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下着の色

早朝、私達がまだベッドの感触を楽しんでいる時、部屋を何者かが訪ねてきた。

そうそうベッドで寝れるチャンスなど今の私達にはないのだから、もう少し楽しませてもらいたいものだ。


意識もはっきりしない状態でふらふらと訪問者が待つ扉に向かう。

ドアを開けると昨日の青年であった。


「おはようございます!お迎えにあがりました!

下に馬車を待たせてありますので、準備出来次第お声がけください! 」

そう言うと彼は部屋の前で待機した。


「なによ朝早くから…… 」

イブは不機嫌そうに瞼を擦りながらバスルームへと向かった。


「イブの用意長いしもう少し寝かせ…… 」

そう言いかけると、レオは二度寝してしまった。


「やれやれ…」

私は顔を洗おうとバスルームへ向かった。

洗面台で顔を洗っていると、背後の仕切りを隔てて水浴びをする音が聞こえた。

微かに香る石鹸の香りと艶めかしい吐息で私ははっと気が付いた。


迂闊だった。

寝ぼけていて、イブがシャワーをしていることを完全に忘れていた。

彼女が気付くまえにここを離れなくては。


足音に気を使い、気配を悟られぬように

私はそっと部屋を出た。


部屋に戻るとレオはいびきをかいている。

まったくこれから要人と会うであろうに、気楽なものだ。

だが、これぐらいの度量がなければ勇者一行として旅をすることなどできないのだろう。


「あーさっぱりした」

イブが石鹸の香りを漂わせバスルームから出てきた。

先ほどのこともあり何故か胸が高鳴った。


イブはこちらを見ながら

「ねぇ、さっき洗面所に来なかった?」

優秀な尋問官が私への尋問を開始した。


「さぁ?何のこと?」

私は必死の抵抗を試みた。


イブは私に近づき耳元で甘ったるい声で

「私の今日の下着は何色でしょう?」

どおうやら完全にバレているようだ。


不可抗力だとは言え、これは完全に白旗をあげるしかない。

そして私は覚悟を決めた。


「ブルー」

その瞬間頬を強烈な痛みが走った。


「バカ!最低! 」

そう言うと彼女はさっさと荷物をまとめて出て行ってしまった。


「なに朝からイチャついてんの? 」

レオがにやけて私を見ていた。


レオと支度を済ませ部屋を出て、案内されるままに馬車に乗った。

馬車にはすでにイブと中年男性が乗っていた。

イブと中年男性は向かい合うように座っている。


イブは私の顔をみるなりそっぽを向いてしまった。

不機嫌な彼女の隣に私は腰を下ろした。

レオはその様子を見ながらニヤニヤしている。


幾何かの沈黙を破り中年男性が話し出した。

「いやあ皆さま、ようこそインパ国へ。

私は外務官のノルドと申します。

昨夜頂いた封書を読ませていただきました。

勇者様御一行を援軍に派遣して頂けるとは至極光栄です」


「私たちは同盟国であるインパ国との盟約を果たすため参りました。

それとは別件でヨギ大聖堂に参拝することを許可願いたいのですが、お願いできますでしょうか?」


私が言うと外務官はニコリと笑って

「その件も封書にしたためられていましたよ。

もちろん許可します。

ですが戦いが終わった後ということになりますが…… 」


よくできた愛想笑いだ。


「えぇ承知しております」

私がそう答えると


「では、具体的な話も含めて、今から我が国家元首に会っていただきたい。」

愛想笑いで余った肉が車内の揺れに応じて振動している。


「その為の迎えなのでしょう?」

私が問うと、

「流石は勇者様。聡明であらせられる」

などと社交辞令を述べ、馬車は首都インパへと向かった。


車中は再び沈黙に包まれた。

私はイブの顔を見るが、彼女はいっこうにこちらを向いてはくれない。


しばしの沈黙が流れ

「なによ?」

とイブに問われたが


「なにも」

と返すことしか出来ず再びイブはそっぽを向き外の風景を眺めた。

胸のあたりまであるブロンドの髪の毛が微かに揺れる。

窓から差し込む光が彼女の白い肌を輝かせ、エメラルド色の瞳が窓越しに映り込む。


私は何とも言えない気持ちと、今朝のバスルームの風景で頭がいっぱいだった。

レオはニヤニヤ笑い、私が睨むと目の前の金髪の男は狸寝入りを始めた。


そして数十分ほど経つと馬車は止まり、扉が開いた。

どうやら到着したようだ。

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