ゼロではない。
この世には色んな病がある。
その病の苦しさは病や人、環境様々なものによって変わる。言ってはいけないとわかっていても言ってしまうこともある。ただその真意は他人には伝わりにくい。
彼女は小さい頃から病を患っていました。病といってもすぐに命が危ない等という病ではなく。
ただ毎日病と並んで歩き、それが一生続くものだった。
そう。なんでもない。大病を患っている人からすれば私なぞ恵まれている。
彼女はそう思っている、、、嘘、、、ではない。
はずだが、、、
何をするにもつきまとうそれを鬱陶しくなるのは許してくれないだろうか。何かを始める時考えるこれをしても彼女は正気を保っているだろうか。終わる頃に元気だろうか。醜態を晒さないだろうか。彼女は不安になる。
これは人生の出来事にも当てはまることで、親しくなればなるほど何かの弾みでバレるのでは、期待し彼女自身でバラした末に離れていくのでは…と。
深く関わることを避ける。
友人でもある程度距離を置くことが多い。
恋人、結婚相手など以ての外である。
ただ、、、時折友人の結婚式に呼ばれては羨ましく感じることもあるのは確かである。
* * * *
そんな彼女に婚約の話が舞い込む。
「どうしたい?」
「どうしたいと言われましても……承知の上なのですか?」
「いや、知らないのではないかな?」
ある方からの婚約話、昔何度か遊んだことがあるようだが彼女の病のことは知らないらしい。だが彼女の父と彼の父は友人らしく彼の父は知っているらしい。ではバレて破棄されるのは目に見えているのでは?と考えるも彼女も年頃である。未来が見えないにしても恋愛はしてみたい。距離を置かれる、離ていかれる辛さには慣れてしまったのだから。受けてもいいだろう。そう思った。
「お受け致します。」
「そうかい!ならば早速返答しておくよ!」
父が嬉しそうでだった。彼女はそれほど心配をかけていることに心が軋む。
* * * *
初めて会い彼女は驚く。彼は一般的にイケメンと称される見た目に会ったのは数時間であったが会話や気遣いもごく自然で紳士的であった。
彼女が驚いたのには理由がある。彼女の病上急激にという訳ではないが太りやすい傾向にあり、ナイスバディではなくぽっちゃりボディで不細工ではないが美人でもない美人系の顔。黙ってたら機嫌悪い?と聞かれるタイプである。そして針の跡が残り固くなる指先である。実をいえば指先だけではないが常外に出る肌の部分は指先である。病の関係上致し方ないが彼女は嫌で嫌で仕方なく放棄したこともあった。指先の跡は放ておくとそのうち消えるが硬さはなかなか消えない女性らしくなく違和感のある指先。
そんなことと思う人は多いだろうが本人にすれば気になるのだ。誰がでは無く自分自身が気になってしまう時点でそんなことではなくなる。
どこまで彼が知っているのかは知らないが何故婚約を申し込んだのか不思議に思った。
そして彼女はもう1つ思う。
やっぱり彼の未来に私はいない。
容姿が整っている人というのはやはりいろいろな機会が多くなる。ならばすぐに私よりいい人に出会う。
と彼女は考える。彼女は病関係になると極端にネガティブになる。
* * * *
あれから何度か一緒に出かけたりもし少しづつ知って会話もスムーズになった頃よ
彼女は食事に行きませんかと彼から誘いを受けた。
「私は結構お酒好きなのですがお好きですか?」
「詳しくはないですがそれなりに飲みますよ」
「では少し飲みますか…」
「はい」
彼女はお酒は嫌いではないどちらかというと好きである。ただ彼女は気づいてなかった。体調が良くないことに…
「っっ…」
お酒を一口二口飲んだ後急激な目眩、吐き気、冷や汗。
「すみません、お手伝いに…」
平静を装い御手洗へ駆け込む。1人になるとドッと身体が重くなり立っていられなくなりへたり込む。それでも少し経てば戻らなければいけない。少しでもマシになるかとついさっき美味しいと思い食べた物を無理に出す。実際は良くなってなどいないが精神面で補おうとする。少し霞んでいた視界がハッキリしたら戻った。
「すみません、お待たせしてしまって…」
「大丈夫ですよ…顔色が悪いようですが大丈夫ですか?」
「あ、はい。なんともありません。少し久しぶりにお酒を飲んだからかも知れません。」
全くの嘘を並べ取り繕う。
なんとか乗り切り少し私用があるのでと別れる。1人になるとプツンと緊張も気も切れしまう。ガタッと力も入らず目も霞む。ただ道端で倒れるのは怖い。壁や触れられる所を見つけつつのろのろ歩く。1時間ほどしたら少し落ち着いてきた。終電までに間に合った。しかし乗って数分気持ち悪さがぶり返す。立ってられなくまた目が霞む。周りには知らない人達恐怖でしかない。勿論危害が加えられるなど思っているわけじゃない私がどう見えているのか今の彼女には全く理解できないのだ。目が霞み朦朧とする意識の中意識をたぐり寄せようと頑張るが最早無いに等しい。座り込みたいのを奮い立たせる。周りも何かおかしいなと感じ始めただろうとは分かるが最早顔も認識できないほどである。
「っっ…」
脚に力が無くなった。ずるずると壁を背に膝を抱え座り込む。勿論電車で迷惑な行為だと分かっているがどうにも出来ない。最寄りまで頑張りたいのはあるけれどどこかで降りようと力も入れるがなかなか上手く入らない。やばいなぁと思った。
どこかの駅に着いた時腕をぐっと引っ張られた。
さわっと冷たい風が顔に流れた。
* * * *
寒い…冷たい…。身体に熱が全くない…。
寒い寒い寒い。
はっきりと覚醒しない頭とぼやけた視界。
