夕焼け
父が出ていくと母は少し寂しそうな顔をしてキッチンに引っ込んだ。
「早くご飯済ませて、あなたも今日から学校でしょ?」
母はそういうと僕に朝食を出した。
急いでパンを頬張りミルクで流し込む。
「中等学校来年には卒業なのに……
もっとしっかりしなさい。
来年15歳になるのよ? 」
母は私を見て呆れている。
「朝からお説教はやめてよ」
「言われたくなかったらちゃんとしなさい」
これ以上は耳が痛い。
僕はそそくさと家を飛び出した。
木造作りの家々を数件走ると、数人の大男達が道端でたむろしていた。
「お、ユウマ! そんなに慌てて遅刻か?」
そのうちの一人が私に声をかけた。
「おはようオリバーさん! 今から仕事? 」
「あぁ!今から皆で森さ入るとこだ」
この男達は猟師である。
雑木林に囲まれたこの町は、主に林業と狩猟で生計を立てている。
「最近魔獣が出没するから、林の奥には行っちゃならんぞ。
学校気を付けてな! 」
「うん! ありがとう! 行ってきます! 」
私は再び走りだした。
なんとか無事始業時刻に間に合い一安心した。
「今日は勇者の魔王討伐について勉強しましょう」
教師が一限目の授業を開始した。
必死に走ったせいか気分が悪い
「100年前勇者ハーグ・アルファシオは神からの祝福を受け魔王討伐に挑みました」
意識がもうろうとする……
「魔王城に乗り込んだハーグ・アルファシオ達は…… 」
内容が入ってこない。
しかし、どこかで見たような光景が頭の中で流れている。
向かい合う二人の男達。
魂を吸い合うように絡み合う剣筋。
午後にもなろうと言うのに気分が収まらない。
頭の中はずっと同じ光景が映し出されている。
突如光に包まれて、暗闇が訪れる。
僕は意識を失ってしまった。
僕…… 私…… は……?
気付くと僕は学校のベッドで横になっていた。
夕焼けが窓から照らし出され真っ白なはずのシーツは、赤みの強いオレンジ色に染まっていた。
「あら? 気が付いた? ご両親に迎えに来てもらうようにアナタのクラスメイトに頼んであるわ」
女性教諭が僕の顔を覗きこんで言った。
しばらくすると、空は紅からうっすらと青みを帯び、点々と星々の光が見えてきた。
空の移り変わりをぼっと見ていると
「ユウマ! 大丈夫!? 」
声の方を振り返ると、心配する父と母の姿がそこにあった。
父と母は先生に礼を言い、私達は次第に暗くなる道のりを帰って行った。




