婚約
空いている部屋を適当に割当て食堂に集合する。夕食中に自己紹介とシャーロットや他の吸血鬼たちに魔王の件を説明する。
「わたくしはその戦いに参加出来ないのですか?」
「ああ、そう言ってた。私たちが勝ったら解放すると。」
「では、この子たちに託さねばならないのですわね。」
「ああ、そうなるな。」
シャーロットは立ち上がり頭を下げる。
「わたくしたちのために命を掛ける決心をして頂き感謝の言葉もありません。」
シャーロットの姿を見て、皆、目に力が籠る。助ける相手が明確になるのいいことだよな。
「修行は明後日からな。明日は吸血鬼たちにこの古城を案内してもらってくれ。早く迷わないようになってもらいたい。」
この古城は広い。そこら辺の城よりも。帝国の宮殿よりは狭いが、ミシビ王国の王城よりは確実に広いのだ。
「明後日の日の出から修行を開始する。修行はかなり厳しくするつもりだ。そうでなければ15年後に間に合わないからだ。15年で私やシャーロット、マリアムと対等に戦えるようになってもらいたいと思っている。」
それはこの大陸最強の一角になるということ。
「ツラくなったら逃げ出してもらっても構わない。私に言ってくれればどこかへ送っていくし、麓のヘルミナ王国に逃げれば娘がいるので保護してくれるだろう。」
逃げ出す子を追い掛けるつもりはない。やる気がないと強くはなれない。
「古城内で不便があったら私か吸血鬼の誰かに言ってほしい。出来るだけ対応するつもりだ。どこかの町に出掛けたいとかでもいいぞ。私が転移魔法で送迎するよ。」
窮屈は精神的に良くない。伸び伸びと育ってほしい。
「以上だ。一緒に頑張ろう。よろしく頼むよ。」
私は立ち上がり頭を下げる。シャーロットやミザリ、吸血鬼たちも私に続く。
「サラ、ナタリア。君たちは別メニューな。」
二人は付いていけないだろうからな。
「うん。」
「はい。」
「シュバルツ、シンディ。」
「はい、ここに。」
二人の壮年の吸血鬼の男女が返事した。
「彼らはシャーロットより長く生きていて魔法の知識が広く教えるのも上手い。いろいろ教えてもらいなさい。」
「うん、わかった。」
「はい。承知しました。」
うん、いい返事。
「ところでハリム?」
「なんだい、シャーロット。」
「そちらのサラさんは新しい恋人ですの?」
「うぇ。」
変な声が出てしまった。シャーロット、鋭い。まぁそのうちばれるよな。
「うん。あたし、ハリムの恋人だ。シャーロットさんよろしくね。」
私が答える前にサラが元気に答えた。肝が座ってるなぁ。相手は最上位魔族『吸血姫』だぜ。
「あらあら。サラさんよろしくお願いしますわね。わたくし、1度もハリムの恋人と喧嘩したことありませんのよ。仲良くしましょうね。」
そういえばそうだな。シャーロットには感謝だな。
こうして夕食が終わり、みな部屋に帰りくつろぐのであった。
「今日は一段と激しかったですわね。」
「そうか?いつも通りじゃないか?」
夜中、シャーロットの部屋のベッドで二人で過ごす。
「で、サラさんだけでないのでしょう?今回は。話してくださいませ。」
「ん?ああ、そうだな。いろいろ話さないとな。まず、オリビアが亡くなった。」
「あらまあ、それはそれは。最近、名前を聞いてなかったと思ったら…あの子人族ですものね…」
「ああ、二週間後に葬儀があるから行ってくるよ。」
「ええ。わたくしここから出られるものなら行きたかったですわ。あの子はわたくしの数少ない人族の友人でしたのに…それで?新しい皇帝は貴方の子供でしたか?」
「うぇ。どうして分かるんだ?」
「あれだけべったりで人族に子供が出来ないはずがないではありませんか。」
そうだよな。分からなかった私が馬鹿だ。
「あとな、アンナは半年後からここで生活するかもしれない。」
「あらあら。では結婚ですか?」
「うぇ。け、結婚?」
「そうではありませんの?好き合った男女が一緒に暮らす、それは結婚でしょう?そうでなければなかなか親が許さないのではありませんか?」
そうか。そうかもな。
「でも、シャーロットはいいの?私が結婚して。」
「いいですわよ。わたくしともしてくださるのであれば。」
「うぇ。シャーロットは結婚したいの?」
「ええ、したいです。ずっとしたいと思っておりましたわ。」
「でも私、吸血鬼には…」
「構いませんわ。わたくし、ハリムの正妻の座は誰にも譲りたくありませんもの。」
