インパ国国境
森を抜け、小高い丘を過ぎると、インパ国の国境が見えてきた。
城壁が張り巡らされ領土内には首都を囲むように幾つかの集落が点在しているようだ。
ヨギ大聖堂のあるヨグルという街はどうやらここからは確認できない。
国境に着いた頃には野は赤く染まり、空には星が見え隠れしている。
慣れない長旅に三人は疲労の色を隠せなかった。
「今日はベッドで寝れるぞ!やったー! 」
「やっとシャワーが浴びれる! 」
レオとイブは大はしゃぎだ。
私も内心今夜の野宿を逃れることができ、ホッとしていた。
連なる城壁を沿って暫し走ると検問所を見つけられた。
国境警備隊が城門を守り、検閲官が入国審査をしている。
日も沈みかけているため入国の手続きの為に並ぶ人々は少なかった。
すぐさま私達は入国審査の為の手続きに向かった。
私達はエルカサ王からインパ国元首への封書を検閲官に渡すと、あっさりと入国の許可がおりた。
「書状があって助かったわね」
「あぁ俺ら全員血まみれで、本来なら入国とか100%無理なやつだよね」
私も二人と同意見だ。
「それな」
「今日は日も暮れているので、ここから一番近いラッシー村で一晩お過ごしになってください。
私どもが宿の手配を致しますので」
そう言うと警備兵は部下に指示を出し、部下の案内の元近くの村で一晩を明かすことにした。
部下は私達と同じ年齢の気のいい青年であった。
「皆さんその年で使者として遣わされるなんてすごいです!
自分みたいな一般兵にはとても真似できません! 」
私達は青年から奇異な眼差しを感じた。
「すごいのはコイツだけだよー」
ケラケラしながらレオが答えた。
「なんたって勇者だからね。 」
レオがチラッとこちらを見た。
{ええ!あなたが勇者様なんですか!?
噂には聞いていましたけど、本当に勇者様は降臨なされたんですね! 」
青年からの視線はますます強まった。
「特別実感はないんだけどね。
たまたま巻き込まれただけさ」
私は青年の熱視線からの助け舟をイブに求めたが
「早くシャワー浴びたい…… 」
彼女が放ったのは無常にもこの一言だけだった。
宿につく頃には青年からの質問攻めで私はクタクタになっていた。




