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ヴリュネとグルーネ

本堂に入ると中央に神の石像が目に入り、窓から光が差し込み輝いている。

石像の背後にはステンドグラスの彩光が色鮮やかに映りだし、神聖さを醸し出している。


「100年前までここで皆さんで礼拝していたそうです。

先代の勇者様がここで祝福を授かってからここは時の歩みを止めているんですわ」


「へぇ……じゃ、祈らせてもらうよ」


「えぇ、私はここから勇者様を見届けさせていただきますわ」


「ユウマでいいよ」


そう言って私は石像へ歩みを進めた。




(もっと近くへこい…… )


声が聞こえる。

一歩一歩近づくにつれ声ははっきりと大きくなる。


(私の前で祈りを捧げるのだ…… )


光が差し込む場所まで歩を進め、私は目を閉じ祈った。


「よく来た。我が息子よ」

はっきりと聞こえた声に驚き目を開けると、さっきまで石像であった主が目の前に現れた。


「メルシュ…… 神……? 」


「いかにも、私はメルシュ。神にしてお前の父であり祖先ともいう存在である」


「それはどういう…… 」


「少し長話になるが…… 世界がまだ生まれて間もない頃のことだ。

私には二人の息子がいた。」

白い髭を蓄えた老人が言うにはこうだ。


メルシュはヴリュネとグルーネという双子の息子を作った。

ヴリュネは生と闇をグルーネは死と光を司どり、とても仲の良い兄弟だったそうだ。

ある時メイガスという一人の女性が二人の前に現れた。

そして同時に同じ女を愛した。

あるときメイガスは子を身籠った。

ヴリュネの子である。

それを知ったグルーネはヴリュネに辺境の地を統治するよう頼み、その間に生まれてきた子供を殺した。

そしてメイガスを自分の物とし、メイガスに我が子を身籠らせた。

復讐を恐れたグルーネは生まれてきた我が子を隠し、戻ってきたヴリュネを亡き者にしようと考えた。

ヴリュネはメイガスからグルーネの事を聞き激怒した。

そして、暗殺を目論むグルーネを葬りさった。

メイガスは再びヴリュネの子を身籠るが、出産と共に死んでしまった。

深い悲しみに暮れるヴリュネは妻の遺体と自身を燃やし灰となって世界へ散らばった。


「私は二人の息子を失い、多くの子を得た。

二人の子が魔人、人間として別れ戦い、散っていく……

息子たちの怨念がそうさせるのだ。

100年前に神に等しい力を持つ二人の我が子が生まれた。

それは私の息子の生まれ変わりだったのだ」


「それが勇者と魔王…… 」


「そうお前たちだ。

お前の中にもう一人の存在が居るのは理解しておろう。

どういうわけか100年まえお前たちの争いによって二つの魂が一つに重なったのだ」


「それで私が生まれたわけですね。

ですが魔王が現れているようですが…… 」


「魂が1つになったと言っても完全ではないのだ。二人の魂の残滓が各地に散らばっている。

今魔王とされるものはその残滓の塊の一つなのだ。

お前は魂の残滓を集めなくてはならない」


「それが私が今存在している理由というわけか」


「まずは各地の聖地を巡るのだ。聖地へはコンパスが指し示してくれるだろう」


そう言うと私の目の前から老人が消えた。


「……様! 勇者様! 」


目を開けると私は地べたに横たわっていた。

そして、光る石のかけらを知らずのうちに手に握りしめていた。



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