折角得たヒーラーは有効活用しよう
洞穴の前には4人のゴブリンが立っている。
そこへ狩りから帰ってきたのであろうゴブリンの集団がやってきて2~3言葉を交わし巣へ入っていく。
私達は茂みの中から様子を伺っていた。
「ヒャッ!」
声が漏れないようにミレーヌの口をイブが押さえた。
ミレーヌは震えながら巣に帰ってゆくゴブリン達を指さした。
ゴブリン達の獲物を見て怯えているのだろう。
なにせ、奴らがぶら下げているのは人間の死体なのだから。
震えるミレーヌにイブが耳元で囁いた。
「アンタが付いてきたいって言った世界はこういう事なの。
いまさら引き返せないし、もっと悲惨な光景を目にすることなんて一杯あるんだから。
そんな覚悟もなくてここに居るなら、次ああなるのはアンタよ。
死にたくなかったら慣れなさい」
ミレーヌは涙をこらえて無言で頷いた。
「ゴブリンの巣穴はアリの巣穴と同じで幾つかの部屋に分かれてんだよね。
無計画で突っ込んだらソッコーで囲まれちゃうから、ちゃんと作戦練らないとね」
「水攻めで一気に水没させるか? 」
「治水対策はしてあると思うし、なにより水没させれるほどの水の量なんて用意できないっしょ」
「水魔法使えるけどだめ? 」
「コローニーはどんだけ広がってるか分かんないんだぞ?
どれだけの水量必要だと思ってんだよ」
「魔力と威力なら問題はないって」
「体が持たないとかなんとか言ってたじゃん」
「それはほら…… 」
私はそう言ってミレーヌを見た。
レオも私の視線を追ってミレーヌを見た。
「お前頭おかしいんじゃねーの? 」
レオは呆れた顔で私を見た。
「呆れた」
イブも私の意図に気づきそう言い放った。
「誉め言葉として受け取っておくよ」
私はにやっと笑ってミレーヌの肩に手を置いた。
「この作戦はミレーヌ、君にかかっている。期待してるよ」
「え? 私…… ですか? 」
ポカンとするミレーヌに作戦を説明した。
「魔力吸われるしこのブレスレットもはずすわ」
私は魔石生成ブレスレットを外した。
それを見たレオが言った。
「本気なんだな」
「うん。指切断とか嫌だからミレーヌ、マジで頼むね」
「は、はい」
ミレーヌは不安と緊張が入り混じった様子であった。
「ほんとこの前といい、今回といい脳筋戦法好きな。世界中探してもお前しか出来ないんだけども」
「そんなに褒めるなよ」
「お前の旦那知能足りてねーぞ」
レオはイブにそう言うと、イブは溜息をついた。
それを見たミレーヌはクスリと笑った。
「もう大丈夫そうだな。行くか」
ミレーヌの緊張がほぐれたのを確認し、私達は害獣駆除に乗り出した。
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