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大魔導師の育成  作者: 春夏秋冬
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リド村の騒動

馬車でリド村の近くまでやって来た。辺りは一面の小麦畑が広がっている。

「すごいな。」

「ここらへんはクリムドの食糧庫って言われてるんだよ。うちも小麦農家だ。」

「魔物は出ないのかい。」

「草食の魔物くらいかな。ビッグボアとかテイルラビットとか。」

まぁ、その2種類は大陸中どこにでもいて、人の重要なタンパク源になっている。

「テイルラビットはあれだがビッグボアは村で狩るのは大変じゃないか。」

「そうでもないみたい。リド村ではどの家でもカーバンクルを飼っていて、ビッグボアが出ると村の男たちがカーバンクル連れて狩りに行くんだよ。」

「各家にかい?」

カーバンクルって言うのはウルフ系の魔物を小型にして可愛らしくしたような魔物で、賢く人になつく。小型だがグレーウルフと強さは変わらない。種類によっては魔法を使うのもいるらしい。ペットと言えばカーバンクルくらい流通しているがなかなか高価なのだ。

「うん。村を開いたときに国から支給されたのを村で繁殖させたんだよ。」

「それはすごいな。」

カーバンクルの繁殖は難しいと聞いている。それを成功させているなら一大産業になるんじゃないだろうか。

「ここらへんからうちの畑だよ。」

サラの実家の敷地内に入ったようなので馬車を降りる。馬車にはこれで帰ってもらう。二人で歩いてサラの実家に向かったのであった。


小麦畑に囲まれた道を少し歩くと1軒の家が見えてきた。

「ワンワンワンワン」

カーバンクルの鳴き声だ。

「あ、サラ姉ちゃんだ。」

「サラ姉ちゃんが男連れて帰ってきたー。」

10歳くらいの男の子二人とカーバンクル1匹が庭から私たちを見付けたみたいだ。二人の男の子の顔はそっくりだ。さぁ、いよいよだな。

「あ、ジル、バル!ただいまー。大きくなったね。」

「おかえりー。」

二人と1匹が駆け寄ってきた。

「お前は誰だー?」

「ああ、こんにちは。ハリムっていう。サラお姉さんの婚約者だよ。」

「婚約者ってなんだ?」

「うまいのか?」

うむ。まだ難しいか。田舎の方では婚約ってこと事態がなかなかないしな。

「ジル、バル。父ちゃんと母ちゃんと兄ちゃんいる?」

「母ちゃんはいるよ。」

「父ちゃんと兄ちゃんはペスを連れてビッグボア狩りに行ったー。」

ちょうどビッグボアが現れたみたいだ。

「あら、サラじゃないか。おかえり。」

家の中からぽっちゃりとした中年の女性が現れた。背が低く、何処と無くサラに似ている。

「あ、母ちゃん。ただいまー。」

「なんだい。そこのハーフエルフは?」

「初めまして。魔導師のハリムと言います。」

「初めまして。なんだい。サラを騙してるんじゃないだろうね。」

「いえ、そんなことは決して。」

やっぱり、世間のハーフエルフの印象は悪いな。

「母ちゃん、そんなわけないだろ。そんなことより父ちゃんは?大丈夫なの?」

「ビッグボアならいつものことさね。でも朝早く出てのにまだ帰らないんだよ。ちょっと遅いかね。」

「朝早く?もう夕方だよ?」

「んー。遅いやね。」

確かに遅いな。ビッグボア相手には掛かりすぎだ。

「ハリム。心配。見に行っていい?」

「ああ、もちろんだ。」

「母ちゃん。場所は?南の森?」

「ああ、そうだよ。サラ行ってくれるのかい?」

「うん!」

「大丈夫なのかい?」

「うん。あたし、こう見えてもB級の冒険者なんだよ。」

サラ、もうB級になったのか。知らなかった。この前、ジークたちと旅させたときかな。なかなか強い魔物や盗賊と戦ったみたいだからな。

「ハリム!お願い。」

私はサラをお姫さま抱っこにすると空中に浮かび上がった。

「わー。飛んだ。」

「すげー。」

二人の弟が驚いているな。

「少し見て来ます。サラは私が守ります。」

私はサラの母親にそう伝えると南の方角に見える森に向かって飛んだのであった。


「あ、あそこ!人が倒れてる。」

飛んでいると、森の入口付近に人が倒れているのを発見した。近くに着地する。

「バール兄ちゃんだ。大変!」

着地した瞬間、サラが倒れている人に駆け寄った。お兄さんみたいだ。背中に3本の深い傷があり気を失っている。これはビッグボアの傷じゃないな。ベア系かな?

