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大魔導師の育成  作者: 春夏秋冬
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シャワラム到着

馬車の近くに転移で戻ると全員が馬車の外に出ていて私たちが落ちて行った方角を見ていた。私が転移するのは見えなかったのかな?

みんなの背後に到着してしまった。恥ずかしい。

「やぁただいま。」

「えっ。」

後ろから声を掛けるとみんなびっくりして振り返り女性3人が私に近づいてきた。その中のサラは走り寄り私に飛び付いてきた。私たちこんなに仲良かったかな?

「やぁサラちゃん。」

「お、おかえりハリムっち。超すげぇっす。なんなんすかあの強い土ゴーレム、なんなんすかあの4人で飛んでった魔法。」

サラは飛び付いた勢いのまま興奮気味に質問してくる。あれこんな口調だっけ?一応敬語を使おうとしてくれているのかな?

「なんだよハリムっちって。普通の土魔法と普通の重力魔法だよ。」

「ハリムっちがサラちゃんって呼ぶんでハリムっちはハリムっちだ。両方ぜんぜん普通じゃないっす。」

「ご無事でしたかハリムさん。良かったです。とても高いところから落ちたように見えましたが。」

サラと話していると吟遊詩人の女性が私の左腕を掴んで話しかけてきた。

「あれは落ちたんじゃなくて落としたんだよ。心配かけたかな?ごめんね。」

「ふふふ。ご無事で何よりです。わたしの名はビオーラと言います。以後お見知りおきを。」

「ああ、ビオーラね。とてもいい名前だ。美しい君にピッタリだ。」

「ふふふ。」

「あ、あの。」

ビオーラと話していると今度は2メートルほどの場所に立ち止まっていた馬車で隣に座っていた女の子が話し掛けてきた。私はくっついていた二人を優しく離し女の子の前に行き片膝をついて目線を合わせる。女の子は外套のフードを外している。白い肌に緑色のストレートヘアに大きなつり上がり気味の目に彫りの深い顔立ち。美人さんだ。

「私はイカルディ王国ベロン伯爵家長女ナタリア=ベロン…だった…者です…後ろにいるのが弟のエドワード…」

言い始めは元気が良かったが、終わりの方は消え入りそうな声になりうつ向いてしまった。私は右手でナタリアの頭を撫でる。

「いろいろあったんだね。詳しい事情はシャワラムの街に着いてから聞こう。力になるよ。」

「はい…助けていただきありがとうございます…」

ナタリアはそう言いながら泣いてしまった。

「お客様、本当にありがとうございました。」

男性陣も近付いてきて、御者の男性がお礼を言ってきた。私は右手を上げて了承の合図を出す。

「ハリムさん…でしたか。私は商人のバジと申します。助けていただきありがとうございます。これも何かの縁だ。街についたら少し商売の話をさせていただけませんか?」

今度は商人風の男性だ。商人だったらしい。あの鞄の中身のことだろうか?

「ああ、構わないよ。2週間ほど『月夜亭』というところに泊まる予定だから訪ねてきてくれ。不在だった場合はフロントの女将さんに伝言を預けてくれ。あそこの女将さんは古い知り合いだよ。」

「かしこまりました。」

「ハリムさんありがとう、マジ助かった。」

「いやほんと、死ぬところだった。」

「す、すいません。攻撃したのは不味かったかな?」

今度は冒険者の男3人だ。

「いや、仲間がやられたんだ。仕方ないだろ。でも少し力量差があるようにみえた。二人気絶していたが殺されたわけではなかった。私がいなければ皆殺しにされていただろう。あそこはグッと堪えて話し合いで解決した方がよかったかもしれないな。まぁこれも経験だよ。精進しなさい。」

『はい。ありがとう。』

私は3人との話を終え、最後にキョトンと立っているエドワードの元に行った。

「エドワードくん。」

「はい。」

エドワードと目が合う。そしてふと気付いた。瞳の中に薄い五芒星を見つけた。これがある人物は英雄になると言われている。これが狙われた理由かな?

「街に着いたらお姉さんと私について来なさい。悪いようにはしないから。」

「はい。」

「では、そろそろ出発しようか。もう日が沈み始めている。このままだと明るい内に着かない。」

『はいっ。』

みなで馬車に乗り込みシャワラムに向かうのであった。


シャワラムの街に到着したのは暗くなってからであった。シャワラムの街に外壁はない。一応街の入口に兵士が二人立っているがお金をとられることはない。岬の一番端にあり、他国から離れているため内陸から攻められることはほぼないことと、昔から魔物がほとんど出ないためである。その変わり海の方にはよく海洋性の魔物が出現するため冒険者の仕事はある。


シャワラムの発着場に停まった馬車を降りた。シャワラムの発着場は街の真ん中にある。すぐ近くに領主館と商業ギルドがある。クリミド商国は商人の国でトップは商人たちであるが、評議員に任命された役人が何人もいて普段はその人たちが政治を行っている。御者の男性が話し掛けてくる。

「今回の件、商業ギルドに報告しますんで使者がハリムさんを訪ねると思います。『月夜亭』でしたな。」

「ああそうだよ。ではね。じゃあ、ナタリア、エドワードくん行こうか。」

「ハリムさん!」

「ハリムっち!」

子供二人を連れて歩き出そうとすると、リュートを抱えたビオーラとサラが走り寄ってきた。なんか二人仲良さそうだ。あのあと馬車でも隣に座って何かキャイキャイ話していた。

「ハリムっち。このヘアピン今気付いた。もらっていいのかな?」

「ああ、構わないよ。サラちゃんは額を出していた方がかわいいよ。私が作った魔導具だ。1回だけ薄い魔法障壁が張れる。攻撃魔法を感知したら自動で発動するがたいした物じゃないよ。物理攻撃は全く防げないしね。」

「え、魔導具なのか!知らなかった。ありがとう。」

「おいおい。サラちゃんも魔導師なんだから道具が持った魔力は感知しないと。あ、魔法少女だったか。」

「え、あ、その、うん、魔法少女だ。」

サラは顔を真っ赤にしながらニマッっと笑った。うん、かわいい。

「暗くなったから夜道が怖いわ。お店まで送ってくださらない?」

「ああ、そうだね。構わないよ。ナタリアとエドワードもいいかな?あ、そうだ、二人とも右手を出して。」

「ん?」

サラとビオーラは私に右手を差し出す。私は亜空間から大きめの青い宝石の付いた指輪を取り出し二人の右手の人差し指にはめてやる。二つとも同じデザイン。

「あら。」

「きれい…」

「これも魔導具だよ。命の危機があったらこの指輪に魔力を込めて宝石部分を床に押し当てなさい。きっとその問題を解決してくれるから。今回出会ったのも何かの縁だ。二人にあげるよ。」

効果は秘密。

「え、いいの?すげぇ、やったー。」

「あら、ありがと。左手の薬指でもよろしかったのに。」

「おいおい。私はハーフエルフだよ?」

「ふふふ。伝説の魔導師のハーフエルフ。危険な恋の臭いがするわ。」

そんな会話をしながら私たち5人はビオーラの店がある港近くの繁華街に向かった。

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