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第42話・ピンチをチャンスに新戦術

ヤ…ヤバイ。 油断しすぎた…

長時、やるじゃないか…勝てんのかこれ?

と言う状況のお話です。

勘助も(作者も)ガンバルから読者の皆さま、ついて来て下さいね。

戦国奇聞!(せんごくキブン!) 第42話・ピンチをチャンスに新戦術


 諏訪から異変の知らせが届いたのは、諏訪満隆が上原城に乗り込んだ日の真夜中であった。

 勘助は怪獣映画の有能な科学者よろしく “こんな事もあろうか…と” あれやこれや対策を打っていたのだが、今回は(ことごと)く機能しなかった。

 まず 緊急アラート用の『狼煙台(のろしだい)ネットワーク』が、曇天の為 巧く機能しなかった。

 下諏訪勢に与えていた『書付(作戦指示書)』が無視され、無抵抗で長時軍の侵入を許したのは、下諏訪衆とのコミュニケーション不足が原因であろう。

 要所要所に『伝令用替え馬』を設置していたのに、いつ誰がどんな時使えるのか の使用条件伝達漏れで上原城からの早馬で使われなかった。…これもコミュニケーション不足である。

 奇襲を受けた時用のスクランブル体制、『緊急即応軍』制度も作っておいたのだが、今回当番であった小畠虎盛が風邪で寝込んでおり、次の番の穴山は金山視察で留守。

 引継ぎが上手くされておらず、結果 『緊急即応軍』 機能せず。

 最後の砦 晴信直掩部隊の出陣で乗り切ろうとした所、上原城・信繫の知らせには “話が(こじ)れるので くれぐれも晴信は動くな!”  とあり、釘を刺された。

 仔細は不明だが “晴信と湖衣(こい)姫 婚姻説” が諏訪反乱の原因であるらしい…なんのこっちゃ?


 と、なんやかんや 気付いてみると直ぐに動ける軍が居ない状態となっていたのだ。

 そんなバカな、と鼻で笑った そこのあなた! さては歴史を知らぬな…

 実際 世の中の大惨事と言うのは、幾つもの不幸が重なって発生するのである。

 一つ一つは小さな不具合だが、これが連鎖し、信じられない様なカタストロフィとなるのだ。

 タイタニック号だって数多い不運の一つ、例えば氷山を避けようとせずに頭からぶつかってれば 最悪の沈没は避けられたかもしれない…

 ミッドウェー海戦だって日本軍の数多い策敵機の中、たった1機の発進遅れが無ければ、また 偵察員の報告がもう少し明瞭であれば、歴史は違う道を辿ったかもしれない…

 他にもチンケな小説家では思いつかない様な、悪魔のピタゴラスイッチ的、不運の連鎖は枚挙にいとまがないのである。

 そんな悪魔の落とし穴にハマりかけた時、不運の連鎖から脱するには “冷静な分析と大胆な決断” そしてちょっぴりの “幸運” が必要なのだ…が、明け方の軍議は空転した様であった。


