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大魔導師の育成  作者: 春夏秋冬
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買い出し出発

ソフィアとアリーチェが『迷いの古城』に来た日から2週間が経った。弟子たちもアンナのお腹の子も順調に成長している。今まであまり目立たなかったアンナのお腹は誰が見てもわかるほど大きくなった。

この2週間で変わったことは、ビオーラが頻繁に私を召喚してくれるようになったことかな。2週間で2回、甘い夜ではなく、夜はビオーラが仕事なので甘い昼を過ごした。

『迷いの古城』で弟子たちと新しい生活をスタートしてから1ヶ月が過ぎたということになる。1ヶ月を過ぎるとひとつの問題が発生した。それは食糧不足。まぁ、私ひとりの半年分なんてこの人数じゃあっという間だよな。

「というわけで、シャーロット。また買い出しに行ってくるよ。」

「何が「というわけで」か存じませんが、仕方ありませんわね。貴方たちに合わせて吸血鬼たちの普通の食事をしておりますから。」

「今回は1週間ほどで帰るよ。」

「承知しましたわ。今回はきちんとミザリに挨拶してから出掛けてくださいませ。もうあんな心配するのはまっぴらですわ。」

「ああ、そうする。」

食糧を買い出しに行くに当たって、ついでというか、そっちがメインかもしれないがやっておきたいことがある。

「サラ。サラの両親に婚約の挨拶に行こう。」

「え!?やっぱりした方がいいかな?」

「そりゃいいだろう。こういうことはしっかりしておこう。」

「うん。わかった。」

サラも連れて行くことなった。

「アンナはどうする?『月夜亭』に顔出す?」

「ううん。ここに残るわ。ここの食事作るのやりがいあるし。家を出てまだ2週間だしね。」

「そうか。では、食材は全部出していくよ。あんまり無理するなよ。」

「うん、分かってる。肉類は凍らせておいてね。」

この2週間でアンナの働きぶりに誰もが舌を巻き、今では完全に調理場を支配いている。さすがアンナだ。

「ミザリ。1週間ほど出掛けるけど今回は大人しくしているんだよ。」

「はいなのです。キスしてほしいのです。」

ミザリを抱き寄せて唇を重ねる。

「わらわにはそういうのはないのか?」

「なんだマリアム。寂しいのか?」

「うむ。寂しいぞ。早く接吻をしろ。」

「分かったよ。」

マリアムも抱き寄せて唇を重ねる。こいつも寂しがり屋なんだな。

「ジークを1週間、『フジ』のシロウ殿のところに預けてくるよ。」

「承知しましたわ。わたくしも接吻を。」

最後にシャーロットとと唇を重ねたあと、サラとジークを連れて『フジ』に飛んだのであった。


「ここが『フジ』か。なんか独特だね。」

「ランペドとはぜんぜん違うなぁ。」

『フジ』の国の広場に飛んでから、抜刀術道場まで歩く。『フジ』の国では、まだここしか転移出来ない。まぁ、観光するにはちょうど良いが。道場までもそれほど遠くないし。二人は初めての『フジ』なのでちょうどいいな。


『フジ』の街並みを抜け、武術道場の横を通り越して抜刀術道場にやって来た。

入口から中を覗くと、キキョウと数人の弟子が声を出さず静かに木刀を振っていた。シロウ殿がそれを道場の奥の少し高くなっているところからじっと見ている。みんな木刀をむやみやたらと振らない。ひと振りひと振りに全身全霊を掛ける感じだ。道場全体に緊張感が漂う。

