帰る前にすること
「ハリムさん、なんかあったのか?」
「大きな音が聞こえたです。その子は?」
私とアンナとマイが武術道場に着くとヤンとミザリが飛び出してきた。
「まぁちょっといろいろとね。この子はマイ。これから私が預かることになった。ヤン、仲良くな。」
「鬼族のマイです。よろしくお願いします。」
マイが頭を下げる。ちゃんと教育されている。
「オレ、ヤン。よろしくな。か、かわいいな。」
ヤン?顔が赤いぞ?
「ヤン、色気出すのは早すぎです。吸血鬼のミザリです。同じ魔族同士仲良くしましょう。」
「はい。魔族なんですね。お綺麗ですね。」
「いやー、それほどです。いてっ。」
ミザリが調子に乗ったので、ついつい殴ってしまった。
「あ、ごめんごめん。つい。」
「うー。ついじゃないですよー。」
「はははっ。はははははっ。」
私とミザリがじゃれてると、マイが笑いだした。
「面白いですね。新しい生活が楽しみになってきました。」
「その前にミツムネ殿に許しを貰わないとな。おーい、そこの道場の女の子ー。」
道場の中にいた女の子をひとり呼ぶ。
「はーい。なんでしょう?」
「この子に合う服ない?これあげるから頂戴。」
私は残っていた7万イェンほどを女の子に渡す。
「ふぇー。こんなにー。すぐ用意します。」
女の子はマイを引っ張って道場の裏に消えた。
「ミツムネ殿にマイと謁見してくるからさ、アンナもここで待ってて。」
「うん。マイちゃんのために頼むわね。」
「おう。任せろ。」
私は着替えたマイを連れて城の謁見の間へと向かった。
「連れて行くが良い。」
ミツムネ殿からあっさり承認されてしまった。
「えらくあっさりですね?」
「その子の問題は余も心を痛めていたもんでな。人と鬼、長年共に暮らしてずいぶん溝はなくなったが、まだ完全ではないということじゃ。」
「なるほど。では有り難く連れていかせて頂きます。」
「すみませんでした。」
私の隣でマイが頭を下げる。
「よいよい。善きに計らえ。」
こうしてマイを連れ帰ることが決定したのだった。
武術道場の前でみんな集合した。
「ナタリア、これって直らない?」
ナタリアに壊れた髪飾りを見せる。
「原型ありますか?」
私は亜空間から髪飾りをひとつ取り出しナタリアに渡す。
「これ、ナタリアにあげるよ。」
「いいんですか?ありがとうございます。えっと…ここがこうなって、ここがこう。うん。なんとかなりそうです。全く元通りとはいきませんが。」
「本当ですか!それでも構いません!」
マイは直ると聞いて嬉しそうだ。
「さすが、ナタリア。頼りになるな。」
本当に戦闘以外は凄いな。
「ヤンとミザリは武術道場どうだったんだ?」
「もうバッチリです。ミザリも髪飾りほしいです。」
「バッチリかなぁ。オレはミザリより上手く出来たぜ。なんか早く戦いてぇ。」
「じゃあ、古城に行ったらじっくり見せて貰うよ。はい、ミザリ。」
私はミザリの髪飾りを付けてあげる。
「やっほい。ハリム様大好き!」
「マイ、キキョウに挨拶しなくていい?」
「はい。抜刀術道場にたまに来るんですよね?そのとき連れて来てください。」
「ああ、構わないよ。じゃあ帰ろうか。」
私はみんなを連れてランペドの屋敷に飛んだのであった。
ランペドの屋敷でマイをみんなに紹介したあと、アンナをシャワラムの『月夜亭』に送る。
「アンナ、ちょっと話があるんだけど?」
「古城に来い?」
あ、ばれてる。
「あ、その、なんだ、子供が増えたからさ。」
「ふーん。子供のためなんだ。」
やっぱアンナには勝てない。
「アンナともっと一緒に居たいんだよ。」
「んー。半年。半年待って。それまでにお母さん説得しとく。」
「ああ、ありがとう。アンナ愛してるよ。」
「もう。都合いいんだから。私も愛してるよ。」
二人で抱き合って口付けを交わしたのであった。
アンナと別れたあとロマニコフ商会へ行き、用意してもらっていた物を亜空間に放り込む。
「ハリムさん、帝国ギルドのギルマスが話があるって言ってましたよ。」
「ああ、ありがとう。今から行くよ。」
ロマニコフが教えてくれたので帝国ギルドに向かう。あ、ドラゴンの件も報告してなかったな。
帝国ギルドに行くとギルドマスターの部屋に通された。
「なんだった?ドラゴンの件?あれは…」
「いえ、あれはミシビ王国から連絡がありました。報酬いらないんですよね?」
「いらないっていうか、受け取れない。じゃあ、なんだ?」
「これです。」
ギルマスがテーブルの上に宝石を転がす。これは!
