北部国境門【1】
西側のラッシーから北部国境門まで丸二日の時間を要した。
野営をすることなく旅出来たのが我々には最大の幸運であった。
北部国境付近はグレ山の麓に近いせいか、山おろしが吹き荒れ、季節は初夏の様相を呈しているにも関わらず肌寒さを感じた。
国境門前を完全に封鎖し、兵士が私達を止めたが、正体を知ると自ら中に案内してくれた。
国境門は兵士でごった返し、ところどころに負傷兵が運ばれ、野営キャンプはまさに後方の戦場といった様子であった。
「状況は? 」
「五分五分……と言いたいところですが、我が軍が不利です」
「そもそも発端は何だったのです? 」
「私は元はディタ国とを挟むグレ山道の哨戒が任務なのですが、半年ほど前からディタ国で不穏な動きを察知していたので、我が国もここ、北部国境に軍を展開していました。
そして数か月は膠着状態だったのですが、2か月前のグレ山軍事演習の時に突然ディタ国に襲撃されました。
そこから1週間で国境門前まで押されてしまい、必死に防衛をし戦線を押し上げて1か月後には敵国側まで攻め入りました。
ですが、そこから魔人達が介入してきて今では山道入り口付近まで押されています 」
「やっぱ魔王がなにか関係してるんかね? 」
輝く髪をなびかせながらレオが言った。
「後ほど会議しつにて、作戦会議が行われますので、そこで詳しい状況をご説明します 」
「キャッ! 」
突然吹いた山おろしが悪戯に乙女のスカートをなびかせ、黄色い声に無意識に反応する男達。
我がパーティーの紅一点はその場に居合わせた兵士たちの士気上昇に大いに貢献した。
その後何故か私とレオが平手打ちになりイブは更衣室を案内するよう兵士に頼み、消えるようにこの場を立ち去った。




