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インパ国元首

「勇者一行をお連れしました」

外務官が扉越しに話しかけると、中から

「うむ、入れ」

という声で兵士が扉を開けた。


シックな色の木製のディスクが部屋の中央に陣取られ、私の目は釘付けになった。

よく見ると凝った彫刻が施してあり、ここにも金箔が随所に施されている。

そのディスクに恰幅の良い男性が座っている。


「遠路はるばるよく来てくれました。

私はこの国を治めるゴルゴンと申します。

エルカサ王からの手紙を読ませてもらいました」


ゴルゴンと名乗る男深々と頭を下げると、頭皮が光に照らされた。

両サイドに残る頭髪が一層中央部分を引き立たせている。


「手厚い歓迎感謝いたします。

改めまして私はユウマと申します」


「イブと申します」


「レオと申します」

名乗り終えると私達はソファーに座るよう勧められ、3人並んで座ると外務大臣が話始めた。

「我が国は現在隣接するディタ国と北側国境付近のグレ山道にて軍事衝突中です。

つきましては勇者一行に加勢をお願いしたい所存であります」


「恥ずかしながら我が軍は劣勢で、敵はなんと魔人を味方につけている模様なのです。

しかし勇者様はともかく、士官学校あがりの新人を前線に送り込むなどとエルカサ王は何を考えておるのやら。

しかもたった3人…… 」



どうやらこの国の元首様は我々三人しか来なかったことにご不満のようだ。

彼の不満も尤もだが私達を舐めてもらっては困る。


「きっと閣下の御意向にそえるかと存じ上げます」

金髪の青年は瞳に熱を込めていた。

私とイブもそれに同意し付け加えた。


「我が国は決してインパ国との盟約を軽んじているわけではありません。

私達がこの任務に最もふさわしいため派遣されたのです。

私達の戦力はエルカサ国の一個師団に匹敵すると言われています」



半分嘘を吐いた。

あの男は盟約を重んじるような男ではない。


利害関係上最小限の支援をしたに過ぎない。

だが、一個師団に匹敵することは嘘ではない。



正確には全師団以上だが……



「そこまで言うならあなた方を信じましょう」

ゴルゴンはそう言うと私達を下がらせた。



宮殿を出て、今朝の宿まで送ってもらった。


送り届けてくれた兵士が居なくなり、私達の苛立ちは解放された。

「なんなのあのオッサン! ムカつく! 」

うら若き乙女は今この瞬間荒れ狂う雌犬へと変化した。


「ホントだよな!俺たちの実力見せつけてやろうぜ! 」

レオもそれに同調した。


「あの雰囲気で聞けなかったけど、あのオッサン、敵が魔人と手を組んだって言ってたよね?」


「あぁ、たしかにそんな話してたな」


「魔人って全人間の敵じゃなかったの? 」


「そこは、もはやお前の存在で俺の中ではよくわからなくなりつつあるよ」

レオがちらっとイブに目をやった。


「もし私が魔人だったら、二人とこうして居られたかな? 」

乙女はうつむき静かに言った。


「なってるだろうな」


「そうだな」

私達の返事を聞いた乙女は涙を見せまいと顔を隠し少し黙った後


「バーカ」

と言った。

彼女の声は少し甘く柔らかかった。


私は少しホッとした。

彼女の疑念は私自身の疑念にもなり得るのだから……


「とにかく行ってみよう。

この前の奴らの事もあるし、魔王が絡んでいる可能性もある」

私が言うと二人はうなずき、手綱を握った。


合図を送ると馬達は列を成し風のように大地を駆けた。



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