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大魔導師の育成  作者: 春夏秋冬
49/64

三重奏 4

サラ視点

次の日は盗賊討伐に出掛けた。盗賊っていうのは基本的に生活に困った一般人や下級の冒険者がなるもの。強くてもアレンでもなんとかなるレベル。楽勝でしょ。

また馬車を借りきる。昨日もだけど御者も雇う。あたしもジークもルーチェも馬車運転できないもん。覚えた方がいいかな?

馬車の中で魔力循環法や土魔法を習う。魔力循環はなんとかゆっくりと身体中を巡らせることに成功した。なんか身体がポカポカする。土魔法は休憩中に小さな土ゴーレムを作ることに成功した。中級までもう少し。ジークは魔力を身体の外に出すことが苦手みたいで苦戦してる。こんなすごい子でも苦手があるんだね。ちょっとホッとする。


正午すぎに依頼あった村に到着。早速村長に挨拶。3人とも小さいから大丈夫か心配されたけど、B級のギルドカードを見せたら納得してくれた。拠点にするようにと1軒の家を貸してくれた。ベッド4台とテーブルと椅子が4脚だけの小さな家。

さて捜索開始。目撃情報があった場所や被害があった現場周辺を見て回る。ランペドからアッバに向かう商隊が2つ行方を眩ませたらしい。商人や御者の人や護衛の冒険者が心配だ。なんとか見付けてあげたい。

でも、この日は収穫なし。借りた家で御者の人と4人で泊まった。ちなみに御者の人は無口なおじさん。


次の日も捜索したけど収穫なし。アジトなんてすぐに見付けられると思ったんだけどな。

この村に来て3日目の朝。

「今日はこの村でちょっと情報収集しようか。」

「そうですね。2日間全く進展なしですからね。」

「人相手ってけっこうめんどくさいな。魔物なら隠れずに出てくるもんな。」

そうね。ちょっと舐めてたかも。

「よし、聞き込みだ!」

「「はいっ。」」

畑仕事している人たちに盗賊の情報がないか聞き回る。でもみんな知らないみたい。

とある小さな家の前を通りかかったとき、家の中からひょろっとした男の人が出てきた。

「すいません。ここらへんに盗賊出るって聞いたんだけど知らない?」

「ん?ああ、西の林道は知っているかい?」

お、当たりかな?

「西の林道?目撃情報や商隊が消えた街道とは反対側だね。そっちには行ってないや。」

「おや、そうかい。私はそっちで見たって聞いたがね。」

おお、来た!新情報!

「ジーク、ルーチェ、新情報だよ。」

「やったな、早速行こう!」

「ええ、おじさん、ありがとうございます。」

あたしたちは新情報に舞い上がって、おじさんにお礼を言うと早速西の林道に向かった。おじさんの口がニヤリとなったことに全く気付かなかったんだ。


「ここが西の林道か。薄暗いね。」

「ええ、でもハイエルフの森ほどではありません。」

「いかにもって感じだな。」

3人で固まって歩く。林道の中程に来たときだった。

「!。囲まれています。」

「え!?」

「僕も今気付いた。多いぞ。」

え?え?なに?3人で立ち止まる。キョロキョロ見回してみるがあたしにはわかんない。

「サラ様、しっかり。ルーチェ、僕はサラ様を守ることに集中するから攻撃は任せた。バラけない方がいい。」

「そうですね。矢と魔法で攻撃します。」

「あ、えっとあたしは?」

「余裕があったら魔法で攻撃お願い。」

「うん。何人くらいいそう?」

「僕には40人くらいしかわかんないな。ルーチェは?」

「100人ほどいます。」

まじか。多くても20人って話だったのに。そう考えているとざっと周りに弓矢を構えた人が現れた。うわっ、林道の両脇に20人くらいずついる。やばい。杖を構える。ジークは双剣を抜き、あたしを守る体制。ルーチェはショートボウを構える。

「はっはっはっ。ガキが3人嗅ぎ回ってるって聞いたがひとりはハイエルフじゃねぇか。これは高く売れるぞ。」

前方から30人くらいの部下を引き連れてゆっくりと歩いてきた男。ひと目見て分かった。獣人だ。虎人族だ。獣人の中でも強いって言われてる種族だ。

「獣人ですか?珍しいですね。しかも虎人族がこんなところで盗賊ですか?」

ルーチェが話し掛ける。

「はん。ハイエルフのそういうしゃべり方が嫌いなんだよな。犯せばちょっとは聞き分けがよくなるかな?」

「汚らわしい獣人が。私に触れていいのはハリム様だけです。」

えー!?ルーチェ、ハリムが好きなの?

「やい、獣人。なんで僕たちがここに来ることが分かった。」

「ダークエルフのガキ、まだ気付かんのか、青いな。おい!」

虎人があたしたちの後ろの方に声を掛ける。

「ほぇっほぇっほぇっ。まんまと罠に嵌まるとはな。」

30人ほどの盗賊を引き連れて変な笑い方をしながら後ろから現れた男。村で情報をくれたおじさんだった。騙されたの?

