薬を売りつける…行って来いで大儲けだ。

 流石 弾正忠家、銭勘定に聡い、見上げた(見下げた?)商売人である。

 ちなみに熱田付近で採れるアジやイワシにはアニサキス(海洋生物に寄生する寄生虫)もついていて、激痛にのたうち回る者も見かけた。

 古澤たちが持ち込んだ薬の主成分:木タールはアニサキスにも有効な事が証明されているので、信秀の直感は正解なのであるが…

 それはそれとして、この薬は神平の独断で譲り渡せる物では無い。

 答えを渋る神平に信秀が()れた様に


「こ…この信秀が貴公等(きこうら)に損はさせぬ…と申しておるだがや。

製法が嫌なれば宮宿と津島のみで売り出す(織田家独占販売権)と言うのはどうだがね…」


 言葉がおかしい…改めて信秀の表情を窺うと 目が据わっている。

 織田信秀を守り草薙紗綾を取り戻すと言う作戦実行中(ミッション)の筈が、自分は何の交渉をしているのだ? と思いながら神平は話しを(はぐ)らかそうと 嘘を交えながらも おずおずと返答した。


「誠に有難いお申し出ではありますが、この薬 既に主家武田家が “武田毒消し丸” として売り出して居り申す。

…織田家に卸すと言う事であれば、お話を繋ぎ申しますが…」

た~けっ!(馬鹿か) ほんな事じゃ(そんな事では)ワヤだがね(台無しだ)

独り占め(独占)するで(するので)ようけ(沢山)もうかるのや(儲かるのだ)!」

「?信秀様…何と申されたか?」


 尾張弁全開である。

 平手政秀が慌てて説明に入った。


「殿は(いささ)か ご酒に弱く在られる…(それがし)が間に立ち申そう」


 (いささ)かって、弱すぎるだろ…それにどうやら絡み酒らしい。

 信秀は意に介さず愚痴を言い放つ。


「熱田の祭神には怪事(ケチ)付けられ、今川には付け狙われ、どえりゃあ迷惑じゃ…えらいでかんわ」

「あつたの神はケチで…いまわの際に狙われ…」

「平手! 余計な事はせんでええ(しなくて良い)。 ほんに(本当に)とろくせゃあ(馬鹿馬鹿しい)

 でぇてぇ(大体)、平手 おみゃぁ(お前が)が草薙の剣だの何だのと、た~けた事(馬鹿な事)言っとるで、吉法師までが釣られるだがや(のだ)

 かぁいそう(可哀想)に吉法師がた~け(馬鹿)だ、うつけ(愚か)だと、陰口叩かれとるぎゃ(て居るのだ)


