リスト
その山がいつからあって、
元々どの様な信仰があったのかは、
私の知るよしもない。
私は母の亡骸の下で、
山にこだます程。
悲しげに、
泣いていたそうだ。
その頃から既に、
『異端な信仰』
は、続いていた。
税に苦しみ、
生活に苦しみ、
食べ物に苦しみ、
病気に苦しみ、、
こうして、
"生"に苦しんだ者が、
この山で自害して行った。
遊郭から逃げる者。
罪を犯し、死に場所を選ぶ者。
社会に受け入れられず、
心中する者まで、、
様々だった。
私は山の麓に住む者に拾われた。
障害のある者は、昔は
『厄』
のある子として、
労働力にならない為、
幽閉されたり、
産まれて直ぐに棄てられたり、
殺されたりと、
珍しくもなかった。
それらが、その当時では、
当たり前だったのだ。
誰が悪い訳でもない。
私が障害で産まれてこなければ、
母はああは、ならなかったのだ。
社会が、環境が、時代が、
母親を"死"へと追い詰めた。
この忌まわしき、
『吊妛山』
に、、
そんな子供等を可哀想に思い、
麓の者が拾い、育てた。
この山では唯一、『自害』が赦された。
人間はこの世界に産まれた瞬間から、
自ら命を絶つ事が赦されてはいない。
産まれて来た命や、生命は、
その個体どれも全てに、必ず、
"存在や価値"を誰しもが持ち合わせ、
役割や、成すべき事が必ず在るからだ。
だが、それを良しともせず、
弱い者はそれを理解しないまま、
命を絶ってしまうのだ。
人間が死ぬとどうなるか、
その魂は何処へ行くのか、、
宗教や、信仰により、
それらは無数にある。
その答えはそれぞれに異なるが、
この山以外では、ループすると言われている。
少なくとも、私は、そう。教えられた。
自らが、死ぬ前の体験、映像、時間を、
ずっと繰り返す。
苦しみを味わい、そうして、死ぬ。
再びまた、自ら命を絶ち。
これを永久に繰り返す。
"終わりの無い死"をずっと、、
生を無しに、繰り返す。
苦しみから、痛みから、、
永遠に解き放たれる事はない。
だが、この山は違った、
それらが全て赦される。
そう、言われて居た。
だから皆は次々に死んで行った。
片道で、
入った者が出てくる事等無かった。
いつしか、ロープは無数に、
木々の至る所にくくりつけてあり、
"呪われし地"へと成り果てた。
入った者は必ず死ぬ。
失敗した者も、首に印を付けられ、
90日以内には必ず死に至る。
死が赦される事等無い。
何故なら、いつも、こうして、、
沢山の呻き声がするのだから、、
時代が移り変わっても、
この山では、沢山の者が死ぬ。
救いを求め、安らぎを求め、、
私も、そろそろ時間が来る。
私達は、子供を守る役目がある。
こうして、役割を終えた私は、
山と共に生涯を共にする。
"来てはならぬ"
"入ってはならぬ"
いつか、自害する者が、
一人でも居なくなる世界まで、
私はここで。
来る者を
温かく見守ろう、、