表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/101

第45話・宮川砦の攻防

画期的新戦術!の筈が…様子がおかしい。

想定外なんてよくある事、v( ̄Д ̄)v イエイ …と言い放てるのはオヤジだけ。

まぁでも、挫折と水疱瘡は若いうちにやっとく方が良いのだ。

と言う回です。

武田の若手、負けるなよ~

 戦国奇聞!(せんごくキブン!) 第45話・宮川砦の攻防


【武田サイド:上原城救援軍】

 ここは夜半の金沢宿である。

 宿場の道は篝火(かがりび)に照らされ、(せわ)しなく兵士が行きかっている。

 武田騎馬隊が馬を休め、ついでに兵士も休息を取っているのだ。

 なぜこんな所で夜を明かしているのかと言えば “宮川砦” が抜けなかったからである。

 確かに騎馬隊の突破力は凄かった!

 飛丸隊の打ち出す青玉、赤玉の(つる)べ打ちで 物見櫓は焼け落ち、足止めの柵も炎に包まれた!

 敵兵は逃げまどい、集団で突入する騎兵を止める術はなかった。

 しかし、である。

 “宮川砦” は落とせなかったのだ。

 これが鶴翼だの魚鱗だの陣形だけの陣地であれば、騎馬隊の突破力で木っ端微塵に出来る筈だったのだが “宮川砦” は急造とは言え、宮川と弓振川を天然の堀とした防御力の高い要塞であった。

 (いくさ)に慣れたしぶとい敵兵は身を縮め騎馬集団が通り過ぎるのを待ち、二重三重の柵で馬の脚が止まると、後ろから反撃を仕掛けるのであった。

 期せずして飯富虎昌(おぶとらまさ)に無理やり背負わされた、赤母衣(ほろ)に助けられた訳だが…

 対岸の飛丸隊も混戦となった戦場には砲撃を加える事は出来ず、見守るだけであった。

 結果、橋頭保も築けず 日没による時間切れで引き上げとなった。

 当初の計画では甲斐から諏訪、上原城までを二日で走破し、長時軍を蹴散らす目論見であったスピード重視の騎馬隊は、見事に邪魔をされ 残り二里半(10㎞)でストップである。

 武田の戦術を先読みしていたのは誰なのか? 長時が想定以上に、やればできる子だったのか?

 ぶっちゃければ今川雪斎党の社会科教師、藤堂の入知恵なのだが “騎馬隊には馬防柵” の有効性が、長篠以前に証明されてしまったと言えよう。

 前向きに捉えれば、新戦術の課題が見えた一戦 と言えるが、作戦の言い出しっぺである 城西衆・春日昌人は頭を抱えていた。

 騎馬隊の単科運用も飛丸隊との連携運用も、成果は今一つで、決定打が無い。

 そしてなにより、実際の戦場を初めて目にした衝撃と恐怖であった。

 敵兵も味方の兵もあちこちで槍に突かれ、炎に焼かれるのだ…自分の発言一つで犠牲者が出る…その事実に打ちのめされたのである。

 陣屋の土間に(うずくま)り 震えながら独り言を呟いている春日に騎兵隊副長、甚四郎&源四郎が心配そうに声を掛けた。


昌人(春日)殿、いかがなされた? 顔色が悪く(わるう)御座るぞ…」

「僕のせいなんだ…僕の思いつきでいっぱい人が死んじゃった…」

「何を申される。これは(いくさ)じゃ、人死(ひとじに)も詮無き事。昌人殿のせいなどではあろう筈が無い」

「だって僕、馬があんなに火を怖がるって知らなかったし…」


 人が行きかう土間に副長ズと軍師(見習い)が(うずくま)り 通行の邪魔となっているのを見かねて、大将甘利信忠が呆れ顔で近づいて来た。


「お前たち、邪魔じゃ!何をして居る」

「…信忠さん。僕のせいなんだ…いっぱい人が死んだのは…騎馬隊だけって駄目だったんだ…」

「否、巧く行かぬは我等の指揮が未熟ゆえ、決して昌人殿のせいなどでは…」


 涙を溜めて信忠に訴えかける若人(わこうど)らに表情を変えず言い放つ。


「ひよっこ共が自分のせい など、生意気な口を()くな!

