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第6話 ダンジョンコアと依頼完了

 「おはよう。ルーチェはどうした。」


 俺は、昨日打ち合わせをした部屋に入ると、既に部屋にいたトーマスとグレゴリオに挨拶をして、まだ姿の見えていないルーチェのことを尋ねた。


 「「おはようございます。」」


 二人は挨拶をすると、俺の問いにトーマスが答えてくれた。


 「ルーチェ様は、今鎧を着こんでいます。もうしばらくしたらお見えになるかと思います。」


 「そうか、では、待つとするか。」


 それから、10分程過ぎ、ルーチェが入って来た。その顔は疲れて、目の下に隈が出来ていた。


 「遅くなって済まない。待たせてしまったようだね。」


 「いや、お疲れのようだし構わないよ。それより、疲れているなら探索は午後からにするかい?」


 「このまま行きましょう。お偉い様2人と話を明け方までしてたので、ここで休んでも気が休まりそうもありません。面倒なことから早く解放されて眠りに就きたいですしね。

 それと、昨日の話し合いで、ラングラー侯爵からは、この地にダンジョンが出来るのは好ましくないし、放っておいて消滅する可能性もあるなら、攻略してダンジョンコアは潰して構わないと許可が下りました。

 もう一つ、ダンジョンコアの扱いについて、確認したのですが、私の想像以上に貴重なもののようですね。レオの提案は受け入れるが、ただし代わりにそれ相応の褒美を渡したいとのことです。」


 「俺は、Cランク冒険者にしてもらったことで十分なんだがな。貰えるというなら、貰うが、わざわざ余計な支出をしていいのか。」


 「いいも何も、貴重なものを一介の冒険者から、ただで貰うとかは、貴族として許されない行為ですよ。そんなことしたと他の貴族に知れたら、何と非難されるか。レオもあれが厄介事だと分かっているのだから、価値も分かっているのでしょう。」


 「まぁな。一介の冒険者が得ていい物じゃないさ。それでは、魔力溜まりをさっさと攻略するとするか。」


 「クローラーの数が多いようですが?討伐方法はどうするのですか。」


 「数は大体30匹程度、昨日の段階で31匹だな。方法は変わらずだが、一つの空間に31匹だ。樟煙玉を多めに投げ入れて、手早く倒すしか方法はないな。持ち物は、昨日の装備に、上に上がるための梯子を用意してくれ。あと確認だが、魔力溜まりには、他の騎士は随行しないのか。」


 「ああ、クローラー退治の一環です。私達だけで対処するのが筋でしょう。」


 「騎士団主体で攻略でも問題ないんだけどな。」


 「それは、騎士団の矜持が許さないよ。侯爵様も冒険者から手柄を奪ったと誹りを受け名誉を汚される。」


 「矜持とか、名誉とか、面倒だな。」


 「面倒ですが、貴族社会では、重要なことです。それに、今回の討伐は、レオと私、トーマスとグレゴリオ、人数的にも侯爵の手勢の方が多い。合同で討伐の恰好は十分立つでしょう。それに少数で手に入れたという武勇伝も付け加えたいというのもあるのですよ。」


 「少人数でダンジョンコアを確保したか。嘘じゃないが、釈然としないな。」


 「ところで、そのことで質問なのですが、小型のダンジョンもありますよね。」


 「勿論だが?」


 「そこを攻略してもダンジョンコアを得ることはできないのですか?ここほどじゃないでしょうが、小型なら攻略しやすそうですが?」


 「あー、ダンジョンを攻略しても、そう簡単にはダンジョンコアまで行けないそうだ。ダンジョンボスを倒しても、ダンジョンコアにはたどり着けないことがほとんどらしいぞ。」


 「ダンジョンとダンジョンコアは繋がってない?」


 「いや、特殊な結界や転移の罠などいろいろな仕掛けがあるから、辿り着くには難易度が跳ね上がるらしい。」


 「今回は、そんなのないのですよね。」


 「完全にダンジョン化してないから、そんな物作る魔力はないはずだ。だから平気だろう。多分な。」


 「え?、多分てなんですか。私は手に入れられると報告してしまっているんですよ。」


 「あー、それは悪いな。俺だって初めてのケースだ。探査魔法で見る限り剝き出しぽく感じられただけさ。」


 「いろいろ手探りは仕方ないですが、手に入らない可能性もあるなら、事前に言って欲しいですね。」


 「そんな可能性はほとんどないと思うが、万一を考えて口にしただけだ。

 それと、これからの事は、しっかり覚えておけ。学者連中に根掘り葉掘り聞かれるぞ。お前らは、貴族側の人間だ、俺と違って、暫くはダンジョンコアの近くにいることになるだろうし、研究のために拘束されても、金は貰えないだろうからな。」


