1-2 新たな出会い
3人のスタッフに連れられ、遂にアンダーグラウンドの敷地へ入った。
さすが、巨大組織。地面はきれいな若葉色の芝生に被われ、回りには丁寧にカットされた木々がセンスよく植えられている。ここは汚れた者がいないため、常に平和な時間が流れているようだ。俺がさっきまでいた外の世界とはまるで違う。あそこは、木々は折れ曲がり、燃やされた跡やゴミ、血生臭さで充満している毎日だった。こんな楽園、この世にまだ存在していたのか。なんだか、孤児院の仲間に申し訳ない気持ちになった。
あいつらにも見せてやりたいな。
「レイ様、こちらへお入りください」
「はい、、、って中も豪華ですね!何ですか、この床はっ!げっ、よく見たら何か埋もれていますよ」
煉瓦で出来たなんとも高そうな建物の扉を開けると、下にはツルツルの石でできた床が広がっていた。
けれど、よく見ると貝やら虫のようなものが閉じ込められている。
「ふふふ、この床はここでは珍しい大理石というもので造られているのです」
「だい、りせき?」
「はい。大理石は石灰岩から出来ていて、それは石灰質の殻や骨格を持つ生物の死骸が蓄積して出来たものなのです」
「うわっ!!これが大理石ってやつなんですね!生まれて初めて見ました」
思わず、床に寝そべりすりすりしたい欲望を抑えた。またスタッフに笑われてしまうところだった。
後で1人の時にスベスベしておこう。
「気に入っていただけて何よりです。この床をまっすぐ進むとみなさんのいるルームになりますが、その前に」
「着替えですよね?」
「さようでございます」
確かに今の俺の格好はここでは目立つ。というか不向きだ。それは俺にもわかった。
※※※
「みなさん、こちらは第52回生最後のメンバーであるレイ様です」
着替えが終わり、俺は仲間のいるルームに案内された。そこには、約20名の入隊者が待っていた。
パッと見、男女同じくらいの比率で年齢は下から上までバラバラだ。皆、すでに俺と同じように純白の衣を身に付けている。
「遅くなりました。初めまして、レイ・カーティスです。今日からよろしくお願いします」
「それでは、レイ様これから早速、ペアになって第1試練を始めますので、あちらの子のところへ」
スタッフに連れられ、俺と組むことになる仲間のもとへ行った。
「レイ様はこの子とペアを組んでこれからの試練を受けてもらいます」
「初めまして、レイさん。ハル・リドルです。これからよろしくお願いします」
「こ、こちらこそよろしくお願いします!レイです。ハルさん!」
ハルさんはとても華奢で白っぽい女性だった。そして非常に美人である。白い衣を着ているからより白く見える肌にグレーの瞳。髪の毛は銀髪で肩につくかギリギリのショートでさらさらストレートである。背丈は俺より10㎝くらい低い感じ、165cmほどでやや高めで、スラッとしている。
俺は寝癖でぴょんと跳ねた髪の毛を急いで整えた。くそ、こんな美人さんとペアを組むことになるなら、もっときちっときめて来れば良かった。俺だって、頑張れば平均以上の容姿。だと自分では思っている。
「レイさん、これ。今日の試練の説明資料です」
「ありがとうございます」
ハルさんからもらった資料に目を通していると、スタッフからの説明が始まった。
「さあ、みなさん。全員集まったところで、第52回アンダーグラウンド登用試練を始めたいと思います。ご存知の通り試練は全部で3つあり、一人前の単独任務ができるまで全ての試練に参加して合格し、死神と契約しなければなりません。一日でも早く任務に就けるよう今日から頑張ってください。」
死神。そんなものが本当にいるのだろうか。噂だと死に近づいた者が死神を見ることができるようになるとか。ってことは、この試練で死に直面することってことなのだろうか。急に体がこわばった。
「大丈夫ですか、レイさん。顔色が悪いですが」
「い、いや。大丈夫ですよ。そんな死神が怖いなぁなんて俺は思っていませんし?あはは、、」
「そうですか、、ぼくはちょっと怖いです。死神」
ん、ぼく?、、、、、
死神を恐れるのは当たり前のことだ。まぁ、そうでもしなければあいつらには立ち向かえないのだ。人の命を何とも思っていないような悪魔ども。大切な時間を一瞬で無に変える化け物。その化けの皮を剥がせる唯一の手段、それが死神と組むことなのだから。