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第3話 騎士からの依頼

 それから、いくつかの依頼を達成したある日のこと、冒険者ギルドに出向くと、入口に騎士の出で立ちをしたルーチェが立っていた。

 あんなとこに、騎士が立ってたら目立つぞ。俺は、そう思いながらも、彼に挨拶だけして、中に入ろうとする。


 「ちょっと、待って、レオに会いたくて、待っていたんですよ。」


 ルーチェは、通り過ぎようとした俺を慌てて止めた。


 「俺に?」


 俺としては、特に思い当たることもないので、そう呟いた。


 「ああ、でも、ちょっとここじゃ、話辛いので場所を変えましょう。」


 ルーチェは、そう提案して、ついてくるよう仕草をした。

 俺も、さすがに騎士様とギルドの入口で立ち話をする度胸はないので、黙って付いて行くことにした。



 商人や下級の役人が使うような食堂、朝の鐘がなって、まだ一刻も経っていない時刻、一応営業はしているようだが、閑散としている。


 「ここは、夜勤明けの兵士が食事をしたりするので、昼過ぎから夕刻以外は営業しているんだ。朝もやってる飯屋は少ない便利だろ。」


 ルーチェはそう言って、店主に目で挨拶だけすると奥の角にあるテーブル席についた。


 「レオ、食事は食べられますか?」


 俺は、狩を行う時は食事を摂らないようにしているが、今日は狩もつぶれそうだし、問題なく食べられるので、頷いた。


 「店主、麦粥定食2つ。」


 そう声を上げると、すぐに麦粥とソーセージと豆の煮物が二人前運ばれてきた。店主は、不愛想にそれをテーブルの上に置くと、すぐ奥に引っ込んでしまった。どうやら、この手の用向きに慣れてる店らしい。

 

 「大したもてなしもできないが、さぁ食べて下さい。」


 そう言って、ルーチェは黙々と食べ始めた。俺も、それに倣い、麦粥に手を付けた。匙で掬ってみると、水分の少ないプディング系の粥だ。麦粥に肉や野菜も入っているのか、肉のうまみに野菜の香味が食欲を刺激する。それに塩もしっかり効いている。うまい。

 お互い、食べ終わり、一段落すると、ルーチェが、本題に入るべく切り出してきた。


 「いい店でしょう。さて、今日はレオに頼みがあって、誘わせて貰いました。」


 「それは、知人としての頼みか?それとも騎士としての頼みか?」


 「知人ですか、友人くらいのつもりでいたのですが、まぁ、いいでしょう。今日は、騎士として頼みに来ました。」


 「あの場だけの付き合いだったし、知人が妥当だろ。騎士としての頼みならギルドを通して頼んでくれ。」


 「手厳しいですね。勿論、レオが受けてくれるなら、最終的にはギルドへ依頼をさせて貰いますよ。」


 「最終的?気になる物言いだが、まずは話を聞こうか。」


 「仕事を断るにしても、これからのことは、暫く他言無用にしてくださいい。」


 「勿論、仕事のことはむやみに話したりはしないさ。」


 「それは助かります。知ってるかもしれないですが、この街から、東門を出て、一日ほど歩いたところに、べスという村があります。」


 「騎士団の訓練用の駐屯地がある村だったか?」


 「あまり公にはしてないのですが、それを知っていますか。まぁ、表向きはそうなっています。」


 「表向き?」


 「実は、あそこには、宝石鉱山がありまして、と言っても、トパーズやガーネット、アクアマリンと言った宝石としては、価値の低い宝石と鉄と錫等がわずかに算出するだけなので、王国管理ではなく、ここの領主の管理下になっているのです。」


 「それを俺に話すと言うことは、依頼に絡む話なんだよな。」


 「当然ですよ。騎士団は、訓練の名目でその村で護衛についているのですが、鉱山の坑道に最近、ケイプクローラーという魔物が出現しましてね。狭い坑道の中にいる魔物相手だと正直、対人相手ならともかく、騎士団では荷が重すぎて、結構な損害が出てしまったのです。ケイプクローラー自体は、確かにこの辺は生息域でしたが、ここ20年ばかり、討伐記録もなくてな戦い方も分からないこともあり、苦戦してしまいましてね。このままでは鉱山の稼働がいつになるか分からないので困っているのですよ。」