熱を求めて手を彷徨わせる。
冷たかった手の指先にふわっと暖かい温もりが灯る。
触れる温もりを欲するように力が入らない手を握る。
掌への温もりを感じ少しの欲を満たされ
指先から意識が遠くなり
深い眠りに誘われた。
* * * *
「っ───」
意識が浮上する。聞こえてくる誰かの声。彼女は瞼を持ち上げる。
「んん"─……私の…部屋…」
目が覚めた彼女は家の自室に寝ていた。彼女は背を起こしたまま考える。電車に乗った途中までの記憶しかなかった。自力で帰ってきたのか、それともどこかで醜態を晒したのか、考えを巡らすが分からない。あの時彼女は限界をとうに超えていた。ある程度までは気を張る、外出中である、人の目があるといった気持ちがあれば精神面に補われ多少体調が悪かろうと自身では気が付かないほどになる。熱があるのがわかってしまうといきなり身体がだるくなるようなことが一般的に 感じる人もいるのではないだろうか。言わばその熱があると気づく前の状態である。彼女が固まって考えを巡らせれると扉が開いた。
「起きましたか?」
母が入ってきた。
「はい…すみません…私は昨日は…」
「昨日はあなたの婚約者の方が送って下さいました。既に朦朧としていましたが…酔っていたのですか?それとも…」
「申し訳ありません。」
「はぁ─……気をつけなさいといつも言ってるでしょう…」
母は深いため息を吐き呆れたような声色で言う。彼女はこの時間が本当に嫌いである。何もかもが冷えてしまうのである。
「破棄されるにしろ謝罪と説明はしておきなさい。」
「はい…」
けして両親に蔑ろにされている訳では無い。どちらかと言うと過保護であるし、兄が家で生活していない今は極端に過保護である。がやはり親だから血の繋がりがあるから近しい関係だからといってなんでも伝わる訳では無いしどんなに苦しきかなんて同じ病を持っている人でさえ違うのだ。でもだからといってその気持ちを押し付けるのは心配されてるのを知っていた彼女は出来なかった。
* * * *
数日後、連絡を取り彼の家を訪れていた。着くと侍女に少しお待ちください。と言われ応接室で待っていた。少し経つとノックの音がして息を切らして彼は入ってきた。
「大丈夫なのですかっ?…っ…」
息が荒れていて聞いたそちらが大丈夫かと思っていた。
「あ、はい。先日は申し訳ありませんでした。恐らく醜態をさらしたでしょうしご迷惑をおかけし…大変申し訳ありませんでした。」
頭を深々と下げ彼女は謝る。
すると彼はぼそっと何か言った気がしたが何を言ったか彼女には聞き取れなかった。次の瞬間彼は彼女の両肩に手を添え
「頭を上げてください…何故謝るんですか?」
眉間に皺がより。綺麗な顔により余計怖く感じる。
「えっと…先日ご迷惑をおかけしましたし、婚約前に言わなかったこともお詫びにまいりました。婚約破棄も勿論受け入れる用意は出来ておりますのでそちらの良いタイミングで破棄していただければ…「何故破棄する?」っ」
「えっと…?貴方はもうご存知なのですよ…ね?…」
「あぁ、聞いた。」
「ならば破棄するものぉ…で…は」…
彼女は自分自身から二人の婚約破棄話を出しておきながら心が冷めていくのを感じていた。なぜ自分からそんなこと言わなければならないのか、言っている本人の彼女も分からない。そう思えるぐらいには彼と婚約した数ヶ月楽しかったのだ。
「確かに驚いた。だが破棄はしない。」
「は?え?」
「だから破棄はしない」
「ちゃんと私の事聞きましたか?」
「聞いた。君のお父上からも聞いたしうちの父からも聞いた。」
「そう…ですか……いや、でも…」
「とにかく破棄はしない。信用はまだされていないんだろうがただ教えて欲しい。病持ちの君もそれに関係ない君も」
彼が何を言っているのかわからなかった。何故破棄しないのか不明だった。ただ…
婚約破棄しないこと。
そして
病持ちの彼女とそれに関係ない彼女のを知りたいということ。
彼女には彼の思ってることも不機嫌な理由も婚約を破棄しない理由もわからない。けれど…それを聞いた時心が温かく嬉しかった。
この世には色んな病がある。
その病の苦しさは病や人、環境様々なものによって変わる。言ってはいけないとわかっていても言ってしまうこともある。ただその真意は他人には伝わりにくい。
彼女は小さい頃から病を患っていました。病といってもすぐに命が危ない等という病ではなく
ただ毎日病と並んで歩き、それが一生続くものだった。
そう。なんでもない。大病を患っている人からすれば私なぞ恵まれている。
彼女はそう思っている、、、嘘、、、ではない。
はずだが、、、
何をするにもつきまとうそれを鬱陶しくなるのは許してくれないだろうか。何かを始める時考えるこれをしても彼女は正気を保っているだろうか。終わる頃に元気だろうか。醜態を晒さないだろうか。彼女は不安になる。
これは人生の出来事にも当てはまることで、親しくなればなるほど何かの弾みでバレるのでは、期待し彼女自身でバラした末に離れていくのでは…と。
深く関わることを避ける。
友人でもある程度距離を置くことが多い。
恋人、結婚相手など以ての外である。
ただ、、、時折友人の結婚式に呼ばれては羨ましく感じることもあるのは確かである。
そして世には色んな人々がいて考え方も思うことも人それぞれである。誰もいないなどということはありえない。
可能性は低くともゼロではない。
さて…彼女と彼。
二人の2人の未来は?互いの思いは伝わるだろうか?
誤字脱字ありましたらすみません。
ありがとうございました。