「これが抜刀術…」

ジークは練習風景を食い入るように見ている。

「おお、ハリム殿ではござらんか。」

シロウ殿が私に気付いて声を掛けてくれた。道場の緊張感が緩む。

「やあ、シロウ殿。門下生の練習風景を見せてもらうのは初めてだが、興味深いな。」

「我が流派では木刀を無闇に振り回しませぬからな。一刀入魂が信条でござるゆえ。」

シロウ殿の剣技もそんな感じだった。

「ちょっとあんた。マイは元気なんでしょうね。」

シロウ殿と話していると、キキョウが入ってきた。

「ほぇー。綺麗な人だけど、なんか怖い…」

キキョウの剣幕にサラが私に隠れた。キキョウは相変わらずだなぁ。

「こら、キキョウ。ハリム殿になんという口の聞き方を。」

「いえ、構いませんよ。キキョウ、マイは元気にやっているよ。」

「そう…その…寂しいとか言ってなかった?」

「いや、言ってなかったが?今は賑やかだから寂しく思う暇ないんじゃないかな?」

「ふーん。寂しくないんだ。」

きっとキキョウが寂しいんだな。

「シロウ殿の許可が出たら、マイのところに連れて行ってあげるよ?」

「ほ、本当?おじい様?」

「まだ駄目ござる。今の太刀筋では到底世の中に出すことは出来ないでござる。」

「もうー!もう!もう!もう!誰よりも強くなってやるわよっ。」

キキョウはまた道場の真ん中に戻り、黙々と木刀を振り始めた。

「やれやれでござる。」

「シロウ殿も苦労しているな。」

「しているでござる。しかし、才能は拙者以上なので7年後を楽しみにしていてほしいでござる。」

「ああ、期待しているよ。」

「して、今回の要件は?」

「ああ、この子を1週間預かってほしいんだ。キキョウのいい刺激にもなるかも。」

ジークを前に押し出す。

「ジークです。よろしくお願いします。」

「ほほぅ。なかなかいい目をしているでござる。」

「ああ、現地点ではキキョウより強いよ。」

「なんと、この歳で。それは教え甲斐があるでござるな。」

「お礼に、今から私の身体強化魔法を教えようか?」

「なんと、拙者たちにも使えるでござるか?」

「ああ、誰でも使えるはずだ。」

「では、お願いするでござる。」

シロウ殿は私たちを道場の奥に案内してくれる。シロウ殿が門下生の練習を見ていた段の上に上がる。見本用に左右にジークとサラに立たせる。

「みなっ。集合するでござる。」

シロウ殿の声に道場で練習していたキキョウや門下生たちがさっと私の方を向いて整列する。

「今から、ハリム殿が身体強化魔法というものを教えてくださる。みな、傾聴するでござる。」

みなの視線が私に集まる。ここにいる人はみな、強さに貪欲なのだ。

「私は大陸ではちょっと名の知れた魔導師のハリムという。私が考案した身体強化魔法を伝授したい。理論上誰でも出来るのでやってみて貰いたい。」

私は道場を見渡す。みな、いい目をしている。

「まず、足を肩幅に開きリラックスした姿勢を取ってほしい。身体の力を抜いて。目を瞑って。そして、身体の中心、鳩尾の少し上当たりの奥の方に熱いものがあることを感じて貰いたい。そこに片手を当てると分かりやすいかもしれない。」

キキョウや門下生たちは胸に手を当てて自分の魔力を探っている。シロウ殿もやっている。

「熱いものを感じただろうか?これが魔力である。これを全身に巡らせる。胸から頭、手の指先、足の先と魔力をゆっくりでいいので巡らせてほしい。ゆっくりできるようになったら、徐々に早く。魔力量ではなく、巡らせる速さで身体の強化具合が変わってくる。」

みんな真剣にやっている。キキョウはさすが筋がいいな。

「どうかな?シロウ殿。」

「拙者はまだ巡らせ申さぬが、この感覚は初めてでござるな。身体がポカポカするでござる。」

「キキョウ?どうだ?」

「ふん。まあまあだね。次来るまでにはあんたより上手くなっているよ。」

「ああ、キキョウなら出来るよ。期待している。」 

「ふん。」

キキョウが私にデレる日は来るのだろうか?

私とサラはジークを抜刀術道場に置いて、城に向かったのであった。

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