「おぅ、分かった。では、今度、アンナに婚約指輪を渡してくるよ。」
「マリアムとサラさんにもですわよ。あとミザリも。全員幸せにしなさいな。」
「お、おう。任せろ。」
「他にもいるのでしょ?」
「うぇ。ああ、ライラとセダは冒険者続けるだろうからあれだけど、ビオーラともしたいかな。」
「あらあら、またたくさん名前が出てきましたわね。わたくしの予感通りでしたわ。そのビオーラともはっきりしてくださいませね。」
「おう、分かった。纏めて幸せにしてやるよ。」
「ふふふふ。それでこそわたくしのハリムですわ。さぁ、もう1回致しますわよ。」
「ああ。」
そのあとのシャーロットはいつも以上に激しかったのであった。
次の日、みんなが吸血鬼たちに古城を案内してもらっているので、私の研究室で早速指輪の制作に取り掛かる。材料はある。宝石は魔王の物がいっぱいあるけど使わない。どんな魔法が掛けられているか分かったもんじゃない。
まずは銀を火魔法で溶かし形を作る。それぞれの指の太さを思い出しながらリングの形を作った。宝石を付ける台座も忘れてはいけない。固まるのを待ち、鉄の棒に通して木槌で叩き、綺麗な円にする。それをヤスリで磨いていく。私、あんまり器用じゃいんだよな。センスもシャーロットに負けるし。でもそれぞれも女性のことを考え精一杯作った。宝石を台座に組み込み完成。6個の婚約指輪が完成した。ふぅ。丸一日掛かったな。外がもう暗い。私、お昼食べたか?あ、食べたか。ミザリがサンドイッチを持ってきてくれたんだった。
コンコン
ノックの音。
「ハリム様、夕食ですよー。」
ミザリだ。早速渡そうかな?あ、でもこういうのは順番が大事なんだっけ?まずはシャーロットからだな。
「はーい。今行くよー。」
返事をし、指輪を亜空間に収納して食堂に向かったのであった。
夜、シャーロットの部屋を訪れる。
コンコン
「どうぞ。」
ノックをするとシャーロットの声。部屋に入る。
「うぇっ!?」
中に入るとシャーロット以外にもマリアムとミザリ、サラがいたのだ。
「ハリム、わらわたちに重大な用事があるって聞いたぞ。」
「ハリム、なになに?どんな用事?」
「ハリム様、4人一辺ですか。恥ずかしいです。」
ミザリはうるさい。
「ふふふふ。こういうのは皆一緒がいいと思いまして。あとで、私だけじゃなかったの?とかは困るでしょう?」
「そうか。ああ、そうだな。」
よし、気合い入れて。
「シャーロット。」
「はい。」
「愛してる。結婚してほしい。」
「はい。喜んで。」
シャーロットの左手を取り指輪を薬指にはめる。そして抱き締めて唇を重ねる。
「今まで待たせて悪かったね。」
「いえ、今日で報われましたわ。」
シャーロットと離れる。
「え?結婚?」
「ほぅ、そういうことか。」
「ほゎー。」
他の3人はそれぞれの反応。
「マリアム。」
「うむ。」
「子供を生んでくれてありがとう。結婚しよう。」
「うむ。これでわらわも正式にハリムのものか。」
マリアムの左手の薬指に指輪をはめ、抱き締めてキスをする。
「ミザリ。」
「はいです。」
「結婚しよう。」
「ほぇー。いいのでしょうか?」
「私はミザリがいないとダメなんだ。」
ミザリの左手の薬指にも指輪をはめ、抱き締める。
「うぅぅぅ。」
「どうした?ミザリ?」
「嬉しすぎます。幸せすぎます。うえーん。」
ミザリは泣いてしまった。
「サラ。」
「え?あたしも?」
「当然じゃないか。サラおいで。」
「うん。」
サラと抱き合う。抱き合ったまま左手の薬指に指輪をはめた。
「サラ、幸せするよ。私のものになってくれ。」
「うん。喜んで。いいのかな、ハリムと出会ってからあたしずっと幸せだ。」
「私もだよ。」
「さて、ハリム。せっかくですので4人一辺に楽しみますか?」
シャーロット、なんて素敵な提案を。
「ほぅ、わらわは構わぬぞ。」
マリアムは嬉しそう。
「ミザリは大丈夫です。楽しそうです。」
ミザリは楽しそう。
「え?こんな綺麗な人たちと並べられるの?」
「そんなこと。サラさんも可愛いじゃありませんか。それにここまできて仲間外れはイヤでしょう?」
「うん。イヤだ。」
シャーロットの言葉にサラが反応する。
こうして私のとっても幸せな夜が始まったのだ。ああ、ここは聖アレフ教でいうところの天国なのかもしれないな。
マリア教では死後は輪廻に、聖アレフ教では天国へ行きます。




