ビオーラの旅立ち
『フジ』の城でミツムネ殿と話をして在庫のコメを20俵ほど譲って貰えた。だいたい1年間で1人1俵ほど消費するらしい。うちは育ち盛りが多いからな。助かる。代わりにマジックアイテムを大量に渡した。
『フジ』の城からシャワラムのロマニコフ商店に飛び、ロマニコフにいつもの10倍の食料を依頼した。用意に1週間は掛かるということなので、後日取りに来ることにする。
「ビオーラ、いるかな?」
「ビオーラさん、こんにちは!」
ロマニコフ商店で用事を済ませた私とサラはビオーラの部屋を訪れた。
「あら、ハリムさん。今回はサラちゃんも一緒なのですね。」
ビオーラは快く出迎えてくれた。
「ああ、今からサラの両親に婚約の挨拶をしに行くんだ。」
「えへ。」
「あら、羨ましい。」
「ビオーラの両親は?」
「母はまだ現役で流しの吟遊詩人をやっているのでどこにいるか分かりません。父は誰か教えて貰ってません。」
「そうか。機会があれば挨拶したいな。」
「ふふふ。ありがとうございます。」
「あれ?部屋がずいぶん片付いているね。荷造りもしてあるしどうしたんだい?」
部屋は綺麗に片付けられていた。
「ええ。シャワラムには長い間居ましたが、そろそろ移動しようかと。」
「そうなんだ。どこへ行くんだい?」
「決まっていませんが、『迷いの古城』があるヘルミア王国でも目指してみようかと…」
「ほぅ。転移で送ろうか?」
「いえいえ。途中の街で歌うのも楽しみのひとつなのです。馬車などでゆっくり移動します。」
「心配だなぁ。ひとりで大丈夫かい?」
「大丈夫ですよ。今まで怖い目に合ったのは、ハリムさんに助けて頂いた2件だけですから。」
今まで怖い目に合わなかったのが不思議だ。こんなに美人なのに。
「ヘルミア王国まではずいぶん遠いよね?」
「ああ、人族領の東の端から西の端だからね。」
「馬車など使っても半年から1年くらい掛かるでしょうか。私のヘルミア王国到着が先か、妊娠が先か…ふふふ。」
サラの質問に私とビオーラが答える。ビオーラは楽しそうだな。旅が好きなんだな。ここにも旅好きがひとり…
「いいないいな。行きたいな。」
「あらあら。いいのですか?」
「ハリム?ダメ?」
「サラの好きにすればいいよ。ビオーラだけでは心配な部分もあるし。」
「やった!ビオーラさんよろしくね。」
「あらあら。ふふふ。よろしくね、サラちゃん。」
「3日に1回くらいは呼び出してくれよ。」
「もちろん!」
「ええ。ばんばん呼び出しちゃいます。」
あっという間にサラが付いて行くことが決まってしまった。
「では、とりあえずランペドまで飛んでそこからサラの生まれた村まで馬車で行こうか。」
「挨拶している間はランペドで待ってます。」
「付いてこないの?」
「挨拶は二人だけの方がいいですよ。」
「そんなもんか?」
「そんなもんかです。もう、ハリムはそういうところはずれてますね。」
「ごめんごめん。では、ランペドに飛ぶよ。」
「「はい。」」
ランペドに転移で飛んだのであった。
「ここは?」
「ああ、ランペドの私の家の私の部屋。」
ランペドの屋敷にやってきた。
チリンチリン
机の上の呼び鈴を鳴らす。
「旦那様!お帰りなさいませ。」
少し待つとクリスが部屋にやって来た。
「やぁ、クリス。」
「クリスさん、こんにちは!」
「こんにちは。初めまして。」
サラとビオーラも挨拶をする。
「サラさんと…そちらのお嬢さんは?」
「ビオーラと申します。」
「うん。私の婚約者のビオーラだ。」
「婚約者?旦那様、ついに結婚するんですか?」
「ああ、サラとビオーラと、あとアンナとシャーロットとマリアムとミザリとな。」
「それはそれは。おめでとうございます。結婚式は是非呼んでくだされ。」
「ああ、もちろん。」
「ねぇねぇ、ハリム。」
「なんだい?サラ。」
「結婚式ってするの?」
「ああ、するよ。ひとりひとり、別々にするつもり。」
「うへっ。貴族様みたいじゃないか。」
きちんと結婚式を挙げるのは、貴族や金持ちくらいだからな。まぁ私も金持ちってことでいいよな?
「緊張するー。」
「ええ、私も式があるなんて思ってませんでした。」
「いやかい?」
「ううん、凄い嬉しい。」
「はい、幸せです。」
それは何よりだ。
「ところで今回はどういった要件で?」
「ああ、サラの両親に挨拶と食料の買い出しだな。」
「ずいぶん人数が増えましたからな。」
「ああ、それでサラと出掛けるからビオーラを泊めてやってくれ。一晩か二晩くらいかな。」
「それはお安いご用ですな。」
「クリスさん、よろしくお願いします。」
「ええ、こちらこそ。ビオーラさん。」
こうしてビオーラをランペドの屋敷に残し、サラと西門へ向かったのであった。
「ねぇねぇ。どうやって行くの?」
「馬車を使おうか。」
「うん、そうだね。」
「村の名前は?」
「リド村だ。」
サラと西門に向かって歩きながら話す。飛んで行ってもいいが、それでは風情がないしな。
「リド村は馬車でどれくらい?」
「んー。たぶん半日くらいかな。」
「なんだよ、たぶんって。」
「だって、魔法学校を卒業した時に帰ったっきりなんだもん。」
「そんなに帰ってないのか。3年ぶりくらい?」
「うん、そんなもんかな。」
「両親が寂しがってないかい?」
「うちは10人兄弟だから、寂しく思う暇なんてないよ。」
「10人兄弟の上から3番目なんだっけ?」
「うん。上に兄が二人、下に弟が4人妹が3人だね。」
サラの両親は子宝に恵まれたな。
西門近くの馬車屋で馬車を借りた。屋根付きのそこそこいいやつだ。御者のひとり頼んだ。
馬車に乗り込み、リド村に向けて出発する。
「なんか、いいね。二人でこういうのも。」
「ああ、こういう時間をもっと増やしたいな。」
馬車に揺られながら二人で話す。
「ちょっと緊張してきたな。」
「へぇ、ハリムでも緊張するんだ。」
「緊張するさ。」
「へへへ、なんか嬉しいな。」
「私が緊張していることがかい?」
「うん。それだけ、あたしとの結婚を大切に思ってくれてるってことだよね?」
「ああ、当たり前じゃないか。」
サラとの結婚ほど大切なことなんてそうそうないさ。
「あたしが魔法学校に入学する前、母ちゃんが「ハーフエルフだけは連れて帰ってくるんじゃないよ。」って言ってたよ。」
「マジか…」
「ふふふ。ハリムなら大丈夫だよ。」
「そうかな。ありがとう。」
緊張した私と幸せそうなサラを乗せ、馬車はリド村までの道を進むのであった。
短いです。すみません。




