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森の中にて【1】

私達は国外を出てインパの国を目指した。

「これじゃ何のための旅かわかんないな。

徒歩じゃなくて馬で旅できるだけマシだけど」

レオが悪態をついた。



「魔人と人間のハーフの私にとってはどうでもいいことかな。

私はユウマについて行くって決めてるし」

イブがあっけらかんと答えた。


「おっ!勇者様これは大胆な女子からのアタックですよー。

思春期男子にはたまらんですなー」

レオが茶化した。


「実際和解するのが目的で俺は旅を始めたわけだし、年寄の都合に付き合うのもカンに触るのは確かだけどね。

利用できるし、適当に従ってやるよ」

私はスルーして話を進める。


「役割を演じるだけさ。

そして最後は思い通りにさせてもらう」


「どうやって和解するのかは知らないけど、すべてが終わった後お前は王にでもなるつもりなの? 」

レオに問われて私は沈黙した。

私は人間に生まれて家族との平穏な暮らしに満足していた。


しかし、家族や友を守るため、前世で成し遂げれなかった事のために和解という道を選んだ。

力で両者を支配する事は容易いが、前世と同じ轍を踏まないとも限らない。

それに、魔人と人間が共生できるという証拠が私の目前にある以上それに賭けたいとも思った。


「どんな世界でもいいよ。

魔石製造の被験者にさせられそうになった私を助けてくれたあの時から、私はユウマを信じてるから」

そう言ったイブの笑顔に私は見惚れてしまった。


「イブに魔人の血が入ってるのも驚いたけど、結果的には便利なものゲット出来てラッキーだったよなぁ。

ユウマが魔石製造機に早変わりしてくれたおかげで、俺たちの成績歴代最高だったわけだし」

こいつの頭を一度殴ってやりたいと思った。


そんなやり取りをしていると、鬱蒼とした深い森の中でなにか怪しげな気配を感じた。

「囲まれてるねこれ」

普段はチャラけているがこういう時に鼻の利くのがこの男だ。


おそらく敵は20~30と言ったところだろう。

「多分ゴブリンだと思う。

ユウマは先行して囮になってよ。俺と、イブが数を減らすから! 」

男はそう言うと弓を構えた。


私は馬を先行させゴブリンの気を引き付けた。

レオの読み通り孤立した私をゴブリン達が取り囲む。

遠距離からの二人の攻撃で次々と数が減る。


私も二人の取りこぼした敵を確実に仕留める。

10ほど倒した頃だろう、ゴブリン達の気配は無くなったようだ。

二人と合流するため戻ろうとした瞬間別の殺気を感じた。


次の瞬間私を炎が襲った。

私は炎を斬り払い無傷であったが斬り払った炎で周囲の木々が燃えた。

そこに間髪入れずに電撃が襲う。


「流石に勇者は手ごわいな」

三人の人影が現れ、真ん中のリーダーであろう男が話した。

「お前たちは何者だ?」


私の問いに右の男が答えた。

「私達は魔人でも人間でもない存在」

左の男が続けて言った。

「魔王様に貴様を始末しろと仰せつかった」


ほう、やはり私以外に魔王が居るらしい。

「俺はお前たちを殺したくない。

引いてくれないか?」


分かってはいたがやはり三人は逆上した。

「こんな傲慢な野郎余計に殺したくなった! 」


「苦しまずに死ねたもの! 」


「あの世で自分の言動を後悔するんだな! 」

そういうと左右の男は同じように炎と電撃を放った。

回避しようとステップを踏んだ隙を見てリーダーの男が近接攻撃を仕掛けてきた。


「そこだ!」

叫びながら飛び掛かった男の鳩尾に一撃をくれてやり、同時に下から脳天に向けて剣を突き刺す。

串刺しの男をそのまま右側の男に投げつける。


勢いよく飛んできた肉塊の衝撃で腰を落としたところに蹴りをくれてやるとグェという声とともに骨の砕ける鈍い音が聞こえた。


最後の一人を始末しようと振り返ると、既に絶命していた。

「ごめん。邪魔した?」

弓使いが男の頭部から矢を引き抜き話した。


「いや、助かった。ありがとう」

礼を言い私達は馬を再び走らせた。


そして日も暮れる頃になったので、森の澄んだ小川の縁で一晩を過ごすことにした。


《私達は魔人でも人間でもない存在。》



《魔王様に貴様を始末しろと仰せつかった。》



先ほどの男達の言葉が頭から離れない。

私が元魔王であることは二人にすら教えていない。

新しい魔王について知る必要がある。


現状新魔王についてこちらは何も知らないが、あちらにはこちらの正体がバレている。

情報戦で大きく後れを取っていることは手痛かった。


「旅に出ていきなり魔人に出くわすって、魔王に勇者ってバレてんじゃねーの?」

焚火に木を投げ入れながらレオが言った。

「だろうな。俺が締め上げて魔王の居場所を吐かせる前に誰かさんが始末しちゃったから、敵の居場所はわからず仕舞いだな。」


「あっ、ひっでー!」

レオはわざとらしく頬を膨らませた。


「あの人たち私と同じだと思う。」

ぽつりとイブが言った。


「え?ハーフってこと?」

レオが目をしかめる。


「よくは見てないけど首筋に紋様みたいなアザが見えたもん。」


「てことは、魔王がハーフ魔人を操ってるってこと?」


「その言い方やめて。」

イブがぴしゃりと言うとレオはごめんと謝った。


二人の観察力は素晴らしすぎて、知らなくていいことまで知ってしまう。

私の正体もバレるのではないかと内心ヒヤヒヤする。

恐らくそう遠くない内にバレるのだろう。


しかしその時に二人が仲間として、友として受け入れてくれるだろうか?

考えたくもないほど怖かった。

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