『アラームさん』
血塗ろ&人外?ハートフル。
矢が飛ぶ中を潜り抜ける!
いや、普通もっと安全な道選ぶだろうって?
ここしかなかったんだよ!道を塞がれ妨害され、どんどん追い込まれる!
奴らの服は統一感がないので、多分盗賊かなー?
でもすごく人数いるじゃん?大盗賊団かな?
「邪魔、だよっ!」
振り返ってラケットを振ると、ビュッ!風切り音と共に疾風の刃!
後ろから追いかけて来た奴らの、首と体がさようならした。
おい。
オレって、凄いことしてるよね?
もう何人殺した?
ゲームなら、一つの街くらいの敵を倒すのは任務であったけど・・
ま!ここで遠慮したら、オレ殺されるからな!!
とにかく何処かの家に潜り込んでやり過ごそう!
なんとか一軒の家に入ったけど、ここの住民も殺されていて、死体が転がっていた。うわ・・
小さな兄弟も、母親と共に死んでいた。兄弟のものだろう、おもちゃが踏み砕かれていた。
「そこまでするなよ・・・クズどもが」
母親は・・・下半身が丸見えになっていた。・・・くそっ!
クズクズクズクズクズクズクズクズクズ・・・・あいつら、本当のクズだ。
「殺しちゃっても良いよね?オレにはそういう力があるんだから」
部屋のタンスを捌くると、男性用の服があった。多分あの人の旦那さんの物だろう。
旦那さんも・・殺されちゃったんだろうな・・・
ささやかな幸せがあった家庭が、蹂躙された。多分この街のみんな、こうなったのだ。
「アンタ達の仇をとってやるよ」
オレは服を着替え、外に出た。
と、数本の矢が迫っているのに気付き、ラケットで防ぐ。
ラケットが仄かに光ると瞬時に大きく光が広がり、矢を跳ね返した。
まるで盾の様だ。
「おお!オレの考えに反応してくれるのか?やっぱりオレのラケットは賢い!!」
試合の時でも時々感じた事があった。
あと少し、伸びろ!
必死で玉を追い、手を伸ばすと・・・カツン
当たった!嘘!無理だと思ったのに!
・・・なんてミラクルはしょっちゅうで、サーブも回転が半端なく出来たり、不思議なラケットだった。
こいつには名前もつけて愛用していた。
好きな子の名前を付けるってのはよくある事だろ?
だからこいつに『カコ』と付けた。好きな子の名前は『チカコ』だがな?
彼女は自分の名前が古臭いと言って、名前で呼ばれたくない、だからあだ名で呼ばせてた。
でも『チカ』だ。オレは彼女の名前を付けたとバレたくなかったので、後半部分?『カコ』にしたのだ。
「『カコ』。一気に倒すぞ」
『ハイ、マスター』
なんてね。返事してくれると嬉しいんだがなぁ。
レベルが上がると言うかもしれない。期待している。
だって!!一人で寂しいんだもん!!『カコ』ちゃーーん!!
など独り言を呟きながらでも、体は動いて敵を叩く。アスリート的反射神経です。
使っていて気づいたんだけど、このラケット・・・剣になるんだぜ?
何を言っているか分からんだろう?
オレも言ってておかしいとは思ってるんだよ。
グリップを握るじゃろ?で、左の手を、その下に繋げるように構えるじゃろ?すると、左手に延長?した棒みたいな感触がな?感じてくるんじゃよ。イメージするんじゃよ。柄握ってる!!ってね。
するとあら不思議!剣を両手で握っている感じになるんじゃよ。言ってもやっぱ、分からんか・・・
説明下手すぎワロタ。それで、柄を感じて来ると、あらやだ!
ラケットの面がな?伸びるんじゃよ。びよーーーーんと、剣の刃の部分っぽいのが光って・・・ライトセイバーみたい、きゃーかっこいいーヤダーー。男の子なら狂喜で萌える。
で、握った感じの左手を離すと、剣は消える。難点は両手でないと振れない剣なのだ。
オレは剣、盾を器用に使い分けつつ、倒していくと、また例のピロリンが聞こえた。
『レベルが上がりました。レベル12です』
いつの間にそんなにレベル、上がったんだ・・・
つまりそれだけたくさんの敵を倒したと言う事だ。
現在進行形で、オレはゲーム感覚で人バンバン殺している。
どうなの?オレの精神、倫理観。
オレに関係の無い人達が、いっぱい殺されているの見て、正義感で戦っているけど・・・
人殺しだね、オレ。自分で言うのもなんだか、冷静すぎ。
もしやサイコパスの才能あったの?とか思ったりする。
どのくらい戦ったんだろう。なかなか敵に遭遇しない。グルグル回ってばかりだ。
「ああ、あとどのくらい敵がいるんだろうか・・・」
すると・・・あの機械音声が告げる。
『あと7人です・東方向に固まっています』
何それ便利ーーーー!!
