修行開始
次の日の朝から修業を開始した。古城の前の庭に集合した。初日から寝坊はいないみたいだ。
まずは体力作りに走る。もちろん普通に走るだけじゃない。古城がある山の中をマリアムとミザリを適当に走らせ、それに付いて行かせる。この山に道らしい道は一切ないからな。はぐれたやつは回収してやらねば帰ってこれないだろう。まぁこの山は魔物が出ないから大丈夫だろう。
私はサラとナタリアと古城の周りを走る。うん。清々しい。リーユーもみんなに付いて行った。抱かれているところしか見たことなかったが、けっこう速い。さすが獣人。
二刻ほどでみんな古城の前に戻ってきた。マリアムとミザリ以外はみんな息を切らせている。
「エドワード。よく付いていけたね。」
「ううん。付いて行けなかった。大きな魔力が頂上の方に移動するのが分かったから、それに向かって走っただけ。」
なるほど。
「ねぇねぇ、ハリム。」
「なんだい、サラ?」
「ヤンがいないよ。」
げ、はぐれたか。慌てて回収に向かった。
みんなで朝食を取る。食事は吸血鬼たちが頑張って作ってくれている。吸血鬼たちは自分たちの解放のためなので、喜んで作ってくれているが、ちょっと大変そう。
次は身体強化魔法の練習。みんなすでに進展度合いが違う。1番進んでいるのが実はジーク。マリアムとミザリも1段階目の魔力循環法までしか教えていない。マリアム、3段階目までいったらどんなに強くなるのか…ヤバいな、私も特訓しよ。
マリアム、ミザリ、ジークは私が第2段階を教える。ジークにももっと効率良くできるようになってもらいたい。
他は、シャーロットが魔力循環法を教える。エドワードがずいぶん上手になったがまだまだだ。
「武器を持って。マリアムとミザリも。」
「わらわもか?」
「ミザリ、武器苦手です。」
「武器を使う練習じゃなくて、武器に魔力を込めるんだ。ジーク、やって見せて。」
「はい。」
ジークの双剣がほのかに輝く。うん、だいぶスムーズになったな。私も魔剣ジュピターを抜き、魔力を込める。剣は強い光を放つ。
「ほぅ。見たことあるな。」
「ハリム様、綺麗です。」
「これが出来ないと強化魔法の3段階目に進めない。負担が大きすぎるんだ。」
「なに?まだ先があるのか?」
「ああ、ある。それが出来たらマリアムなんてどんなに強くなるか想像もつかないな。」
「ほぅ、そこまで言うなら。やるぞ、ミザリ!」
「はいです。」
二人はやる気になったみたいだ。
そのあとは昼までお勉強。子供は身体だけじゃなく頭も鍛えないといけない。
読み書きが出来ないヤンとリーユーは私が付きっきりで教える。読み書きくらい教えとけよな、脳筋の獣人どもめ。
他はナタリア先生による算術の授業。さすがナタリア、分かりやすい。私も聞きたいくらいだ。サラ、居眠りするなよ。
昼食を取ったあとは、みんなに結界魔法を教える。これもみんなに標準装備してもらいたい。防御力がぐんと上がるからな。
「結界魔法は身体の周りに結界を張るんだ。みんなには最低限、対物理、対魔法の結界を張れるようになってもらいたい。極めていけば、この古城に魔王が張った迷いの結界や、私の消音結界みたいなこともできるがまぁ今は置いておこう。結界魔法はミザリでも使えるように、放出系の魔法が苦手な者にも頑張れば使えるようになる。」
みんな興味があるようで食い入るように聞いている。
そのあとは希望者だけシャーロット先生による授業。魔法学に歴史や地理、政治なんかを教えてもらう。希望者以外はお昼寝。初日の参加者はナタリアとルーチェとマイだけだった。マイの頑張りがすごい。今後人数が増えるといいなぁ。
勉強あとは運動。実践的な訓練を行う。前衛のヤン、ジーク、ミザリはマリアムが、後衛の生粋の魔導師タイプのエドワードとリーユーはシャーロットが、物理攻撃と魔法を併用するルーチェは私が見る。サラとナタリアは別メニューでシュバルツとシンディが担当してくれる。マイとカミールも初めはここ。マイはともかくカミールな、マリアムのやつ変身教えるのに必死でカミールに魔法ぜんぜん教えてなかった。二人は上達したら私が担当する。
「うげ、マリアムさんですか…」
ミザリ、イヤな顔をするな。
私はルーチェに重力魔法を教えたり、森の中を立体的に動きながら、弓や魔法で攻撃する練習をする。
「ハリム様にマンツーマンで教えて頂けるなんて夢のようです。」
「マイとカミールがすぐに合流してくるぞ。」
「竜族と鬼族ですものね。追い付かれないようにしなければ。」
「ああ、頑張れよ。」
山の森の中を縦横無尽に動きながらルーチェと会話する。カミールなんてドラゴン型になったらすでにミザリレベルらしいからな。人型で鍛えたことはドラゴン型になってもしっかり還元さてるので問題ない。それにしてもルーチェってかわいいな。大人になったらきっと絶世の美女になるだろう。ハイエルフなので胸は期待出来ないが。
さんざん運動したあとは夕食と入浴。初日だからみんなへとへとだ。あとは寝るまで自由時間。あまり遅くまで起きてるなよ。
こんな感じで取り敢えず2週間やってみる。さて、どれくらい、みんな成長するだろうか。
夜、昨日5人でさんざん楽しんだので今日は誰も来ない。これからは順番を決めて私の部屋に押し掛けてくるらしい。気が向いたら2、3人で来ると言っていた。楽しみだ。
今日はひとりでゆっくり眠ろうと、ベッドの中で目を瞑っていると誰かが部屋に入ってきて私のベッドに潜り込んだ。
「リーユー、眠れないのかい?」
「ん。」
リーユーだった。リーユーは私の隣で丸くなる。まだ4歳だ。ひとり部屋は寂しいのだろう。私はリーユーの背中の毛を撫でる。全裸かよ。まぁ4歳だからいいか。
「寂しかったらいつでもここにおいで。」
「ん。」
この言葉が数年後、大変なことになるなんて、このときの私には全く想像できなかったのだ。