―――――――――

 ここは早朝の城西屋敷である。

 夜明け前から勘助をはじめ、多数の人間が走り回り 喧噪に包まれた屋敷は、妙な高揚感である。

 普段なら体育教師古澤が真っ先に情報を掴んで、鷹羽の部屋に駆け込んで来るのだが、生憎 中畑と古澤は駿河に出張中であった。

 騒がしさに目を覚ました鷹羽は廊下を覗き、春日昌人に出くわした。


「お!春日。何事だ?」

「あ、先生…おはようございます。 良く判んないけど、諏訪に敵が来たらしい…」

「え!諏訪って黒島さんたちが静養に行ってるけど…ヤバくないか?」

「そうなの? 僕、勘助さんに呼ばれて応接室に行くけど、一緒に行く?」

「行く行く」


 応接室にはガックリと座っている勘助、ムッとして肩を怒らせている教来石、俯いて眉間を揉んでいる駒井が居た。

 教来石は飛丸生産状況の報告で府中に来ていて、この騒ぎに巻き込まれた格好だが 何やらデジャブる光景ではある。

 鷹羽は勘助を認めるといきなり、核心を突いた。


「諏訪に敵が来たって聞きましたけど、大丈夫なんですか?」


 勘助はギロっと鷹羽を睨み返答する。


「ダイジョバナイ!」

「…」


 …城西衆の言葉に かなり毒されて来ている。

 勘助は表情を変えず春日に目線を移し


「おう、昌人 来たな。…上原城救出の作戦を作るぞ。手伝え!」

「え?村上足止め作戦は出来てたんじゃないの?」

「村上は動かん!虚を突かれた…小笠原長時が直接動きよった。 それも下諏訪を引き入れ、既に上原城を囲んで居るじゃろう…」

「えーダメじゃん。…じゃ、どうなってるの?」


 春日の言葉に反応し、教来石が赤ら顔で声を上げた。


「全く、重役の方々は人に頼り切り!役に立つ様なお考えは申されぬ!と、言うより 誰の所為(せい)か (あげつら)うばかりじゃ!」

景政(教来石)殿、愚痴を申している暇はないぞ。 それに御屋形様も申された通り、我等 皆に慢心が在ったのじゃ。

ここは文殊で切り抜けるしかないのじゃ」


 駒井が教来石を諭しながら、先ほどまで躑躅ヶ崎館(つつじがさきやかた)の軍議で使用していた状況図を机に載せ、御復習(おさら)いを始めた。 (図1)


 図1:

挿絵(By みてみん)


「小笠原は村上を頼らず動きよった。 …それに諏訪衆に調略の手を伸ばし、下諏訪は既に落ちて居る様じゃ(手順1)。

…天竜川沿いに岡谷道で高遠城に向かう部隊があるのは、軍師殿読み通りじゃが、規模は まだ判らぬ(手順2)。

上原城に向かって居る敵は 四千との事じゃが、陣容は定かではない…

上原城の信繫君が籠って居られるが、手勢は三百ちょっと、それに諏訪満隆の二百ちょっとが加勢に来たそうじゃが…

上原城を抑えられると高遠への援軍も送れなくなる…という有様じゃ」


 状況図を睨みながら 勘助が絞り出す様に声を出す。


「四千と五百…城に籠っても危うい数じゃ…何としても信繫様と禰々様はお救いせねばならぬ。

景政(教来石)殿、武川で動かせる軍勢は如何ほどじゃ?」

「完成している飛丸が30基ほど…したが、我等が背負(せおう)て運ぶには多過ぎて…

普通の戦支度ですれば、武川衆総出で300程は…」


 三人は沈痛な面持ちである。

 鷹羽と春日は顔を見合わせ、誰に声を掛けるべきか逡巡した。

 が、この様な時は情報整理が第一である。

 整理すると見落としていた事に気付きやすいのだ。

 鷹羽が勘助たちに向かい訊ねた。


「で、援軍は誰が行くんですか?」

「…色々手違いでの、まとまった手勢が出せぬのじゃが…大丈夫じゃ、支度が済み次第、五月雨でも送る事を考えて居る!」


 勘助が明らかにカラ元気と判る声で答えた。

 が、春日が悲鳴に近い叫びを上げた。


「えー?ダメだって勘助さん! 小戦力の逐次投入は被害拡大するばかり…って、武田学校で教えてたじゃん!」

「…あぁ、それはそうじゃが、背に腹は代えられぬであろう?」

「ダメダメ! そうやってドツボにハマるって…これも勘助さんが言ってた事だよ。

あ、そうだ。 この前 武田学校で試した編成が在ったじゃん。あれを使おうよ!(⌒∇⌒)」

「ん?何じゃったかな…」

「“単科編成” だよ!」


 耳馴染みの無い言葉に教来石が質問をぶつける。


「た…たんか? なんじゃそれは?」

「騎兵だけ、弓兵だけ、それぞれの兵科の単独運用…面白そうでしょ?(⌒∇⌒)」

「それは、…強いのか?」

「一応、武田学校で試した結果、ハマれば今までの用兵の2,3倍は強い!」

「三倍!それは是非にも…したが、それ程強く(つよう)なるなら、疾うの昔(とうのむかし)に 皆が行って居ると思うがのぅ」

「それは、汎用的じゃないからね。 “ハマれば” って言ったでしょ。

普通は戦場の状況を固定できないから、どんな状況でも対応出来るように、異なる兵科をまとめて一軍としているよね。

それぞれの足軽大将が 槍何人、弓何人、騎馬何騎 って揃えて出陣するでしょ?

