第12話 戦闘(前編)
一方、盗賊たちは、待ち伏せしている地点で、総勢32名が、馬車が近づいてくるのを待ち構えていた。
こちっは、総勢32名、うち弓使い5名 魔法使い3名、身体強化持ち6名が居るんだ。いくら護衛が優秀でも負けるはずがねぇ。
だいたい貰った情報だと、護衛はたかがCランク冒険者3名だったはず。本来なら最初の連中でも、半壊状態にできるはずだったんだ。たかが3名の冒険者を殺して、荷物を奪うだけの計画が、なぜ、こんな事態になった。
そんな弱気な思考になっている自分に、盗賊のリーダーは気づき、自嘲していると、ひときわ高くなっている崖の上で様子を伺っていた斥候から報告が入った。
「お頭、馬車がこっちに近づいてきました。およそ10分程でこちらの弓の射程に入ります。」
「よし、総員持ち場に着け、魔法使いのオルベドは次の俺の合図で、探査魔法をかけて、俺に報告しろ。弓使いは、馬車が射程に入ったら、遠慮なく弓を打ち込め。」
リーダーの指示を受け、慌ただしくそれぞれが所定の位置で、襲撃の準備を整える。
騒がしかった盗賊たちも、準備が整うと、それぞれ息を殺して、敵の出現に備え始めた。
「そろそろ、5分経つか。オルベルト、探査魔法を使って、敵の様子を報告しろ。」
リーダーがそう指示を出すが、反応がない。
「おい、お前、魔法使いどもの様子を見てこい。」
様子がおかしいと感じたリーダーは、近くにいた男にそう指示を出した。
「へい。」
男は、短く返事をすると、魔法使いが隠れている方向に向かった。
「お頭、馬車の御者台に人が乗っていやせんぜ。それに護衛の連中も居ねぇ。」
弓を放つため、様子を伺っていた弓使いが楯板から顔を出して、こっちに向かってそう叫んできた。
なに?馬車は囮か。
すると、連中はどこにいる?
そう考えていると、顔を出してこっちを見て居た弓使いが、魔法を撃ちこまれ、バランスを崩して、木から落ちて行った。
もう、連中こっちに来ているのか。
「おい、敵はもう既に、ここにいるぞ!気を付けろ!気配探知を使える奴は使って、警戒しろ!」
リーダーは、そう叫んで周りの連中に警戒を促した。
「大変です。お頭。」
「今度は何だ?」
「魔法使いが全員、殺されてやす。」
「くっそ!残ってる奴は、何人かにまとまって行動しろ。敵を見つけたら大声を出せ!」
時は少し遡る。
「探査魔法に、右前方の森の中20メートルほど先に人間の反応が一つあるよ。」
奇襲の準備のため、周囲の反応を調べていたジェイミーがそう言ってきた。
「よし、休憩を解いて馬車を進める振りをして、そいつを潰して奇襲をかけるぞ。」
「では、私とジェイミーは今まで通りの馬車の前と御者台に陣取るから、レオ気付かれないように回り込んで仕留めてくれるか?」
「わかった。」
俺は、そう答えると、馬車の後方に陣取る動きをして、森の中に姿を消すと、探査魔法を唱え、敵の正確な位置を確認し、身体強化魔法で一挙に距離を詰め、背後から首に剣を切りつけ、声を発する間もなく仕留めた。
男は、街から様子を伺っていた男のようで、一見町人風の風貌をした男だった。
まずは、見張りの口を封じられたので、今度は馬車に戻り、荷物をマジックバックに仕舞い込み、それをレニーさんに預けて、ここに身をひそめるように指示をして、2時間たっても戻ってこなければ街に戻るように伝えた。
そして、馬車馬に鞭を入れ、空馬車のまま進むよう指示を出して、俺達は左右に別れ、森の中に消えて行った。
まず、目指すは飛び道具持ち、と言うことで恐らく後方に控えているだろうということで、森の奥の方から、道沿いに敵を探しつつ、進んで行く。
足を速めつつ、慎重に進んでいくと、前方から話し声が聞こえた。
気付かれないよう、慎重に、速度は落とさないように近づく。
魔力自体はあまりない魔法使いなのだろう。森の中で扱いにくい魔力発動体の付いたロングスタッフ持った男が3人いた。
周囲に警戒することなく3人で談笑している。
さて、どうやって仕留めるか。スタンクラウドは、魔法使い相手だとレジストされる可能性があるからダメだ。剣で近づくのも、周りの木々で上手く振るえないか。なら、投擲用のナイフを両手に構え、3人の背後を取るように近づく、3人は半円状になって話しているために完全な死角はない。それでも瞬殺するべく一番左に立っている男と真ん中の男の間に見つからないよう近づけるだけ近づき、その後身体強化スキルで飛び込むように距離を詰め、背後に現れたと同時に左の男に左手で肩を回すようにして、ナイフを左の鎖骨辺りに剣を突き立てる。
右の利き手のナイフは、中央の男の首筋を切り裂き、そのまま正面に正対した右に立っていた男の首元にナイフを投げて、絶命させた。
