1-1 はじまりの日
やっと、この門を通る時が俺に来た。入隊試験に落ちること6回。
7度目の正直とはこのことか。そんな言葉があったかな?まぁ、いいか。
「ふぅ、、、」
暖かい春風に靡く「アンダーグラウンド」と書かれた大きな旗を仰ぎ見る。
「母さん、父さん、姉さん、、、遂にここまで来たよ」
10年前、7歳の時、俺の家族は一瞬で奪われた。
確かあの日は寒く、風の強い夜だった。右頬に鳥の足跡のような火傷がある男。黒いマントに全身を包み、背丈はかなりあった。いや、俺が小さかったからそう思っただけかもしれない。瞳は悪魔のように燃えるような赤。赤い瞳を持つものは重度の罪人とされている。噂によると、前世から数えて一定以上の人間の命を奪ってきた者はもはや人出ではなく、殺意の塊である「悪魔」となりはて、その瞳は赤く燃え上がるらしい。まあ、実際にそのような者にあったのはあの時一回だけだったが。
俺は何も出来なかった。黙って死んでいく家族を見ることしか出来なかった。あの時、俺に力がもっとあったら。例え、相手を殺してでも家族を守ることが出来たかも知れない。それも夜道に襲われたのは俺がわがままで家を飛び出して、それを探しに来た父さんと母さんと、、、
俺はあいつらと同じ罪人だ。あれから重い罪悪感に苛まれながら生きてきた。この世では判断を誤ると死が訪れる。いつどこであいつらに殺られるか分からない。それに、いつ自分があいつらみたいになってしまうかも分からないのだ。
門の扉に手をかける。もう後には引けない。こんな世の中はおかしい。俺が変えて見せる。
「ようこそ、お待ちしておりました。52回生のレイ様。みなさんがお待ちですよ」
扉を開くと、すぐにアンダーグラウンドのスタッフが出迎えてくれていた。
3名のスタッフ全員が白いローブを着ている。少々不気味だが、それがこのアンダーグラウンドの証。
純白で罪のない者だけが着ることのできる衣だそうだ。
「よっ、よろしくお願いします!この度52回生としてここでお世話になります。一生懸命に頑張りますので何卒、、」
すると、なぜかスタッフ達がクスクスと笑い始めた。
「こちらこそよろしくお願いします。けれど、、レイ様。その格好だとここではちょと目立ってしまうので、ルームに行く前に着替えましょうね。それと、集合時間は午前8時でしたけど、今は正午。何かあったのでしょうか?」
なんだと?もう昼の12時になっている?くそ、身支度に時間がかかり過ぎたせいか。
こんなに大事な日に遅刻とか何をやっているんだ俺は。時計くらい買っておけば良かった。相変わらず、体内時計はイカれている。
「それと、武装は面白いですね。お手製ですか?」
親のいない俺は孤児院で暮らしてる。だから装備品なんて買う余裕はない。
外に出るときは自分で作ったこの頑丈な武装だ。
「はい!この背中に張り付けてある鉄板は後ろからの通り魔に有効で、胸につけているフライパンは急所である心臓を守ってくれます。頭に乗せたヘルメットは孤児院からもらいました。少し破損していますがまだまだ現役です。そして、この腰から下がってる鉄パイプは護身用です。あ、でも峰打ちですよ。万が一相手を死なせてしまったら、ここに来れなくなってしまうので。それから、、、」
自信満々で説明すると、スタッフ達は顔を見合わせて笑い始めた。何故だろう、いつもこんな感じで笑われる。俺、なんか変なこと言ったか?