「ちっ、そういうことか。」

「はん。分かったところでもう遅いはっ。やれ!女は殺すなよ!」

虎人が号令を掛けると両側から矢が一斉に飛んできた。

「いやっ。」

あたしは目を瞑っちゃう。

パシュンパシュン

って音がして矢があたしに刺さらない。目を開けると矢はジークが全部叩き落として、ルーチェの矢で片側の弓矢の盗賊が全員倒れてた。あたしもやらなきゃ。でも、人殺しとかしたことないんだよな。でも殺さなきゃ、あたしたち3人がヤバい。

「風の刃!」

もう片側の弓矢の盗賊の足を目掛けて風魔法を放つ。5人の足を切断した。なんか威力上がってる?魔力循環法の効果かな?残りの15人はルーチェがショートボウで倒しちゃった。

「このガキども強ぇぞ。残り全員で掛かれ!」

前後から男たちが剣を抜いて襲い掛かってくる。怖いっ。でもなんとしなきゃっ。

「風の刃、風の刃、風の刃!」

風魔法を後ろに向かって連発する。

ジークは前からの盗賊を、ルーチェが後ろからの盗賊を次々に倒して行く。

「こいつら強いっ。逃げろっ。」

「おい!こらっ、逃げんじゃねぇ!」

半分ほど倒すと盗賊たちが次々逃げて行く。ルーチェが逃げる盗賊の中から、村のおじさんを捕まえた。

「おい、獣人。もうお前だけだな。観念しろっ。」

ジークが虎人に向かって啖呵を切る。

「ここまでとはな。だがオレは逃げられねぇんだよ。」

虎人はそう言うと懐から小さな宝石をひとつ取り出した。あれはヤバい。

「ジーク!あの宝石、なんかヤバい!」

「うん。分かってる。」

ジークは虎人に襲い掛かる。あたしに見えない速さで。あたしに見えたのはニヤリと笑って宝石を飲み込んだ虎人だった。

ガキンッ

ジークの双剣が虎人の身体に弾かれた。え?生身だよね?

カンカンカン

おじさんをロープで縛り終えたルーチェも矢を放ったみたいだけど弾かれた。なにこれ?

「ぐおーーーーーーーー!!」

虎人が叫ぶと上半身が一回り大きくなった。

ジークはバックステップであたしの近くに戻ってきた。

「ジーク、どうしよ。ヤバいよ。ハリム呼ぶ?」

「いや、僕たちだけでなんとかしよ。」

「なんとかなるの?」

「ちょっと魔力を込める時間がほしい。ルーチェ、3分でいい。サラ様守りながら時間稼げるか?」

「3分なら大丈夫です。こいっ虎人っ。こっちですよ!」

あたしの近くでジークが1本の双剣を鞘に収め目を瞑り集中し始める。ルーチェは虎人を挑発するとシュンと消えた。虎人を見ると虎人も消えた。え!?

シュンシュン、ヒュンヒュン

音だけが聞こえる。この戦いに参加するのは無理だ…ルーチェ、無事でいて。風の癒しでも虎人に掛けちゃうかもしれない。

どれくらい経っただろうか。二人の動きが止まった。虎人が片膝を付いて…寝てる?あ!あの矢か。

「危なかったです。3本全部使ってなんとか眠らせるとこが出来ましたが、いつ起きるか…ジーク!速く!」

ルーチェがあたしの近くにやってきた。うわっ、傷だらけだ。慌てて水の癒しを掛ける。風の癒しは全体回復だから戦闘中は使い勝手がいいけど、単体の回復は水の癒しの方がいい。

「よし。ルーチェ、ありがとう。」

ジークはそう言うと1本の剣を脇に構えた。次の瞬間、閃光が走って虎人の頭が宙に舞ったんだ。


戦い終えたあたしたちは捕まえたおじさんに案内させてアジトを襲撃した。そこからはもうジークの独壇場。アジトに残っていた盗賊が少なかったのあるけど、あっという間にアジトを制圧。何人か殺されてたけど、10人の捕虜を救出して村に帰った。

村に帰ると捕まっていた人たちを村長に預けて、その日のうちにシャワラムに帰り、帝国ギルドに報告して人を派遣してもらった。何人か逃げた盗賊がいることも報告した。あの虎人、多額の報償金が掛けられていたみたいでまたたっぷりお金を貰えた。


次の日、『月夜亭』を出るとき、アンナさんにお金を払おうとしたら断られた。ハリムにいっぱい貰ったんだって。

朝からハリムに言われた通り浜辺を歩く。波音が心地いい。たまにサファギンっていう大きな魚に手足が付いた魔物が飛び出してくるけど、ブラッククラーケンや虎人に比べたら弱い弱い。あたしも絶好調。途中の村で一泊してハリムと別れてからちょうど1週間目の昼、あたしたちはランペドの町に到着した。あたしたち3人の冒険はこれでお仕舞い。

「楽しかったね。またやろうね。」

「すごくいい経験が出来ました。」

「今までの人生で1番充実してたな。」

ランペドの町は春の日射しが心地好かった。

なんとか4話で纏めました。最後の方駆け足ですみません。次からはハリムの視点に戻ります。

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