 平手が赤い顔で律儀に翻訳し出す所で、亮按先生がこれまた赤い顔で喋りだした。


「まぁまぁ、信長様 楽しくやりましょうよ(⌒∇⌒)」

「左様、左様 は、ははは…」


 林も場の雰囲気を下げぬ様、無理して笑ったが 上段の信秀の顔を見て笑いを引っ込めた。

 信秀は眼光鋭く、古澤を睨んでいる。


「?…」


 睨まれても自覚の無い古澤は笑いながら首を傾げた。

 信秀が酔いから冷めた 低い声で古澤に問いかけた


「信長 と申したな…その名、吉法師に与えようと用意していた名じゃ。

誰にも申しておらぬ物をなぜ知って居る? 奇怪な奴らじゃ…」


 平手が酔眼のまま信秀に指示を仰ぐ


「矢張りこ奴ら、刺客の一味…早速、牢に入れ厳しく詮議おば…」

「…否、今まで通り部屋に押し込め、監視を増やすに留めよ

奇怪なれど この者たちは銭の匂いがする」


 流石 弾正忠家、銭勘定に聡いのであった。


―――――――――

 何が問題であったか、良く判らないままに部屋に戻された神平たちは、準軟禁から正式な軟禁状態となった。

 今出来る事は静かに熱く 作戦の組み直しだ。

 特に同席していなかった源三郎たちは寝耳に水、宴席の成り行きからの説明を求められる。

 結果 “信長” がキーワードであったと認識されたが、それが何を意味するかは 新たな分析が必要である。

 まず “信長” とは?の質問が飛び、古澤が 曖昧かつ明快に答えた。


「織田と言えば 信長、なんですよ! 今川が警戒するのは 信長の筈で、そこら辺は美月先生が詳しいんですけど…

それを煮詰めて出た答えが信秀様を守れ って指令だって聞いたので、信秀がこの後 信長を名乗るだろう…て思ってたんですけど…」


 古澤の解説を聞きながら 望月源三郎が言い切った。


「尾張の織田には 信長なる者は居らぬ」


 それを受け神平が考えをまとめる様に静かに話し出した。


「先程はっきりしたのだ… “信長” は信秀が嫡男(ちゃくなん)、吉法師のこれから名乗る(いみな)であると…

実は今までも消えぬ疑問が幾つかあったのじゃが、亮按殿の話しで閃いた。

これから説明するゆえ、穴が無いか皆で聞いて欲しい」


 身を乗り出したメンバーに神平が語る。


「雪斎党の罠、北畠の書状じゃが、織田家筆頭家老とは申せ、普通は平手に持ち込むであろうか?

織田との共闘を望むならば、古渡の信秀様に持ち込むのが筋…と腑に落ちなんだ。

が、草薙剣の話しを嫡男吉法師の耳に確実に入れる為とすれば、平手に渡すが腑に落ちる」


 神平の語りを聞き、彦十郎が頷き


「それであれば…儂も不思議が御座った。

信秀様は草薙剣なんぞに興味は無いと仰せで、それは家臣も知って居った。

撒き餌としても仕掛けが合って居らぬと感じていたが…狙いが(わらべ)であれば頷ける」


 話しの流れに乗り、籐七郎も喋り出す。


「吉法師様は何処に居るのじゃ?」


 源三郎が答える。


「確か…那古野城の筈じゃ」

「通りで…雪斎党の気配が ここ熱田で全く無いのが解せなんじゃ。

身を隠して居るとは言え、それなりの人数。 跡形も無く気配を消すは不可能。

潜む先が吉法師様の居城、那古野付近であれば 説明が付く」


 各自が頷き合う中、源三郎が一番大きな疑問を口にした。


「所で一番の不思議があるのじゃが…

亮按殿は何故 吉法師の(いみな)を知っていたのじゃ?」


 八幡部隊の面々は城西衆が未来人である事は知らされていない。

 海を越えて来た異国人と聞かされているのだ。

 聞き覚えの無い言葉や見た事も無い道具などは他国の物で納得できるが、これから付けられる諱を知っているのは不思議以外の何物でもない。

 皆の視線が古澤に突き刺さった時、神平が力強く答えた。


「美月殿の御託宣じゃ。 城西衆の巫女殿の神憑りは皆も知って居ろうて」

 

 真田幸綱(さなだゆきつな)から美月の占いが脅威の的中率である事を聞き、駿河で美月発案の “すいぃつ作戦” を実施した神平は、城西衆の不思議は疑わず受け入れる事にしたのである。

 また、上原城救出作戦で直接指揮された十座と、身近で目撃していた彦十郎も同意したので、源三郎も頷かざるを得ない回答となった。

 神平が全員の顔を見渡し、作戦の組み直しを進めた。


「我らは随分の見立て違いをしていた様じゃ…

雪斎党の狙いは信秀様に非ず。 嫡男、吉法師である!

となればじゃ、一刻も早くここを抜け出し 那古野へ向かわねばならぬ。

これよりその策を練る」

「は!」


―――――――――

 えー中の人です。

 ふわっとした作戦のまま、ここ迄来た神平たち八幡部隊でしたが、吉法師の存在に辿り着きました。

 ここ迄来たら私が喋ってもネタバレにならないですよね?

 よく判らんと言う読者が居られるかもしれませんので、開示できる雪斎党の動きを喋っちゃいます。

 わーなんだか 『××の巨人』みたい!

 そうです、雪斎党のターゲットは最初から “信長” でした。

 今川義元(よしもと)を担いでいる香山教頭や藤堂にすれば、鬼門は何と言っても “信長” です。

 リスクマネジメントの主要な対応方法 “回避・低減・移転・受容” で言えば回避策で、リスク原因そのものを消してしまおうって作戦だった訳です。

 さて、そうと判れば次は…雪斎党は吉法師=信長に、どの様なアプローチで排除策をとって来るのか?

 そして八幡部隊は雪斎党の企みを阻止し、紗綾を取り戻せるのか!

 あれ?話数が進んだ割りに状況変わってないじゃん…て思った貴方。

 ヤバい、気づかれちゃった。

 もう少しの辛抱です。人生急ぐと怪我するから…

 って所で次回へ。


第61話・真の狙い 完


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