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大魔導師の育成  作者: 春夏秋冬
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港近くの繁華街 前半

「そういえば、他の3人はいいのか?というか、なんでサラちゃんが付いて来てるんだ?」

5人でビオーラが演奏する店に向かう途中、ふと疑問に思ったのでサラに尋ねた。

「あの3人には冒険者ギルドに依頼完了の報告を頼んだ。完了の報告は1人行けばいいだろ。今日泊まる宿決まってないからハリムっちに付いていって『月夜亭』に泊まろうと思って。高い宿なのか?」

「報酬受け取らなきゃだろうに。『月夜亭』は高い宿じゃないよ。普通じゃないか?飯が上手いから人気があるんだ。部屋空いてるかな?」

「あ、報酬のこと忘れてた。明日アレンにもらおう。そんな宿ハリムっちも部屋取れるのか?」

アレンってどれだ?

「私は古い知り合いだからな。常に1部屋取っておいてもらっているんだよ。」

「じゃあ、空いてなかったらハリムっちの部屋に泊めてくれ。」

「おいおい。お前もかよ。私はハーフエルフだよ?」

「ナタリアちゃんとエドくんも一緒なんだろ?大丈夫だよ。」

そんなこと言いながら顔が赤い。大丈夫か?私は大歓迎だが。

「まあそうだが。」

「あらあら、サラは積極的ですね。」

「せ、積極的って…え、あ、そのあわあわあわ…」

またあわあわ言い出した。

「あら、かわいい。」

そんなことを歩きながら話している。繁華街に入ると至るところの飲み屋からガヤガヤ賑やかな声が聞こえてきて、道ではまだ暗くなったばかりなのに酔っ払って管を巻いている男を何人も見掛けた。付いてきてよかった。繁華街の端の方にあるビオーラが演奏する『シーサイド』というちょっと小洒落た飲み屋の前にやってきた。店の中から明かりが見える。

「ここみたいね。」

「初めて来たのか?」

「ええ、キャリアンの商業ギルドで歌い手募集を見付けたので応募したのよ。」

「それにしては道のりがスムーズだったが?」

「シャワラムには何回も来たことがあるのよ。」

「なるほど。この店なら何回か使ったことがある。店主にひとこと言っといてやろうか?」

「ふふふ。大丈夫よ。ありがと。こう見えてもプロですもの。じゃあ行くわね。みんなもありがと。じゃあまたいつかね。」

そう言って店の入口の引き戸を開け中に入っていった。


「さて、どうする?宿に行く?」

サラが聞いてきた。

「その言い方は私を誘ってるみたいだよ?」

「え、あ、ちがっ、あわあわあわ。」

またあわあわ言い出した。

「そうだな、この近くにロマニコフの店があるから寄っていこうかな。」

「ロマニコフ?ロマニコフロマニコフ…なんか聞いたことあるなぁ。」

「ああ、評議員のロマニコフだから聞いたことあるだろうね。」

「げ、ロマニコフ商会か!大商会じゃないか。あたし入ったことない!」

「そんなに高いところじゃないよ。私が卸した魔導具なんかも置いてある。私がいるから大丈夫だよ。行こう。」

3人を促してロマニコフ商会に向かった。ロマニコフ商会はシャワラムにはこの港近くの繁華街と中央の商業ギルドの近くに2店舗ある。中央の方が本店だ。


ロマニコフ商会の前にやってきた。大抵の店は暗くなると閉めるのだが、ロマニコフ商会は営業していた。入口の立派なドアを引いて開ける。カランカランカランとドアに付けられている小さな鐘が小気味良い音を鳴らす。

『いらっしゃいませ。』

店の中にいた小綺麗な格好をした女性2人と初老の男性1人が綺麗なお辞儀をしながら出迎えてくれる。店の中は大量に光を出す魔導具を使っているようでとても明るい。広い店内の両サイドと中央に腰の高さくらいの台が置かれ魔導具が綺麗に並べられている。

「ほえー。」

サラは呆けている。放っておこう。

ナタリアとエドワードはフードを外し店内をキョロキョロ見回している。騎士は撃退したが、まだ暗部とかがいるだろうから今までフードを被らせていた。

「こういう店は初めてかい?」

「あの…はい。商店自体に入るのが初めてです。」

「ボクも。」

まあ貴族だったんだから店にはなかなか行かないよな。

「こんな高級な店、普通の店だと思わない方がいいよ。わぁこの棒の先に宝石付いてるやつ、白金貨1枚って書いてあるぅ。そんなに高くないなんて嘘っぱちだ。ほえー。ほえー。」

