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第5話 討伐開始

 午後、いよいよ攻略となった。探索魔法で、クローラーの反応を確かめ、反応を確認すると樟煙玉を水に浸す。

 すると、水に反応して、煙のようなものが立ち込める。少し甘い香りのする煙で人が吸い込んでも無害だが、一部の虫や虫型の魔物が吸い込むと、動けなくなったり、動きが鈍くなる。

 この樟煙玉を投げつけて、暫くすると、壁や天井に隠れていたクローラーは、だらりと穴から垂れ下がるように出てくる。

 俺は、身体強化のスキルを発動させて、スピードを上げて近づく。クローラーは、俺を追って攻撃しようとするが、動きが鈍重になって、俺の動きについて行けずに仕留められて行く。

 地面に隠れているクローラーは、頭の蓋の部分の口に見える箇所に剣を突き立てて仕留める。

 トーマスとグレゴリオは、俺が、次の獲物に、樟煙玉を投げ込んで弱らせている間に、仕留めたクローラーを鉤棒でひっくり返して、足の間にナイフを突き入れ魔石を抜き、慎重に頭の付け根部分を剥がしたりしていた。

 地面に隠れていたクローラーは、頭の部分が使えないので魔石を抜くだけだが、2人がかりで頭の蓋部分に鉤棒を引っかけて、体を穴から引きずり出さないといけないので、重労働で大変な作業なため、頭の剥ぎ取りを行うのと同じくらいの時間が掛かっていた。

 

 「もうすぐ身体強化が切れるので、この一帯のを倒して、今日の討伐は次で終了だ。ただ、この先にやはり、面倒な反応があるので、その対処を明日はすることになる。」


 「こんな楽に仕留められるとは、思わなかったですよ。」


 「これなら、次回があれば、騎士団だけで仕留められるだろ。」


 「いいのですか?この方法を我々も使ってしまって?」


 「良いも何も、この方法は30年前に母親が公開した方法だ。まぁ、こいつらの数が減って討伐方法は失伝してたみたいだがな。」


 「そうでしたか。今度はしっかり討伐方法を残すようにしましょう。それと面倒な反応とは何です?」


 「そちらの説明は、今日の討伐が終わってからだ。身体強化が切れる前に終わらせたいのでな。」


 「そうですね。了解しました。」


 今日は樟煙玉を投げ入れ、弱ったところに止めを打ち込むということを4回繰り返し、討伐は終わった。今日だけで、討伐数18体、魔石18個、頭の蓋13個という、かなりの成果となった。

 俺は、グレゴリオから魔石を1つ受け取り、重さを確認した。80cmほどの魔物にしては、魔石は大きな物だった。


 「ギルドの買取価格で1,300から1,500シリングと言ったところか。ギルドの売値はわからないが、金貨3枚程度かな。」


 「じゃぁ、俺達は銀貨3枚か。半日作業でこれだけ貰えれば言うことなしだな。」


 「まったく、いい小遣い稼ぎだ。」


 トーマスとグレゴリオは、俺の言葉を聞いて、喜んでいたが、ルーチェは、トーマスから俺と同じように受け取った魔石を眺めながら、こう言って来た。


 「流石にギルドがそんな行儀いい商売はしてないでしょう。買値がそれなら、もう少し貰えると思いますよ。」


 「それでも金貨4枚がいいところだろ?」


 「まぁ、金貨3枚と銀貨5枚と言ったところですね。ところで、さっき言ってた面倒な反応とやらが気になりますが?」


 「この中で、探査魔法を使える者はいるか?」


 「私が使えます。」


 そう、トーマスが名乗り出た。


 「では、使ってみてくれ。」


 「はい。」


 トーマスは、そう答えると、目を瞑り、精神を研ぎ澄ましているようだ。そして、探査魔法で感じ取ったことを報告した。


 「こ、これは。この先の坑道だけでなく、上部にクローラーの反応が多数と大きな魔力反応があります。」


 「それが面倒事だ。魔力溜まりになっていて、そこでクローラーが作り出されていた。それが今回の騒動の原因だろう。」


 「待って下さい。魔力溜まりなら、そこから普通魔物は出てこないのではないですか?」


 俺の説明に、ルーチェは驚いてそう質問してきた。


 「普通ならな。今回は密閉された魔力溜まりの下に坑道があり、恐らくクローラーが穴を掘った際に、魔力溜まりと坑道を繋げてしまったため、魔力がそこから溢れて行き来が出来るようになってしまったのだろう。」