これは “諸兵科連合” って言って、融通の利く間違いが無いやり方だね。

…でも戦場が限定出来る時や、目標が限定的な場合は 単科編成が有効だよ(⌒∇⌒)」


 駒井と教来石が春日の言葉に目を輝かせて質問をぶつける。


「…小笠原相手では限定できると?」

「そう、今は時間が勝負、でしょ? なら機動力と突破力が強味の騎兵一択!」

「成程、今の上原は足場も良し。馬を遮る物は少なく(すくのう)御座るな。

…したが騎兵一択と言っても、小畠の騎馬はいいとこ 百が少し。 これだけではのう…」

「違う違う、ここの周りに居る騎兵を集めるんだってば! 甘利、飯富(おぶ)、小畠…この府中付近の屋敷に詰めている騎馬をみーんな集めて、大きな騎兵隊にするんだよ。

今まではやりたくても各家の壁で試せなかったけど、緊急事態だもん、やれちゃうじゃん」

「…成程。で、強く(つよう)なると言っても、相手は四千じゃ。 如何ほど集めるのじゃ?」


 駒井の質問を受け、春日は喋りながらスマホの電卓を使い、机上の紙に表を書き出した。


「まず、防御力と訓練度を考慮した戦力比を計算すると…

上原城は籠城するんでしょ?勘助さんの言っていた兵力はこれだね。(図2)…で、僕の分析はこれ(図3)」 


 図2:

挿絵(By みてみん)


 図3:

挿絵(By みてみん)


「兵士の数だけで見れば勘助さんの言う様に1:8でキツイけど…城兵側は3~4倍の防御力になる…ここは取り敢えず3倍で計算して…それに小笠原は寄せ集めって聞いたから7割って事で…戦力比で見ると1:1.8 になったね。 2倍も無い戦力差だから、チョットはガンバレそうだ。

で、援軍だけど…周りの騎馬は全部でどれ位?」


 駒井が中空を睨み、あれこれ思い出しつつ 暗算する。 さすが財務官僚、数字に強い!


「この辺りの馬場に居る馬全て集めれば…虎泰(甘利)殿が参百五拾、虎昌(飯富)殿が弐百、合わせて五百五拾が程!」

「ふむふむ…野戦になると、騎馬の戦力は掛ける3だね。 それに教来石さん(とこ)のビュンビュン丸は二乗…と」


 春日は回答数と計算結果を新たな紙に書き出した。 (図4)


 図4:

挿絵(By みてみん)


「ワーオ、戦力逆転したヨ! 武田3,186 VS 小笠原2,800。

この形が出来れば 優位を保てるから 勘助さんの初期案 支度が済み次第の逐次投入でも効果出るね(⌒∇⌒)」


 鷹羽はびっくりした顔を春日に向け、思わず拍手した。

 駒井と教来石も半ば口を開け、鷹羽に続き拍手し、賛辞の言葉を掛ける。


「なんとも鮮やかな。希望が持てそうな策じゃ。流石は勘助殿の一番弟子」


 勘助は…周りの同調圧力に屈し、渋々 拍手した。が、手放しで弟子を褒め称す(ほめそやす)ほど 甘くなく、鋭いツッコミも忘れない。


「…中々に良い思いつきじゃ…が、こっちの騎馬隊も寄せ集めじゃぞ。誰が指揮できる?」

「はーい、その為の武田学校でーす。 飯富さんちの源四郎君とか、原さんとこの甚四郎君とか、単科編成を一緒に試したから 問題無いでしょ。

騎馬のオジサンたちが言う事聴くかどうかは、僕は判んないけど」

「…うむ、居るのじゃ、若者(わかもの)にわざわざ(やから)を混ぜて 若輩者(じゃくはいもの)と呼び、従がわぬ年寄りが。

全くそこが問題じゃ」


 いきなり力説する勘助に向かい、駒井が冷静に言った。


「何を申しておる、そこは勘助殿の役目じゃ」

「お、おぅ そうじゃな…早速、書付(作戦指示書)を書くゆえ、御屋形様の花押と権威をいただき申そう。

頭の堅き者を従がわせるには権威が一番!」


 周りの言葉も耳に入らないほど、春日の援軍計画表をまじまじと見ていた教来石が、ボソッと喋りだした。


「この “ビュンビュン丸” は “飛丸” で御座ろう? 我が武川衆が三十基運ぶと書いて御座るが 無理じゃぞ…口惜しいが」


 それに対し、今度は鷹羽が即答した。


「あーそれだったら、大丈夫ですよ。 明野発案、設計に拠る 新型荷馬車が完成し、大量発注してますから…」

「新型荷馬車?」

「そうです! その名も “運べる君”!