“勝敗は兵家の常” 初めて試す軍略に不都合が出るのは当たり前。そんな事は承知の上で、勘助も御屋形様も お主の策を採用したのじゃ。

責めは将が持つ事、軍師は己の才を磨き、負けを勝に転じる策を考えれば良い事じゃ」


 なおも涙目で信忠の(いか)つい顔を見つめている春日に、コッソリと背後から近づく生成(きな)りの作務衣姿がいた。

 テンパってる感情と周りの慌ただしさに、接近する者に気付かない春日の背中をいきなりドヤシ、驚かす作務衣。


「わっ!! 春日君 驚いた? 来ちゃった!イェーイ (⌒∇⌒)」


 これ以上ない位 明るい声の主は城西衆、明野秀哉であった。

 普段の彼とは思えないハイテンションである。

 いきなり背中をドヤしつけられた春日は涙目のまま振り返った。


「え?! 泣いてる? ゴメン…そんなに痛かった?」

「え?…明野君? どうしてここに居るの? ダメなんだよ、戦場にきちゃ!」

「来ちゃダメって、君に言われても 説得力ないよ。

僕は “運べる君” の開発者だもん、実際の使用環境でチェックしなきゃ。

実機確認だよ、当然だろ?」


 開発者としては、実戦での使用状況を是非とも見ておきたかったのだろう、明野も春日同様に教師の目を盗んで “運べる君” に乗ってここまで来てしまったのだ。

 今の城西屋敷は古澤と中畑が不在であり、鷹羽一人の監視はザルと言っても過言ではない。

 教師の目は盗み放題。 春日と明野以外でも、好奇心の赴くまま 屋敷を抜け出している生徒も多かろう。


「それにね “運べる君” の応用版を作ってみました!」

「え?何々なに!」

「15人乗りの兵員輸送車!教来石さんたちを乗っけて 今 到着(とーちゃーく)


 いきなり現れた明野に慌てたのは春日だけではなかった。

 甘利信忠も思わず口を衝いて小言が飛び出す。 気分は城西衆の教師か保護者である。


秀哉(明野)! お主まで城西屋敷を抜け出しおって! ここは物見遊山(ものみゆさん)の地ではないぞ」

「え?フォロミーユーサン? 英語?わかんないよ…

あ、それより春日君、ビュンビュン丸搭載の “運べる君” の調子はどう?騎馬隊に付いて行けてる?」

「うん、大丈夫。騎馬隊だっていつも全力疾走って訳じゃないからね。常歩(なみあし)(時速4~5㎞)なら問題ない。」

「そう、良かった。それなら兵員輸送車タイプはもっと走破性が上がっているから、速歩(はやあし)(時速約10km程度)まで行けると思うよ!」

「おおーすげー」


 軽くスルーされた甘利信忠が強引に割り込む


「…おいお主たち!人の話しを聞けと言うに。

秀哉! お主の荷車は大した物じゃ。あれで(いくさ)の形が変るじゃろう。したがここからは、同道するには危ない。甲斐に戻れ」


 折角来たのに戻れと言われ、一気に不満顔になった明野が反論の口を開こうとした時、春日が素っ頓狂な声を上げた。


「あああ!…そうか、思いついた!機動化歩兵だ!これなら騎馬隊のスピードを殺さず砦を抜ける!」

「!なんじゃ?昌人、なにか思いついた様じゃな…説明せい」

「OK!