「水の癒し!」

サラが回復魔法を掛けているが、傷が深すぎるな。

「サラ、変わるよ。」

「うん、ありがと。」

私はサラの兄に極大の水の癒しを掛ける。傷がみるみる塞がる。

「んん…」

「気が付いたかい。血を流しすぎている。この薬を飲みなさい。」

回復魔法では傷は治るが流した血まで戻ってくるわけではない。こういったときにはシャーロット印の薬がとても良い。薬を口に押し込み、コップで水を飲ませる。

「んんん…ああ、サラか…あなたは?」

「ああ、私は魔導師のハリムという。」

「そんなことより、バール兄ちゃん!何があったの?父ちゃんやサイル兄ちゃんは?無事?」

サラがバールに詰め寄る。

「ああ、逃げるビッグボアを追って森の深くに入りすぎた。レッドベアが出たんだ。」

「レッドベア…」

レッドベアか。B級や黄級の冒険者のパーティーが対応するレベルだな。カーバンクルがいても村で対応するのはキツいだろう。

「みんなバラバラに逃げたんだ。レッドベアはオレを追い掛けてきたから、他のやつらは大丈夫じゃないかな。」

しかし、もうすぐ暗くなる。夜の森は危険だ。

「サイルに付いてマリも来ているんだ。心配だよ。」

「え!?マリも?」

「マリって?」

「マリはあたしの2歳年下の妹だよ。」

女の子もいるのか。急がないとな。

「サラ、きみはここで森から逃げ出てくる人たちを待って治療をたのむ。私が森に行ってくるよ。」

「うん。ハリム、気をつけてね。」

「レッドベアに後れは取らないさ。それよりも暗くなるから時間との戦いだよ。」

「うん。ハリム、ありがと。」

「ああ。」

私は二人を置いて森の上空に飛び上がったのであった。


森の上空を飛んでみたが、木の葉っぱが生い茂り森の中を見ることは出来ない。耳をすませる。私たちの聴力は人族の5倍。カーバンクル危険が迫るとよく鳴くのでその声を拾えないだろうか。

「ワンワンワンワン」

微かにカーバンクルの鳴き声が聞こえてきた。声のする方向に飛び、森に飛び込む。いた!レッドベアと腰を落とした中年の男性の間でカーバンクルがレッドベアに向かって吠えている。

「こっちだ!」

私は声を出してレッドベアの注意を引く。こっちを向いた。よし。空中で魔剣ジュピターを抜き放つ。視線が逸れた瞬間、レッドベアの足にカーバンクルが噛み付く。勇敢なカーバンクルだ。

「ペス!危ない!」

腰を落としている男性が叫ぶ。あれがペスか。ということはあの男性がサラのお父さんかな?

「グゥラーーーー!」

レッドベアが雄叫びを上げながら前足を振り上げる。だが遅いな。私は魔剣ジュピターを横凪ぎ一閃、レッドベアの首を飛ばせたのであった。


「クゥーンクーン」

着地した私にペスが擦り寄ってくる。かわいい奴め。

「よーしよし。主人を守ったんだな。勇敢だったぞ。」

レッドベアの死体を亜空間に放り込んだあと、片膝を付きペスの頭を撫でてやる。

「ありがとうございます。助かりました。あなたは?冒険者ですか?」

ペスと戯れていると男性は立ち上がって近付いてきた。

「私は魔導師のハリムです。お怪我はありませんか?」

「はい。ペスのお陰でなんとか。」

「他にも森に入ったと思うのですが、他の人は知りませんか?」

「バラバラに逃げたからね。息子のバールが背中をやられたのが見えた。」

「ああ、彼なら森の外で治療しました。大丈夫です。」

「そうか。それは良かった。」

「サラも来ています。森の外に出ましょう。もうすぐ暗くなります。」

「そうだね。ここは森の何処だろうか?」

「けっこう奥ですね。」

「そうか。困ったね。」

「大丈夫です。飛んでいきましょう。」

「飛ぶ?」

「はい。重力魔法が使えますので。浮かせますよ。」

「重力魔法?ああ、よろしく頼むよ。」

私はサラの父とペスを重力魔法で浮かせる。ペスは初めジタバタしていたが、大丈夫だと分かったのか大人しくなった。

「大丈夫ですか?森の上空まで浮かせますよ。」

「ああ、大丈夫だ。これが重力魔法…」

私は木の枝にサラの父とペスをぶつけないように慎重に浮かび上がらせ、サラの元に飛んだのであった。


「あ、父ちゃん!ペス!」

森の入口付近にはすでに10人くらいの男性と数匹のカーバンクルが集まっていた。着地するとサラが駆け寄ってきた。

「おかえり。サラ。」

「うん、父ちゃん、無事で良かった。」

サラがサラの父に抱き付く。

「サラ、全員揃ったのかい?大きな怪我の人は?」

「みんなかすり傷程度だったからあたしの魔法で治せたよ。まだ、サイル兄ちゃんとマリが戻ってないの。あとは…父ちゃん、どう?」

「ん?ああ。」

サラの父が戻ってきている顔を見渡す。

「ああ、サイルとマリだけだね。」

「では、また森を探してきます。」

私はサラの兄と妹を探すため、再び森の上空に飛び上がるのであった。

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