 「あー、それで、侯爵様からあの命令があったのですか。」


 「色々頼まれてるようだな。侯爵様と騎士団長が覚えめでたいとは結構なことだ。」


 「それはそうですが。レオに言われるまで名誉なことだと喜んでた私が恥ずかしいですよ。」


 「あの、ルーチェ様、私達も今後何か頼まれているのでしょうか?」


 俺とルーチェの話を聞いていたトーマスが心配そうにルーチェに尋ねた。


 「安心して下さい。この後、私は暫くここを離れますが、お前たちはその間自由になります。リーンの町でスキルや魔法の習得でもしておいて下さい。」


 「はぁ、良かった。」


 「ああ、今回の報酬も結構な額になりそうだしな。」


 トーマスとグレゴリオはルーチェの言葉を聞き、そう素直に喜んでいた。ルーチェは、そんな2人を羨ましそうに見ながら、出発の命を下した。


 「では、準備をして、クローラーどもを蹴散らして、ダンジョンコアを回収しますよ。」




 幸い、昨日討伐した場所には、クローラーが新たに入り込んではいなかったため、順調に魔力溜まりとの接続部まで到達した。まぁ、昨日の樟煙玉の匂いがあるから、余程の事がなければ、入り込んでこないだろうけどな。


 「では、始めるとするか。」


 天井部の穴の周りにクローラーがいないことを探査魔法で確認すると、俺はそこに梯子をかけるよう指示を出し、気付かれないように慎重に穴の入口まで登り、樟煙玉に煙を発生させ、穴に5つほど投げ込んだ投げ込んだ。

 それから、暫くすると上で充満した煙が、俺達の所にも流れてきたが、クローラーが落ちてくるようなこともなく、20分程が過ぎた。


 「よし、さすがにもういいだろう。行くぞ。」


 俺は、そう声を掛け、探査魔法で再度、穴の周囲にクローラーが居ないことを確認して、梯子で魔力溜まりの空間まで登って行った。

 それからは、身体強化のスキルを発動させ、流れ作業のように31匹のクローラーを20分かからず仕留めて行った。


 「よし、後はダンジョンコアか。」


 俺は、宙に浮かぶ黄色い八面体の結晶のようなものを見つめ、そう呟いた。


 「あれをどうするのです?」


 「あれの下に布を敷き、叩き割る。」


 「そのまま持って帰るわけではないのですね。」


 「どうもそのままだと魔力がある限り、魔物を生み出し続けるらしい。だから、叩き壊す必要があるそうだ。」


 「壊せるのですよね。」


 「たぶんな。聞いた話ではさほど固い物でないらしいが。」


 俺は、そう言って、布を取り出し、下に広げようと近づくと、大きな魔力反応が俺とダンジョンコアの間に現れた。


 「みんな、気を付けろ!何か現れるぞ。」


 魔力反応に気付き、そう叫び、ルーチェ達に注意を促すと俺も、布を捨て去り、腰に差していた剣を構えて距離を取った。やがて、それは実体化して、黄土色の爛れたような皮膚をした全長8m位の巨大なミミズのようなものが、こちらに大きな口を向けて現れた。どうやら、残りの魔力を使ってダンジョンボスを呼び出したようだ。

 

 「なんです?あの大きな魔物は!!」


 ルーチェがその姿に大きな声を上げた。


 「どうやら、ワーム系の魔物だと思うが、種類はわからん。」


 「対処できますか?」


 「ああ、まだスキルが切れるまで時間があるし、やってみる。それで無理そうなら、一旦引くぞ。」


 俺は、ワームの巨体めがけて剣を振るうが、慣れない相手の大きさと柔らかく素早い動きに対応できず、相手の体を鞭のようにくねらせて、跳ねるように動いて、剣がまともに通らないように体を大きく左右に動かす動きに翻弄された。

 そして、俺が足を止めた隙を突いて、口を開いて俺に向かってくる。

 ただ、元々ワームは柔らかな土壌や砂地に生息しているため、向こうも硬い岩盤の上で本来の動きができずにいるため、こちらも対処が出来ていた。

 確かこの辺りの鉱石は、トパーズの他、水晶や鉄重石も結構あったな。なら、結構魔力を使うが、この辺一帯の重石を集めて、成形、突き刺され。


 「アースニードル」


 ワームに向けて、銀灰色の直径5cmくらいの針のような物が首元の左右の地面から2m位の長さで、飛び出した。一本は首元を貫いたが、もう一本は柔らかい皮にはじかれるようにもう一本と交差しただけだった。