何が問題だったかって言うと騎馬隊は突破できるけど駆除は出来ないって事。でも騎馬で駆除するのに脚を止めるとやられちゃうでしょ。じゃあどうするかって?つまり足の速い歩兵が居ればいいって事!で、明野君の兵員輸送車があれば仕上げが出来るんだよ!」

「…よう判らんぞ」


 えー中の人です。

 春日君のオタク特有の早口の説明は判る人は判るが、判らない人は全く理解できない説明ですので、今思いついた新戦術について簡単にご説明いたします。

 宮川砦を攻めきれなかった要因は、陣地に(こも)った敵兵を排除する手段(徒士(歩兵))が同道できなかった事です。

 騎兵の単科運用が強いからと、前のめりでここまで来ましたが、それは条件が揃った場合の話しです。

 確かに春日君が献策した時にも “条件が揃えば” とは念押ししていましたね。

 騎馬隊が無敵になれる条件とは、(さえぎ)る物が殆どない、草原や広い畑に 敵が固まっている状態です。

 今回は上原城の草地で囲っている敵の背後から突っ込む形を想定しての作戦でした。

 それが、砦なんかを築かれた日にゃ、必勝条件なんざ消し飛びますって。

 じゃぁ砦に籠った敵を破るにはどうするのか?

 これは現代戦でも同様で、突破口をつくり、そこを拡大し、陣地を固める。 と言う段取りになります。

 手順をまとめると以下になりまして、カッコ書きは武田軍が行動した場合です。

 ①爆撃、砲撃で敵の防御施設に損害を与える。(飛丸隊で柵、塀を粉砕)

 ②戦車等機甲部隊で敵防御線の穴を広げる。(騎馬隊で前線突破)

 ③歩兵部隊が敗残兵を排除し橋頭保を作る。(徒士が素早く侵入し掃討)

 ④全軍前進。(全軍前進)

 これの繰り返しで敵陣地を浸食して行く訳ですね。

 で、この③のプロセスを行う為には 徒士が騎馬隊と同速度で進軍する必要があるのですが、徒士(歩兵)はその字の通り歩きが基本ですから、遅いのです。

 スピードが命の騎馬に同伴するにはどうすれば良いか?

 これの答えが兵員輸送車なのです。

 明野君が “運べる君” を開発した事により、今で言う自走砲と機械化歩兵に近い装備を持つ事になり、軍の近代化が進んだのです。

 本人はあまり意識していなかったようですけれど…

 まとめますと “運べる君” のプラットフォームで、単純な輸送力のみならず、火力、兵士の機動力向上が見込まれるのだ!と言う事をご理解いただけましたでしょうか。


―――――――――

【小笠原サイド:宮川砦】

 払暁、明け六つ(午前5時頃)である。

 ここ、宮川砦は昨日の武田の猛攻を(しの)ぎ切り、兵たちの士気は高かった。

 次々と壺が飛んできて、着弾と同時に炎を上げるヤツは初めて見た。

 噂に聞いていた “飛丸” とか言う武具であろうか?

 最初は肝を潰したが、落ち着いて対処すれば 普通の火事への対応であった。

 火を消し止めた後、道順とか言う偉そうなヤツの指示で、騎馬防ぎの柵を配置し直した。

 その上、柵と言わず塀と言わず、燃えそうな物には たっぷり水を含ませた藁束を巻き付け、火責めへの備えをした。

 もう昨日の様に炎に追われる事は無かろう。

 お蔭で辺り一面 びしょびしょになり、夜中は寒くてしょうがなかったが…

 それに一日守り切る毎に、別手当を出すと ここの大将だったと思う 水竹某とか言う武将が叫びまくって居った。

 こちらの兵は未だ二千は下らぬと聞いたし、稼がせて貰おうじゃないか!

