来訪者
日も暮れ始めた夕刻時、隣町から帰宅した私と母はリビングでくつろいでいた。
「お茶でも入れましょうか」
と言って、母が立ち上がると、家の外で声がした。
どうやら来訪者がやってきたようだ。
応対に出た母は血相を変えて戻ってきた。
そして私に封書を差し出した。
「国王からの書状がアナタ宛に来たんだけど…… 」
母は落ち着かない様子で私が封を切るのを待っている。
私は身に覚えのない封書を開くと一通の手紙が入っていた。
ユウマ・リーベルト殿
この度貴公とその保護者及び後見人をエルカサ国王との謁見を許可する。
ついては明後日午前に迎えを寄越すので同乗されたし。
いかなる場合も拒否することは出来ず、拒否した場合反逆行為とみなされることを肝に銘じられよ。
「これどういうこと? 」
私は思わず言葉にした。
ぽかんとした僕に母は怒っているのか恐れているのかわからない表情で
「いったい何をしたの? 」
と問い詰められた。
「なにも。身に覚えがないよ」
「そう…… よね」
母は状況を飲み込めずにいた。
こんな田舎町の小市民を国王が呼び出すということなどありえない。
母が困惑するは当然だ。
私自身もなにが起こっているのか全く訳が分からない。
しばらくすると父が帰宅した。
書面を見せた父も困惑していた。
「最近身の回りで変なことが起こるのは偶然なのか? 」
父がポツリと吐いた言葉に私はドキッとした。
魔獣に襲われた事や、王に召集されるなど私の身に覚えがないことなのだが、それすらも覚醒したことに因果が感じられた。
尤も、一部の事件の主犯であることは事実なのだが。
連日の騒動で両親はすっかり疲れ切っていた。
「別になにも悪いことした覚えはないし、なにかの手違いだよ。
もちろん褒められることをした覚えもないけどね。」
私がそう言うと、父は微かに笑って
「そうだな。謁見は避けられないし、王様と話す機会なんて一生に一度あるかだもんな!
観光気分で会いに行くか! 」
父は意気揚々と言ったつもりだろうが、あきらかに無理をしているのは傍目でわかった。
「なるようになるわよ」
母も父の気持ちを汲んで強がった。
私の目には母は半分自分に言い聞かせてるようにも映っていた。