 「狭い坑道でケイプクローラー相手か、騎士でなくても苦戦しそうだな。」 


 俺は、ケイプクローラーの特徴を思い浮かべた。大きさは80cm程度だが、ピットに隠れての奇襲や岩を溶かせる酸による攻撃があるうえ、頭部には穴にいる時に蓋の役目をする硬い大きな頭があること思い出し、そう口にした。

 長らく討伐記録がないのは、確か、30年ほど前に俺の母親が討伐方法を確立して乱獲されたと親父に話を聞いたが、その影響か?

 その討伐方法も相手がいなくなって廃れたのか?


 「そこで、冒険者に依頼を出したいのですが、鉱山の場所秘密が漏れないようにしたいのですが、この街の高ランク冒険者は、大抵どこぞの貴族様の手つきになってて、依頼が出せないのです。そこで、手垢がついてなく、集団相手で実績のあるレオに、声を掛け訳です。どうでしょう?引き受けては貰えませんでしょうか。」


 「集団相手と言ってもゴブリンだぞ。まぁ、引き受けてやりたいが、残念だが、俺は、Eランク冒険者だ。ケイプクローラー相手だと最低でもCランク、適性ランクはBランクの獲物だ。俺が依頼を受けることはできない。」


 「そこでです。子爵以上の貴族の推薦状があれば、ギルド長が承認すればCランクになれますよね。そして、ここに領主ラングラー侯爵の推薦状がここにあります。どうでしょうか。」


 「随分手廻しがいいんだな。そこまで準備しているんだ。ルーチェにしても手ぶらで帰るわけにはいかないんだろ。」


 「どうでしょう。その辺は気にしないでください。自分の命と天秤にかけて引き受けるか決めて欲しいです。」


 「手早くCランクになれるというのは魅力だな。あとは、依頼料がいくらかも教えてもらえるか?」


 「勿論お伝えします。依頼報酬は、12万シリング、金貨12枚と、討伐した魔物の魔石は、ギルドの販売価格で領主様が買い取らせて貰います。破格でしょう?」


 確かに魅力的だ。依頼料は、金額的に手数料を考えて適正な依頼料がそのまま懐に入るように上乗せをしてくれているのだろう。

 魔石の買取もギルドへの買値でなく、ギルドの売値しかも領主との取引なため、手数料が掛からない。

 そして危険度についても、母親考えた対策も知っている。

 よし、討伐をするにしても問題ないだろう。


 「よし、受けさせてもらう。」


 「では、早速冒険者ギルドでの手続きを済ましてしまいましょう。」


 ルーチェは、そう言うとテーブルにお金を置き、席を立つと、また来た道を戻って、冒険者ギルトへと向かった。俺もそれに黙って付いて行った。




 冒険者ギルドに着くと、朝の喧騒はすでに一段落しており、受付も粗方事後作業のため、カウンターを離れていた。

 運悪くと言おうか冒険者上がりなため、裏方実務の苦手なキャスパーは、事務仕事をしたくないのかカウンターに残っていた。


 「騎士様に連れられて、何か問題でも起こしたか?レオ。」


 俺とルーチェを見つけ、そのままカウンターに近づいて来たのを見て、キャスパーはそう軽口を叩いた。


 「ああ、すまないが、ギルド長に話がある。取り次いでもらえないでしょうか。」


 キャスパーの軽口を無視するかのようにルーチェは、話をして所属を示す短剣を差し出した。差し出された短剣は、リーンの町の出入り口の城門、街中の広場の石像の台座等に刻まれた、見慣れたここの領主の紋章であった。