 武田の奴等がどこに居るかはよう知らんが、金沢宿まで下がったと聞いている。

 であれば、攻め掛かって来るのは巳の刻(午前9時前後)頃じゃ。

 もうひと眠りしようかの…と言う状況であった。


【武田サイド:上原城救援軍】

 払暁である。

 昨夜は落ち込みまくっていた春日であったが、新たに思いついた “機動化歩兵” を試したくて、ほとんど寝ていない。

 救援軍大将・甘利信忠は、今日こそは 自らのキャリアを活かした作戦を出す気満々だ。

 騎馬隊副長・甚四郎&源四郎も、昨日までの鬱憤を晴らすべく静かに闘志を燃やしていた。

 そんな救援軍は新型荷車 “運べる君” の自走砲仕様 飛丸隊 を先頭に、騎馬隊、 “運べる君” の兵員輸送車仕様 と隊列を組んでの行軍である。 

 宮川砦までは一里半(約6㎞)。 徒士であれば一刻半(約3時間)掛かる距離だが、足回りが強化された救援軍は倍以上の速度が出せた。

 つまり、辰の刻(午前6時~8時)の内に攻撃開始できると言う事である。

 と説明している内に、現場到着である。

 昨夜に策定した通り、飛丸隊の最大射程での砲撃から攻撃開始だ!

 昨日は貴重な雷玉温存の為、青玉、赤玉の焼夷弾を使用したが、本日は一気に勝負を掛けるべく雷玉の(つる)べ打ちであった。

 物見櫓を失い武田軍接近を察知できず、また 不燃化対応は万全と油断していた敵方は、大半が寝ていたり、食事中であり 戦支度が出来ていなかった。

 初めて受ける火薬の攻撃は落雷かと思う様な轟音と、想像を絶する破壊力で思考を停止させる。

 砲撃で砦の門は破壊され、雪崩れ込む騎馬隊を見ても殆どの兵が反応出来ない。

 地に伏せ、騎兵をやり過ごす兵たちが次に目撃したのは、昨日は居なかった 槍を構え隊伍を組んだ徒士勢であった。

 逃げ遅れた砦方の兵を追い立て、突き立てる組織だった攻撃に、反撃する意思が急速に萎んでいく。

 胴巻き(防具)を慌てて巻きながら、四方に逃げ出す兵たちに新たな騎馬隊が襲い掛かる。

 正面を避け、浅瀬を渡ってきた甘利信忠率いる別動隊であった。

 騎馬隊が一旦戻り、徒士隊が敵兵排除が完了すると飛丸隊が前進し、再度雷玉の砲撃。

 破壊された馬防柵から騎馬隊が突入し、続いて徒士隊が侵入。

 これを3回繰り返した頃には、砦に動く人影は無くなっていた。

 一刻(2時間)の攻防であった。

 逃げ落ちる敵兵をそのままにして、休憩に入る武田軍。

 今日の内に 上原城に着けそうである。


―――――――――

【武田サイド: 高遠城】

 一方、こちらは小笠原軍の神田将監(かんだしょうげん)、小笠原信定に囲まれた高遠城である。

 城代・板垣信方の兵力は約600。

 敵方 小笠原軍は5,000は居るだろうか。

 通常、城攻めは城方の5倍以上の兵力が必要と言われている。

 600:5,000 = 1:8 …ヤバイ数である。

 が、この数で囲まれても板垣信方は動じなかった。

 “板垣衆には飛丸がある” この一点での強気であった。

 が、しかし である。

 信方は重要な点を見落としていた。…飛丸は “攻城兵器” なのである。

 読んで字の如く、城を攻める時に最適の兵器で、城を守る時にはそれほどでもないのだ。

 弓兵には比べ物にならない程、射程は長いが 速射は利かないし、小回りが利かない。

 大体、城の縄張り(城の設計)が大砲の運用を考えていないので、射角が限られ、見えていても撃てない所が多々あった。 (※1)

 神田将監は兵糧攻めを企画していたので嵩に懸かって攻める事はしなかったのだが、そんな状況を “飛丸に恐れをなして手出し出来ない” と読み間違えた信方は、まんまと高遠頼継(たかとおよりつぐ)に水の手を切られてしまったのである。

(板垣信方…この爺さん、実は大変な粗忽者なのでは? と思えて来る今日この頃である)

 追い詰められてもジタバタしない!