サラは中央の台の上に置いてある魔導具を見ながらほえほえうるさい。

「ああ、それか。それは私が作ったものだよ。宝石部分に風系の魔法を付与してある。風系の上級魔法まで使えるようになる。」

海洋性の魔物は火系や土系、もちろん水系の魔法に耐性があるやつが多い。その変わり風系の魔法にはめっぽう弱い。ここでは需要があるだろう。売れてないけど。

ちなみに火土風水で魔法の基本四種と呼ばれている。

「じょ、上級魔法!?強さはお金で買えるんだね。ぐすん。」

魔法の強さは、初級、中級、上級、最上級とありその上にいろいろある。最上級がなぜ最上じゃないかというと昔は最上だったのだ。シャーロットが生まれたころの800年ほど前、魔法は最上級までしかなかったらしい。この800年の間、魔導師たちの血と汗と涙の研鑽の結果最上級を越える魔法が数多く生まれたのだ。ちなみに何級と分類されるのは基本四種のみ。他の魔法は使い手が少なすぎるため等級は存在しない。


「あのお客様、失礼ですがハリム様ではございませんか?」

店員の初老の男性が話し掛けてきた。

「ああ、そうだよ。会ったことあったかな?」

「はい、何度か。いつもご贔屓にありがとうございます。」

うむ。そう言えば見たことある気がする。男の顔を覚えるのは苦手だ。

「今回はどういったご用件で?」

「ん?ああ、ロマニコフいるかな?」

「ロマニコフとはどちらのでございましょう?」

「え?ロマニコフって何人かいるのかい?」

「はい。会頭のアンドレイ=ロマニコフとその息子のアシュレイ=ロマニコフがおります。」

息子がいるのは知っていたが働き始めたのか。

「アンドレイ=ロマニコフの方。」

「会頭は今こちらにはおりません。本店にいると思われます。」

「そうか。では、明日午前中に訪ねると伝えてもらえるかな?」

「承知いたしました。あの、アシュレイの方はおりますので、挨拶させていただけないでしょうか?」

「ああ、構わないよ。」

「少々お待ちください。」

初老の男性はカウンターの奥に走っていった。

「若、ハリム様がお見えです。」

「ハリム?ハリム…大魔導師ハリム!」

奥からガタンバタバタ音が聞こえてきて、20歳くらいの長身のひょろっとした男が走り出してきた。うん、どことなくロマニコフに似ている。ロマニコフはがっちりしているが。ロマニコフじゃ分かりにくいか、アンドレイの方。

「ハリム様、ようこそおいでくださいました。私はアシュレイ=ロマニコフと申します。以後お見知りおきを。」

「ああ、よろしく頼むよ。」

「今日はどうされましたか?」

「アンドレイの方に用事があったんだけどもう伝言頼んだからな…ナタリア、エドワードくん君たち武器は持ってるかい?」

「はい、ナイフを持ってます。」

ナタリアとエドワードは腰の後ろにベルトで止めてあったナイフを鞘ごと外し渡してきた。ナイフを鞘から抜いてみる。

「きれい…」

サラは言うが、確かに宝石が散りばめられていて綺麗だが、これは宝剣。魔法を放つ媒介としてならいいが武器としてはちょっともろい。1回刺したらもう使えないだろう。親がお金に変えるために持たせたのだろうか?

「ナタリア、魔法は得意?」

「いえ、火風水が初級だけです。」

まぁ一般の子供はこんなもん。三種使えるだけでもすごい。

「武器は?なんか習ってた?」

「細剣を習っていました。」

「じゃあ、レイピアを1つもらおうかな。」

「はい。」

「サラちゃん。」

「は、はい。」

「武器は杖?」

「うん、魔法学校で作ったやつ。」

サラはそう言って腰の横に止めてあった杖を見せてくれる。木製で細く短くいかにも手作りという感じで不恰好だ。

「サラちゃんあんまり器用じゃないね。」

「う、うるさいなぁ。買い換えるお金がないんだよ。」

「サラちゃん魔法はどのくらい?」

「火と土が初級で風と水が中級。これでも学校じゃ優秀な方だったんだ。」

「サラちゃん、年齢は?」

「17だよっ。」

17歳でこれなら確かに優秀だ。一般の人族の魔導師は中級が1つでもあればまぁ使えると言われている。ベテランになると上級が1つ、人生の晩年になんとか最上級に届くかという感じ。魔法を極めるには時間が掛かる。人族の寿命では難しい。

私サラちゃんが好きかも。私の理想が詰め込まれている気がする…

いつかサラちゃん視点の話が書きたい。

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