「ふぅ。」
ひとまずは、うまくいったか。
俺は、回りに気配を配ったが、特に気取られた反応もなかったため、ひとまず安心して、息を整えると更に進行方向に進むよう森を迂回して、敵の背後から襲う様に動きを取った。
暫く進むと、今居た森の奥から、「お頭、馬車がこっちに近づいてきました。およそ10分程でこちらの弓の射程に入ります。」と声が聞こえた。どこか高台に1名いるのか。
だが、森の中が幸いして、馬車は、帆の部分しか見えないのか、無人であることも、護衛が居ないことも報告がなかった。
あれは、仕留めに行く暇が今はないか、後回しだな。
敵のリーダーの指示が聞こえる。トップを潰したいが、まずは数減らしを優先するとするか。リーダーをすぐ仕留められなかった場合、囲まれる危険もあるので、確実に周りから潰していくことを選択した。
幸い、リーダーの指示にいるため、敵の位置は手に取るように把握できたのと、敵が馬車が来る方向に集中していたため、敵に気付かれることなく、更に5人の始末に成功した。
「そろそろ、5分経つか。オルベルト、探査魔法を使って、敵の様子を報告しろ。」
敵の魔法使いへの指示が聞こえたため、それに合わせて探査魔法を唱える。カミーラ達の方にいる魔法使いへの指示の可能性もあるが、リーダーがこっちに居るのだ、こちらの魔法使いへの支持の可能性が高いだろうと、他に魔法使いが居てもこちらの存在が感づかれないタイミングで、気配を気取られないように絞った探査魔法を唱え、敵の位置と残りの人数を確認することとした。
こちら側が7名、向こう側が5名、道の正面に5名、これは、弓使いか。まずは弓使いをやるか。
そう考えると、弓使いに近づき、木登りに手頃な気を見つけ登り、弓使いのいる辺りを伺った。
「お頭、馬車の御者台に人が乗っていやせんぜ。それに護衛の連中も居ねぇ。」
弓使いの一人が、馬車を捉えたのだろう。そう報告する声が聞こえた。
その瞬間に、そこに魔法が放たれて、報告をした弓使いが落ちていくのが見えた。ジェイミーか、やるな。
それを見た他の弓使いは、弓を構えながら、楯板に隠れるようにして覗き込み、下を伺っていた。
「おい、敵はもう既に、ここにいるぞ!気を付けろ!気配探知を使える奴は使って、警戒しろ!」
弓使いの報告を聞き、そしてすぐ弓使いが撃ち落されたのを見た、リーダーの指示が飛ぶ。
気配探知が使われちゃ、ここに居るのは危険か。俺は、そう判断し、弓使いが居る辺りにスタンクラウドを打ち込んで、木から飛び降りると、探査魔法で近くの反応があった場所に次々切り込んでいった。
弓使いは、楯板に隠れつつ身を乗り出して、下を覗き込むように弓を構えて居たため、魔法をレジスト出来ずに気絶した2人が木から落ちてきた。後の2名は、レジストしたか、気絶して木の上に倒れているかは確認できないので、レジストさえたと考えて、まだ街道に出ると弓の援護があると頭に入れておく。
俺は、近くにいた2名を手早く始末し、3人目に取り掛かろうとした、そいつには、ナイフの一撃を寸前の所で短槍で受け止められた。どうやら、気配探知と身体強化の持ち主だったらしい。
「ディルクだ。俺のとこに1人いたぞ。」
「よし、すぐ向かう待ってろ。」
まずいな。俺は、賊の会話を聞き、焦りを覚えつつも、打開策を探った。
正面のディルクと名乗った男、技量は中々の物だ。木々の多い所で短槍を自在に操り、こちらの手数の多い攻撃を防ぎつつ、短いながらも槍の射程を生かして、距離を取って仕掛けてくる。
敵がこちらに向かってくる方向に背を向けないようにして、囲まれるのを防ぎつつ、ディルクとの攻防を繰り広げる。
ディルクの背後に敵が駆け付けたのを確認すると、俺は、ディルクとその敵が重なるように位置取りをすると、ディルクにナイフを投擲し、距離着詰めるべく飛び込む。
ディルクは、ナイフを短槍で弾いて飛び込んだ俺に隙を作るのを避けるため、ナイフを躱して俺に短槍で対応しようとした。
そのため、ディルクの背後から近づいた敵は、急に視界に現れたナイフを躱せず、右目で受けて、倒れこんだ。
「若造が、やるな。」
俺の一撃を、短槍で払いのけ、俺を大きく後ろに飛ばすと、後ろを軽く一瞥し、倒れた男を見てそう言うと、連続して俺に突きを叩き込んできた。
俺は、何とかナイフで槍の穂先を捌き、体を反らして避けながら、大きく距離を取る。
「待たせたな。」
ディルクから、距離を取り、周囲にも気を配っていると木の間から、そう声を発し、新たな敵が切りかかって来た。
俺は、辛うじて、切っ先を逸らすようにナイフを合わせた。相手も身体強化を使っているらしく、剣の軌道を思ったほど変えられず、服の袖の部分が裂け、腕に軽い切り傷を負ってしまった。




