祝勝パーティー【2】
「いつまで寝てるのよ! 」
聞きなれた女の声で私は眠りの世界から引き戻された。
時間を確認するともう昼にもなろうという頃であった。
「あー、ちょー腹減った…… 」
気怠さを追い払うようにノビをすると、空腹が私を襲った。
「昨日の夕食すごかったのに! 起こしても起きないし相当疲れてたみたいだから寝かしてたけど……
あの、グリーンポークのベリーソースの味が忘れられないわ」
恍惚の表情でイブが言った。
「超絶空腹の俺のこと死体蹴りするのやめてもらっていいですか? 」
「起きないアンタが悪いの」
フフン、とイブが笑った。
「とにかくなんか食べにいこうぜ? 」
「そのつもりで起こしたの。レオは、なんか朝早くからどっか行ったし。
とりあえず着替えて? 」
そう言うとイブは部屋を出ていった。
私は着替えを済ませ、二人で街に繰り出した。
首都というだけあってどこも人であふれている。
石畳の道路を多くの馬車が行き交い、至る所で人々がたむろしている。
イブは馬車から見えたカフェが気になっていたらしく、東通りを散策した。
「あ! あったあった! 」
彼女ははしゃいで店に駆け寄った。
オープンテラスとなっており、いかにも女子受けしそうという店構えであった。
「すんげー腹減ってんだけど、物足りるかしら…… 」
「色々頼んで、一緒にシェアしよ」
「でもお高いんでしょ? 」
「大丈夫よ。旅費浮いてるんだし、ちょっとは贅沢しようよ」
にやりと笑ったイブの瞳にはお金が映っていたような気がした。
「まぁ、いいか。鱗で稼いだせいで、支給されてた旅費すら手付けてないもんね」
私も真似してにやりと笑うと、
「その顔他所でしちゃだめよ? 今すっごく勇者の顔してないから」
「イブに言われたくないんだけど」
「私そんな、いやらしい顔じゃないもん! 」
そんなやりとりをしていると、店員が注文を取りにやってきた。
5品ほど頼み二人で舌鼓をうった。
「なんか、こんなデートって久しぶりだね」
唐突にイブが言った。
「そうだな。学生のとき以来か? 」
「士官学校時代もなんだかんだで、ほぼ誰か一緒に居たけどね! 」
「俺人気者だし仕方ないだろ」
「アンタなんか勇者じゃなかったら自意識過剰のイタイ男よ」
小さくイブはバカと言った。
「それは手厳しいね。
でも、なんだかんだで一緒に居るから良しとしてよお嬢さん」
「もう……」
「デザートでも食べて機嫌なおしてよ。ムスッとしてると可愛い顔が台無しだよ? 」
「ユウマってたまにチャラいよね。レオの影響? 」
友達は選びなよ、と言ってイブは笑った。
一通り食べ終わると、街を見て回り、宿に戻るころには日が暮れていた。
部屋に戻ると、レオが帰宅していた。
「あ、おかえりー。
二人とも久しぶりのデートは楽しめた? 」
「うん。おかげさまで。
でも友達は選ばないとダメらしいわ」
ぽんっとレオの肩に手を置くと、イブが吹き出した。
そしてつかの間の休日も終わりを告げた。