「サラくん、ジークくん、ルーチェくんが倒したブラッククラーケンの体内から出てきました。魔王ですか?」
「ロマニコフから聞いたか。これは間違いないな。あいつ、15年大人しくしてるつもり更々ねぇな。」
「他にも昨日サラくんたちが倒した盗賊の虎人が宝石を飲み込んでパワーアップしたと言っていました。遺体はまだ現地ですので確認はしていませんが、恐らく同じものかと。」
「サラたち、この1週間でけっこう修羅場潜ったな。この宝石、1度使うと効力を失うみたいだから大丈夫だと思うけど、扱いは慎重に頼むよ。」
「ええ、心得ています。」
「明後日には古城に帰るけどさ、なんかあったらすぐ私を召喚するようにロマニコフに言ってくれ。」
「畏まりました。助かります。」
私はギルマスとの話し合いを終え、ランペドの屋敷に帰ったのであった。
「ハリムー。」
次の日の正午すぎ、庭でみんなの稽古を見ているとサラが門から入ってきて走って私に抱き付いてきた。後ろからジークとルーチェも入ってきた。なんか1週間で顔つきが変わった。
「帝国ギルドのギルマスから聞いたけど、なんかいろいろ大変だったみたいだね。」
サラを抱き締めながら言う。
「うん。でも楽しかった。また行きたい。ねっ。」
「はい。すごく勉強になりました。」
「サラ様に傷ひとつ付けてませんよっ。」
「そうかそうか。では今度はダンジョンにでも放り込もうかな。」
「げ、だ、ダンジョン?」
「わぁ、面白そう!」
「行きたい!」
ジークとルーチェはノリノリだな。
「よし、全員揃ったな。みんな食堂に集合!」
みんなで食堂に移動する。
「『迷いの古城』に行く前にみんなに話さないといけないことがある。」
私はみんなに魔王のことを説明する。
「そういうことだから、この中の何人かは15年後の魔王との戦いに参加して貰いたい。よろしく頼む。」
私はみんなに頭を下げる。マリアムはうんうん言っている。
「あの、ミザリも行っていいんですか?」
「シャーロットは出さないって言われたけど、ミザリは大丈夫じゃないか?ここまで来れたんだし。」
「おお、いいですねー。やったりますよー。」
「上級魔族か。集落のみんなの敵討ちだ!」
ヤンは燃えている。強くなってくれよ。
「もちろん、行くよ。楽しみだなー。上級魔族。」
「ええ、ワクワクしますね。」
ジークとルーチェは強い敵と戦う楽しさを知ってしまったか?
「上級魔族…食べていいの?」
「んー。どうだろ?」
我が息子カミールは恐いもの知らずだな。
「上級魔族って強いのかな?」
エドワードもだな。
リーユーはかわいい手でサムズアップをくれる。
ここまではバトルジャンキーだからまぁ大丈夫だと思ってた。他だな。
「私で戦えるのでしょうか?」
マイはまだちゃんと戦い方を教わったことないからな。
「素質は十分にある。マイなら魔法も使えるようになると思うよ。」
「本当ですか?お役に立てるなら是非に。」
「あの…私は無理じゃないかと…」
ナタリアは心配そう。
「まぁ無理することはないよ。ナタリアは他で手伝ってほしいことたくさんあるし。」
「そうですね。私のやれることを精一杯やってみんなをサポートしますね。」
「あたしはどうなの?」
サラだ。
「サラは古城には来てほしいけど、戦いには連れて行きたくないんだけど。」
「でもでも、マリアムさん、ミザリさん、ヤン、ジーク、ルーチェ、カミール、エドワード、リーユー、マイで9人じゃん。あとひとりは?」
「ああ、これからも素質ありそうな子供は探すつもりだし、『フジ』で出会ったシロウ殿の孫娘っていう候補もいる。まぁ最悪は剣聖か拳聖に頭を下げるさ。」
「なるほどね。じゃあ気楽に楽しむよ。」
「ああ、サラはそれでいいよ。みんな、明日の夕方まで私は用事があるので、それまでに用意しといてくれ。」
「「はいっ。」」
さて、帰る前にライラたちの様子を見に行きますか。