でも東ってどっちだよ。今日曇りで方角わからん・・・
足が前に2歩進めたところで、
『そちらの方角は南です』
と言ってきた。
あ、はい。ありがとう。っつーか、有能だな?
ちょ、こんなに都合良い武器でいいのか?便利、有能、強力!
こ、これは何かのギフトか?それとも加護か?なんでもいいけど!!
オレはこの機械音を『アラームさん』と名付けたのだった。
グエエ・・
汚い断末魔。
これで最後の一匹を殺した。
卓球ラケットで。オレの『カコ』ちゃんで。
『カコ』ちゃん最強ーーー!!なんでも出来ちゃう。
そしてアシスタント?『アラームさん』。
この2つがあれば、なんかオレ生きていける気がした。
もう直ぐレベルも15になる。
だけどいまいちステータスの見方が分からない。
オレはゲームとかあまりしたことが無かったから。
どっちかというと体動かす方が好きで、中学から本格的に卓球するようになってからは全然だ。
ゲーセンだってあまり行かなかった。やったとしても、クレーンゲームとメダルゲームくらいかな。
「最近と言うか・・真面にやったのは、乙女ゲーだったな・・それも3年前」
オレが中学3年、卓球部を引退後暇だったから、ちょっとゲームでも、なんて思った時期もあったんだ。
で、安売りしていたソフトを買ったら、箱と中身が全く違っていたのだ。
超人気RPGの筈が、乙女ゲーだった。でも100円にケチつけるのもな、と思ってプレイしたんだよ。
結果。
頑張ってエンディングには行った。一番簡単と言われる『王子エンド』だ。
なるい戦闘、小っ恥ずかしいイベントの会話、好感度のパラメーターに一喜一憂した日々・・・
オレは言いたい。
ヒロイン、こんな男でええの?ちょっと王子としては弱いよ?豆腐メンタルだよ?学生のうちから自分を諦めてるし。
まあ、ヒロインも大概な性格なんだ。婚約者がいる王子を誑かすんだから。
このゲーム、レベル強くしたらエンドなんか軽くいけちゃう。そんななるいゲームの中でも、王太子ルートはらくらく簡単だった。こころ落とすの簡単だったし!
で。なんでゲームの話になったかと言えば・・
今この街の中央にあった王国速報と言う掲示板に、あの王子そっくりな顔が描かれたポスターが貼ってあった。
んん?いや待て待て。それは無い。多分他人の空似。だって、ゲームにこんな残酷設定無かったから!!
確か、なかったはずだから!!まあ、それは置いといて・・・何が書いてあるんだ?
『セブライ王国第一王太子殿下 ギルブリット様 御学友公募』
市井、貴族の12から18までの男子 殿下の御学友として募集。
対象 魔法が使える事 剣が使える事 一定の知識がある、学校に通っている者
詳しくは王城の警備にて。
「ほーー・・オレ、受けてみようかな」
住む場所を得られる!食事も取れる!よし!次の希望は決まった!!王城だ!!
だって、こんな誰もいないところで一人でいたくないんだもーーーん!
・・・・でもどこにあるんだ?なあ『アラームさん』わかるか?
『半径50キロ内にはありません。方角も不明です』
あーーー、そっかぁ〜〜〜・・・万能ではないもんだねぇ・・・御免な?
すると突然キシュ!キシュとなんか読み込みっぽい音がして・・・
『リロード中です・・・リロード中・・・・確認いたしました。71キロ、北北西に、セブライ王国、王都セブゥ、確認・・・・・・・・クールダウン中・・・・・・・ただ今システム停止中・・・・・・・・・』
ぎゃあ-ー-----!!!『アラームさん』、無茶させた!!ごめん!!!
こうしてオレと2つの相棒は、セブライ王国に向かったのだった。
話も徐々に増えてます。他の話も読んでちょ。
pixivでも変な絵を描いたり話を書いておるのじゃ。
https://www.pixiv.net/manage/illusts/