 だが、それで十分。ワームは左右の針を取り除こうと暴れるが、折ることは敵わず、首元の傷をかえって広げ、左右からの巨大な針によって、口の動きを封じることに成功した。

 俺は、体の動きに注意しながら、一気に近づき、口元を叩き切った。

 ワームのその体の大きさから、口を切断するには至らなかったものの、十分な致命傷となったようだ。口はだらしなく開いて動かないでいるが、体はまだ無造作に暴れまわっていた。

 体の方はまだ動きが止まるのに時間が掛かりそうと判断した俺は、布を拾いなおし、ワームを大きく迂回するようにダンジョンコアに向かうと、布を地面に広げ、剣に『浄化』の魔法をかけ、綺麗にして、一挙にダンジョンコアに向けて剣で切りつけた。

 思いっきり切りつけたのも関わらず、剣には、軽くぶつかるような感覚だけを残し、綺麗に上1/4と下3/4に綺麗に割れるような切り口を残し、ダンジョンコアはその機能を停止させた。


 「お見事ですね。レオ。結局私の出番はなかったようですね。」


 ルーチェがそう俺に声を掛け、俺に近づいて来る頃には、ワームの動きもほぼなくなり、横たわっていた。


 「ああ、ダンジョンコアも無事回収できたしな。」


 俺が、剣とダンジョンコアを交互に見比べ、手に残った感覚を再度味わう様に、剣を鞘に戻しながら、そう言うとルーチェは、興味深げにダンジョンコアに近づき眺め見ながら、こう言ってきた。


 「これも見事な切り口です。これ下手に触っちゃだめですよね?」


 「この切り口は偶然だ。剣を当てた角度が良かったのだろう。触っていいかと問われれば、触らない方がいいだろうと答えておこう。俺も初めてだ、どうしていいかもわからない。」


 そう言って、俺は興味深げに見ているルーチェを尻目に、ダンジョンコアを布に包むのだった。


 「それもそうです。それとあのワームの魔石の位置ってわかりますか?」


 「多分、ワームなら、あの針の突き刺さっている節の2、3個下辺りだと思うが。」


 「では、トーマス達がクローラーの頭と魔石を取る間に、あいつの魔石を取り出すとしましょうか。あれには酸とか毒とかはないですよね。」


 「ワームにはないはずだ。ただ、魔石以外に有用な部位があるかは、種類も分からないのでわからない。」


 「分からなければ仕方ないでしょう。さっさと抜き取りましよう。」


 流石、大型の魔物だけあって、魔石だけでも30cm程の大きさの物が取れた。因に、クローラーの魔石で5cm程だ。これもかなりの収入になるだろう。

 魔石の抜き取りが終わると、ルーチェは魔法で作った針状の金属に興味を持った。


 「これ、アースニードルと唱えていましたが、岩でなく、鉄の針ですか?」


 「いや、重石。タングステンと呼ばれる金属だ。持ってみるか?すごく重いぞ。」


 俺は、そう言って新たにアースニードルで小さな針を地面に生成すると、引き抜いて、ルーチェに渡した。俺は身体強化を使った状態だったので、そんな思い物を持っているようには見えなかったみたいだが、ルーチェが持つと素の状態だったため、受け取った体が前に沈みそうになった。


 「見た目と違って確かに重いです。重すぎて武器を作るには適さなそうです。」


 「ああ、金と同じくらいの重さがあるらしいからな、それと熱に強く簡単に溶かせないらしい。その為、ドワーフ達は、ミスリルやオリハルコンを鍛造するのに、こいつで炉を作ると聞いたことがある。あと、鉄等と混ざっている自然界の状態だと脆いが、タングステンだけにするとある程度丈夫になるので、ワームが暴れても動きを止められた訳だ。」


 「レオは、冒険の知識だけでなく、本当に色々知っていますね。」


 「そりゃ、知識も立派な武器になるからな。色々覚えていて損はないさ。」 


 こうして、翌日もクローラーの残党を退治し、都合、3日で、ケイプクローラー65体、ワーム1体の魔石を得ることが出来、無事依頼を終えた。そしてこちらに都合5日滞在して行きと同じメンバーで馬車に乗り込み、リーンの町に戻った。

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