板バネのリーフサスペンション、ロールベアリングの軸受け、独立懸架式 です!

悪路の高速移動でも荷台が跳ねませんし、車軸の抵抗が減り軽い力で動かせますし、独立懸架で小回りが利くの です!

そうそう、簡便なアウトリガも付けましたから、荷台の固定が出来ます。荷台に乗せたままで飛丸の砲撃が可能なの です!

どうです?凄いでしょ!!」


 鷹羽は一気にテンションが上がり、完全にジョブスプレゼンモードである。

 しかし、今回も鷹羽の説明は空回り、その熱量を受け止めてくれる者は居なかった。

 教来石は鷹羽の言葉の全てが理解できず、只々曖昧に頷くばかりであった。


「お、おぅ…」


 えー中の人です。

 教来石さんと同様に、鷹羽先生が何を言っているか判らないと言う読者の皆さまに、簡単に解説させていただきます。

 鷹羽先生が力説していた箇所は、主に荷車の足回りの部分ですね。

 まず、前提の知識として、この当時の荷馬車には、懸架(サスペンション)などと言う、クッションは付いていませんでした。

 なので、悪路のデコボコが直接荷台に伝わり、荷物は厳重に縛り付けておかないと、荷台から飛び出していきました。

 また、壊れやすい物はそろりそろりと 運ばなければ、粉々になります。

 つまり、荷造り、荷運び、荷下ろし 全てに手間が掛かり、なおかつ輸送中の振動を抑える為、低速移動が必須です。

 そんな荷車で火薬だの引火性の高いアルコール等を運ぶのは危なくてしょうがなかったのです。

 そこで城西衆の科学好き 明野秀哉君が鷹羽先生指導の下、作成したのが “運べる君” でした。

 サスペンションで荷台に伝わる道のデコボコが軽減され、軽い力で動く様になった為 手間が省け、移動時間も短くなる。

 つまり輸送力が爆上がりな訳です。

 物資輸送は地味ですが、現代でも軍の能力を維持する為に 非常に重要なピースです。

 最近の紛争でも軍用トラックのタイヤが粗悪品の為、輸送力が低下し戦線維持に困難を来した と言う話しも出ていた程ですから。

 また輸送力は経済力とも密接に関係してくるのですが、まぁ、そこら辺の重要性、ありがたさが判るのは もうしばらく時間が掛かるでしょうかね。

 以上 “運べる君” のスゴさ解説でした。


 教来石がビュンビュン丸の運送に一応の納得を示すと、今度は駒井が戦力算出に疑問を呈した。


「春日殿、飛丸の戦力が二乗されて居るが、二倍の間違いでは無いか?」


 さすが財務官僚、数字に細かい。

 騎馬隊の戦力が3倍になると言う想定にも、疑いの目を向けていた駒井である。

 飛丸の戦力は二乗だと言われても納得していないのだ。


「間違ってないよ。 これは “ランチェスターの第2法則” なんだ!」

「な…なんちゃらーの法則? 勘助殿、これも軍師の呪い(まじない)か?」

「知らん。我も初めて聞く文言じゃ。 これ、昌人、判る様に説明せい」

「OK! 飛ばすから皆 ついて来てね。

これはね、被害状況を算出する為の方程式なんだ」

「ほ?…方程式?」

「うん、 “ランチェスターの方程式” って言って、どっちの軍がどれ位生き残るか を計算する式なの」

「その様な事は、将の采配と時の運で随分と変わる物じゃ。 なんちゃらーの法則などは机上の空論じゃ」

「うーん…そうかもしれないけど、向こうの世界では生き残った理論だからね…一応聞いてって。

えーと大原則は “戦いは兵力が多い方が勝つ” って事」


 勘助と駒井は顔を見合わせ、春日の言葉を噛み締めた後、


「…当たり前じゃ!」

「…我らが どれほど(いくさ)をして来たか知らぬのか?」


 導入部分で早くもツッコミを喰らい、春日は少しむくれた。


「説明しろって言うから教えてあげようと思ったのに。 イヤなら止めるけど?」

