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何も言わずに

作者: 水鏡 日蔭

通勤の時間ほど辛いものはない

とにかく余計なことを考えてしまう。

それは今思えば余計な事ではなくてむしろ真実に近い心境だった。


多分こんな思いをしている人はたくさんいるだろう

会社の近くまで行ってどうしても門を通過することができなくて帰ってしまうのは自分だけではないはず

そう思いたい


たとえその時休んでも根本的には変わらない

原因はわかっているじゃない

わかっていても決断できなかった


時間が経つのは早い

そろそろ限界なんだけど、どうしたらいいんだろう

迷いだけが重なる


喉が乾く

妙に喉が乾く


人混みから抜け出し

人のいない方へ足を運んでちょっと振り返る

それを繰り返しながらその日はあきらめた


家に帰って猫に尋ねてみる


どうしたらいいのさ


猫はなぜこんな時間にいるのか理解できずに不思議そうに見つめている


答えはわかっている

それだよ、それ

でもそれは自分で探し出すしかないんだよ

自分で決めないと心は晴れないんだよ

答えはわかってるのだから

少しでもそれに近ずくこと

それが努力なんだ


そんなことは猫は言ってくれない

きっと少しもわかっていないだろう

自分の言葉をきっと猫は代弁しているんだ


やりたいことって何

本当の自分は何

今もう一度考えよう

もう一度見渡してみよう

答えはないかもしれない

足元に落ちているかもしれない

そう思いながら自分を見つめた

ほんの小さなきっかけなのか、答えではないかもしれない何かを見つけた

いや、それは見つけたのではなくて忘れていたものなのかもしれない


明日はまた通勤に困るかもしれない

それでも今日よりましな希望が明日にはある

希望?

希望なんて大げさなものじゃないな


今も猫は自分のそばで見つめている

何も言わずに




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