 それを見た、キャスパーは、すぐ態度を改め、一礼をすると一言残し、すぐに奥に下がっていった。


 「すぐに、お取次ぎいたします。少々お待ちください。」


 「あいつは、知り合いなんだ。あまり脅すようなことはするな。」


 慌てて下がっていくキャスパーを見送り、姿が見えなくなってから、俺は、ルーチェをそう咎めた。


 「すいませんね。つい、揶揄いたくなってしまいました。」


 ルーチェは、ニヤリと笑いながら、短剣を懐に納めながら、謝って来た。


 「俺でなく、キャスパーに謝っておけ。」


 俺は、ルーチェに謝る相手が違うと言ったが、キャスパーが見えなくなってから、俺が咎めたのを知っているため、肩をすくめ苦笑いをするだけだった。


 そんな話をしていると、別の職員が現れ、ギルド長の所に案内をしてくれた。騎士が面会を求めてると聞いたギルド長が、細かな内容を呼んでくる間に聞くためだろう。キャスパーは、何も聞かずに下がったが、俺が問題を起こしたとでも報告するのだろうか?まぁ、用件を聞かずに下がったキャスパーが悪いのだが。

 俺達が、ギルド長の部屋の前に差し掛かると、丁度キャスパーが出て来た。キャスパーは心配そうにこちらを見ていたが、俺達は、その横を神妙な顔つきで通り過ぎた。

 案内の職員が、ギルド長の部屋のドアを叩き、俺たちを連れてきたことを告げると、中から入室を許可する声が聞こえた。

 ギルド長は、事務机から立ち上がり、自己紹介をしてくれた。


 「私は、このリーンの冒険者ギルドの長を任されている。ジャン・コクランだ。」


 「私は、ルーチェ・フィガスです。べスの村に駐留しているラングラー侯爵の私設騎士団の所属です。本日は、急な要件に対応いただき礼を述べさせていただきます。」


 「俺は、Eランク冒険者のレオだ。」


 「まぁ、座ってくれ。フィガス卿。それとレオも。」


 コクランギルド長は、そう言って、俺達をソファーに案内した。

 そこで、俺達は、コクランと向かい合う様に座ると、案内してきた職員が、ハーブ茶を出して、退出していった。ギルド長の部屋に設えてあるソファーだけあって、座り心地は実に良い、自然と背もたれに倒れこむ形で、お偉いさんに会っているという緊張も解れるほどだ。


 「で、用向きはどのようなことでしょうか。すいませんが、取次が用件を伺わなかったようでして。」


 職員が退出したのを見届けて、コクランがそう聞いてきた。


 「そこは、取り次いだ者を叱らないでもらいたい。こちらも急いでたゆえ、高圧的になりすぎたようです。それで用件と言うのは、この推薦状になります。」


 そう言って、ルーチェは、食堂で俺にも見せた紹介状を、差し出した。


 「推薦状?失礼する。」


 コクランは、それを受け取り、蝋封をナイフで切ると推薦状に目を通した。そして、外に控えている職員に、俺のギルドでの実績票を持ってくるように伝えた。

 職員が、暫くして、帳簿を一冊持ってくると、それに目を通した。


 「中々の働きぶりのようだ。討伐依頼の成果が少し少ないが、採集依頼で結構な魔物に襲われ、返り討ちにしてるようだし、ゴブリンコロニーを一人で潰しているし、実績は、まぁ、認めても問題はないか。」


 「ランク上げを承認していただけますか。」


 「レオ、身体強化系のスキルか魔法を習得はしているか?」


 「はい、先日スキルを習得している。」


 「そうか、なら承認しよう。今日から、レオ、お前はCランク冒険者だ。で、フィガス卿、レオをランク上げしてどうするのです?」


 「それは、この依頼を、冒険者ギルドに発注したいのですよ。」


 「ほう、依頼票までお持ちですか、準備がよろしいようですね。」


 そう言って、コクランは、依頼票を受け取り、ルーチェと依頼について打ち合わせを始めた。いくつか、内容確認のためのやり取りをして、それが終わると、コクランは、依頼料を受け取り、金貨の枚数を数えながら、俺に問いかけて来た。


 「と言うことだが、これは、指名依頼ではないが、偶々依頼人と一緒にいたお前、ランク的に少し厳しい気もするが、この依頼、受ける気はあるか?あればこの場で受理してやる。」


 「ああ、受けさせてもらう。」


 「そうか。なら、終わったら、また二人で報告に来てくれ、楽しみに待っているぞ。すまないが、Cランクへの識別票の更新はその時させてもらう。」

 

 そう言って、受諾者欄に俺の名前、受付欄にギルド長の名前を記入し、受理された。

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