「あ…すまなんだ。 黙るゆえ、続けてくれ…」

「…じゃ、進める。

二つの軍が 片方が全滅するまで戦った時 どんだけ生き残れるか を計算で出すんだ…

例題が判りやすいから 『い軍』が100人、『ろ軍』が60人 で戦った場合で説明するね。

当然 兵力が大きい 『い軍』が勝つんだけど、 生き残りは

 100 - 60 = 40 で40人が生き残る て計算。

これが “ランチェスター第1法則”」


 黙っている と言った、舌の根の乾かぬ内に 勘助が口を挟む。


「当たり前の様な、違っている(ちごうておる)様な…そもそも 劣勢の『ろ軍』と言えども60人も居れば、中には豪傑も居るだろう(おろう)し、『い軍』の中にはへなちょこも居ろう。

…計算通りにはならぬと思うぞ」

「それはぁ、一騎打ちの考え方なんだって。 一対一なら腕の勝負だろうけど、集団戦だと数の勝負なんだよ。

豪傑もへなちょこも居るだろうけど、平準されちゃうのが集団戦って考えなんだ。

…まぁ実際は『い軍』の生き残り40人が豪傑って呼ばれるんだろうけどね。

けど、豪傑が居たから勝ったんじゃなくて、兵力が多かったから勝ったんだ」

「ふうむ…その様に云われると、そうなるが」


 一応勘助が納得した様なので、春日が話を続けた。


「で、続きがあるんだけど、駒井さんが納得していない 二乗になるやつ。

あれは “ランチェスター第2法則” って言って、ビュンビュン丸みたいな、広範囲を攻撃できる武器を使った時の法則なの。

この手の兵器は一定の面を制圧する乱射の戦いになる。

なので当たるか当たらないかは 腕の差じゃなくて確率なんだよね。

だから兵力は二乗で計算するんだ。

これも例で言うと 『い軍』は100基のビュンビュン丸、『ろ軍』は60基のビュンビュン丸が川を挟んで撃ち合った状況を想像して。

『い軍』の兵力は100の二乗で10,000、『ろ軍』は60の二乗で3,600。

『い軍』がケタ違いに強くなったけど、生き残りは平方根で、

挿絵(By みてみん) で80基が生き残る。

判る?同じ数で戦っても、ビュンビュン丸なら倍の生存率。

言い方を変えると、槍と刀の接近戦なら60の損害が出るけど、遠隔攻撃で撃ち合うと、20で済む」


 春日の話しを聞いていた駒井は眉間に皺をよせ、飛丸の撃ち合いを懸命にイメージしている様だ…が、首をかしげた。


「あー!駒井さん まだ疑ってるー。でも、この法則は実証されているんだからこれでいいの!以上、説明終わり!」


 ミリタリネタになると饒舌な春日も、喋り疲れた様で一方的に解説を終了した。

 駒井も春日の説明に納得したのか、これ以上問い詰めても詮無(せんな)き事 と思ったのかは判らないが、上原城救出に頭を戻した様で、勘助に向かい直近の行動確認をし始めた。


「さて、軍師殿。即応軍の陣立ては出来ましたかな?」

「うむ、上原城救出の第一陣は 甘利信忠を大将とした騎馬隊五百五拾騎 とする。

副将は飯富源四郎および原甚四郎。

別途 教来石景政は 途中 武川で飛丸隊を編成し、騎馬隊に同道する事。

以上じゃ」


 勘助は書き終わった書付(作戦指示書)を持って立ち上がった。

 駒井と教来石は大きく頷き、それぞれの役目に向かうのであった。


 …すぐにでも上原を救いに行くつもりが、手間取ってしまった。

 …1話分まるまる、ミリオタ回になってしまった。

 信繫待って居れ、助けに行くぞ!

 あれ、高遠城を忘れていた…まだピンチだった。

 チャンスに変える策を考えるから、取り敢えず次回を待つのだ!


 第42話・ピンチをチャンスに新戦術 完

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