 絶対御屋形様が救いの軍を送ってくれる。儂が育てた晴信様だから!と、そういう所(だけ?)はブレない信方である。

 水の手を切られても ワザと城門を開いて挑発して見たりとか、平然と籠城を続けているのだが、刻一刻と命の灯は小さくなっているのだ。


 ※1:火砲の運用を想定した城は稜堡式城郭と言われている。日本では函館五稜郭が有名だが、五稜郭は大砲で撃ち合うには小さすぎて実戦では役に立たなかった…無念。


―――――――――

【武田サイド:甲斐府中(甲府)】

 躑躅ヶ崎館(つつじがさきやかた)である。

 広間の上座 上段には御屋形様、武田晴信が床几に座り、瞑目している。

 広間中央には諏訪、伊那平の状況が並べられた大きなヘックスシートが置かれている。

 その上には騎馬隊を表す馬の置物やら、小笠原軍を表す案山子の玩具やらが戦況を表している。

 その前を行ったり来たり 忙しない勘助。

 頻繁に報告が来るのだか、上原城救援軍の進軍速度が上がらないのだ。

 昨日から一睡もしておらず、先程から独り言が漏れている事に気付いていない様である。


「ううむ、昌人の言につい乗ってしまった(しもうた)が、騎馬隊は早計であったか…じゃが “疾きこと風の如し!” は孫氏も申しておるし…」


 やはり春日の師匠である。 行動パターンが似ている。

 張り詰めたような弛緩したような広間に鷹羽が駆け込んできた。


「勘助さん! 雪斎党が黒幕だ!」

「大輔! 何事じゃ?」

「俺宛てに手紙が来たんだ!」


 鷹羽の手には書状が握られている。

 受け取った勘助が目を通し、顔を(しか)め、晴信に手渡した。

 鷹羽が待ちきれない様にしゃべり出す。


「判りづらい書き方ですが、雷玉の製造法を教えるなら伊那に援軍を送る って言ってきてます。

これって、小笠原が動いたのに気付くの早過ぎるません? 

ゼッタイ、裏で糸引いてるの雪斎党ですって!」


 書状を読み終えた晴信が静かな声で鷹羽に喋りかける。


「この時期に送ってくるのは確かに…したが、如何様(いかよう)にも言い逃れが出来る様にも書いて居る。

“長時が動くは必定、その時の為に” と、何時とは言って居らぬ。

同盟ゆえ遠慮なく助けを乞えと申していると言い逃れ出来る。

…ふむ、しかしこれで腹落ちしたな勘助。

今回の手際良さ、長時だけの知恵では無かったと言う事じゃ」

「は!(まこと)に…これで腑に落ち申した」

「く…教頭の奴、こういう所は…狸過ぎる!…でも、返事、どうしましょ?」

「有難いが心配ご無用…とでも返して置け。我等だけで上原城も高遠城も守れるわい!」


 勘助が、ギロっと目を剥き言い捨てた。

 その言葉に思い出した様に晴信が疑問を口にした。


「高遠城と言えば…四日で救えると申しておった原虎胤(はらとらたね)と横田高松(たかとし)は如何した?

今はどの辺りじゃ?」


 問われた勘助も一瞬 思い出そうとするが、答えが出ない。

 広間を見渡し、伝令、使い番たちに声を掛ける。


「皆に聞く、虎胤殿と高松殿は何処に居るか知る者は居らぬか?」


 部屋中の者が顔を見合ったが、声を上げる者は皆無であった。

 それを見た勘助が声を落とし、晴信に報告した。


「行方不明に御座る…」

「…」


 …オヤジ達、まさかヤルヤル詐欺で逃げたんじゃねぇよな?

 微妙な空気が流れる躑躅ヶ崎館(つつじがさきやかた)の広間であった。


 第45話・宮川砦の攻防 完


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