 そう、普通なら魔力が薄くなることを魔物は嫌うため、他の強力な魔物に追い出された魔物や、魔力をあまり必要としない低級の魔物以外は、魔力溜まりから出ることはないが、今回は特殊条件が重なった結果が原因だろうと、そう推測した。


 「密閉された空間だったから、空いた穴から過剰な魔力が溢れたと言うことです?」


 「俺も一介の冒険者だ。専門的ことはわからないから推測になるが、今回不運なことに魔力溜まりより下に坑道があったため、魔力も坑道に流れ、魔力のある領域が広がったことにより、ケイプクローラーが坑道に来るようになったのだろう。そして、魔力溜まりが、広がったことによって、疑似的にダンジョンが作られ、ダンジョンコアが作られようとしているのだと思う。それが、あの大きな魔力反応だ。」


 「ダンジョンコアですか?」


 「ダンジョンを作るための魔力の塊?のような物だとか。それを壊せば、魔物の発生は終わるらしい。」


 「それがあるとここにダンジョンができるのですか?」


 「わからない。一時的に魔力濃度が濃い空間が広がりできたものだと思うので、このままダンジョンになるのか、魔力濃度が下がって消滅してしまうのか。」


 「色々答えてくれてますが、冒険者は皆、ダンジョンに詳しいのでしょうか。」


 「まさか。母親がクローラー系にも樟煙玉が効くのを確かめたりしてたように、色々調べるのが好きで、そういう話を俺も子供の頃寝物語で嫌と言うほど聞かされたのでね。」


 「ははは、それほど知識を持っていたなら、冒険者でなく、学者にでもなればよかったですね。」


 「そうだな。そうすれば、冒険に出て戻ってこないという事もなかったかもしれないな。いや、学者として実地に行って同じことになってたか。」


 「そうか。お母様はもう…。すまないことを言いました。」


 「両親が冒険に出て、戻ってこなくなったのは、もう3年間前のことだ。いまさら気にしてないさ。で、話を戻すがあのダンジョンコアがあると暫くは、クローラーが湧く可能性があるから、潰してしまって構わないよな。」


 「ちょっと待ってください。ダンジョンになるかもしれない物を勝手に潰す訳には、行きません。一度領主様と相談させて下さい。」


 「それは仕方ないが、時間はかかるのか?」


 「いえ、緊急用に団長が、侯爵様と話せる魔道具を所持しているので、遅くても明日の夜には結論が出せると思います。」


 「わかった。なら、明日はこのまま奥の通路のクローラーを潰そう。もし、明日の午前中までに結論が出た場合は、先にダンジョンコアを潰しに行こう。それと魔石以外の取り扱いについても、領主に確認を取っておいてくれ。」


 「はぁ、そっちもありましたね。わかりました。そのこともどうするか確認しておきます。はぁ。」


 ルーチェは、色々厄介ごとが自身に降りかかっているのに不条理を感じているのか、そう話の始めと終わりに2回ため息をついていた。

 俺に言わせれば、俺を討伐に推薦するなど自分から動いた結果だから、自業自得、同情には値しないとしか思わないのだが、それを本人に言うのは酷だと思い、この場から離れることを提案した。


 「では、今日はここまでにして戻ろうか。」


 「そうしよう。では、引き上げるます。レオが先頭で、トーマスとグレゴリオは、荷物が多いのでその後ろ、私が殿を務めます。」


 ルーチェも切り替えて、そう短く指示を出すと俺達は、出口へと足を進めた。


 その後何事もなく、戻ることができ、俺はその後、夕食を騎士達と食べて飲み、用意された寝床でぐっすりと就寝した。

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