三重奏 3
サラ視点。
「これが海ですか。広いですねー。」
「ルーチェは海初めて何だっけ?」
あたしとジークとルーチェは昼食を取ったあとシャワラムを出て北の海岸にやってきた。砂浜じゃなくてゴツゴツとした岩場。岩に波が当たって水飛沫が上がる。
「はい。初めて見ました。なんか感動です。」
「そうか?ただのでっかい水溜まりじゃん。」
ジークは冷めてるなぁ。
「ジークは見たことあったんだっけ?」
「ランペドの北の海ならあるよ。グレーウルフ狩ってるときに見たな。」
けっこう遠くまで行ってたんだね。
「さて、クラーケン。居そう?」
「んー。今のところ見えないなぁ。ていうか、ここで戦うの足場悪くてキツいな。砂浜ないの?」
「ずっと西の方行けば砂浜だけど、調査エリアはこの辺りだから岩場しかないよ。」
「あらジークは岩場苦手なのですか?」
「ルーチェは平気なの?」
「私たちハイエルフは木の上で戦う種族。岩場くらいどうってことありません。」
「ぬぬ。僕だって大丈夫だ。よし、ちょっと暇だから二人に魔力循環法を教えるよ。」
「あ、いいね。お願い。」
「ええ、お願いします。」
大きな岩の上でジークに魔力循環法を習う。まずは体内の魔力を感じることから。ルーチェはすぐにわかったみたいで次の魔力を身体中に巡らせることを始めてる。あたしは焦らず自分の魔力を感じてみる。今まで魔力を感じようとしたことなかったな。集中するとあたしの中に熱い何かがあることが分かる。これが魔力かぁ。
「ん?なんか来るぞ。」
「はい。凄い勢いでこっちに近付いてきます。」
ジークとルーチェは海を指差す。ん?どこ?じっと海を見ると黒い影が近付いてくるのが分かる。
「これは当たりだな。サラ様ちょっと離れて。援護をお願い。ルーチェ、来るぞっ。」
「うん。分かった。ルーチェ、海洋性の魔物は風魔法以外効きが悪いからね。」
「そうなんですね。承知しました。」
あたしは海から少し離れ二人のサポートが出来る体制。ルーチェはその場でショートボウを構え、ジークは1歩前出て双剣を抜く。B級以上推奨の魔物…緊張する。
ズバーーーーン
波打ち際に大きな音を立てて現れたのは大きな烏賊の魔物。フェンリルより大きい。なんか全身黒い。クラーケンは美味しいって聞くけどこんなん食べられるのかな?足が見えてるだけで10本。もっとありそうだ。その足がジークとルーチェに襲い掛かる。ジークはその足スパッと切っちゃった。ルーチェはかわして胴体に矢を3本打ち込む。刺さったけど効いてなさそう。
「矢だと効果薄いですね。魔法に切り替えます。」
ルーチェは矢を背中に背負い、ナタリアちゃんのナイフを抜いた。あたしもっ。
「風の刃!」
グレーウルフを5匹まとめて殺せたんだ。なんとかなる。クラーケンの足を1本切断した。やった。
「動き遅いし楽勝だな。ルーチェ、胴体に攻撃集中させよう。」
「はいっ。」
ジークはすでに5本の足を切っていて、胴体目掛けて飛び出した。ルーチェも胴体に風の刃を打ち込む。クラーケンの胴体に深い傷は出来る。これはいけそう?って思った時だった。
バリバリバリ
クラーケンの身体が音を立てた。あ、この音聞いたことある。
「ジーク、ルーチェ!雷が来るっ。離れるか防御っ!」
「まじか。ヤバいっ。」
「任せてっ。岩の壁!」
ルーチェが土魔法でジークと自分の前に岩の壁を作った。その壁に雷が襲い掛かる。大丈夫かな?
「二人とも大丈夫?風の癒し!」
「ありがとう。ちょっと痺れたけど大丈夫。」
「私も平気です。」
「クラーケン、動き鈍ってる。畳み掛けるよっ。」
「「はいっ。」」
なんか仕切っちゃった。3人で胴体に攻撃を集中させる。クラーケンは海の中に逃げようとする。
「逃がしません。岩の針山!」
ルーチェが土魔法でクラーケンを縫い止める。よし、いい感じ。
「おら、とどめだっ。」
ジークはクラーケンに斬りかかる。なんか剣光ってるけど?クラーケンは真っ二つになって動きを止めた。やった、勝った!
「やったね、二人ともっ。」
「ええ、やりました。集団で戦うの楽しいですね。」
「うん。すげぇ楽だったよ。防御魔法と回復魔法のサポート。」
「あたしたちいいパーティーだねっ。」
「うん。」
「はい。」
倒したクラーケンは大きいので帝国ギルドに行って人を呼んで運んでもらった。なんでも、ブラッククラーケンっていうクラーケンの上位種だったんだって。報酬もいっぱいもらっちゃった。この依頼であたしたち3人はB級に認定された。すごい、飛び級だ。やったね。
「こんばんはー。」
「あら、サラちゃん。ハリムから聞いてるわよ。どうぞ。」
あたしたちは暗くなったので『月夜亭』にやってきた。今日は疲れたなぁ。
「どうぞどうぞ。食堂に座って夕食まだでしょ?その子たちがハリムの弟子?」
「そうなんだよ。二人とも強いんだよ。今、3人でブラッククラーケン倒してきたんだ。」
3人で食堂に座りながらアンナさんと話す。
「ふふふ。サラちゃん興奮しすぎ。私はアンナ。二人ともよろしくね。」
「僕はジーク。旦那様から話で聞いてます。よろしくです。」
「私はルーチェ。アンナさん、ハーフエルフなのに、ハイエルフより綺麗じゃないですか?」
「ふふふ。ありがと。肉料理でいい?」
「「はいっ。」」
「あたし、エールもくださいっ。」
やっぱり戦いのあとはエールだよね。二人にはまだ早いけど。楽しく食事してお風呂に入って、ジークとルーチェはハリムの部屋に寝に行った。あたしはアンナさんの部屋で泊めてもらうことになった。ハリムの部屋、ベッド2台になったらしいんだけど、せっかくだから1人1台がいいだろって。うん。疲れてるから助かる。
「あら、先に寝てて良かったのに。」
アンナさんのかわいい小物がたくさん置かれた部屋でひとりでソワソワしながら待っていると仕事を終えたアンナさんが部屋に入ってきた。
「うん。なんか先に寝るの悪いかなって思って。」
「ふふふ。サラちゃんはいい子ね。さあ、寝ましょ。」
二人でアンナさんの大きなベッドに潜り込む。うん、心地いい。アンナさんがそっとあたしの頭を撫でる。
「サラちゃん、ハリムの恋人になったんでしょ?」
「うぇ、その、あの、ハリムに聞いたの?」
「ううん。聞いてないけどハリムはサラちゃんのこと気に入ってたからそのうちかなって。」
「うん。ハリムの恋人になった。」
「ふふふ。これからよろしくね。頑張ってハリムを支えましょ。」
「うん。」
あたしはアンナさんの心地いい声を聞きながら夢の世界旅立ったんだ。
次の日はグレーウルフの群れの討伐に出掛けた。昨日お金いっぱい貰ったから、馬車を借りきった。アンナさんからお昼のサンドイッチも貰えた。
依頼のあった村に着くと村長の家に向かう。
「すぐに討伐に行かないの?」
ジークは聞いてくる。
「うん。まずは依頼主に挨拶してから。昨日の依頼は依頼主が国だったから行かなかったけどさ、依頼主が個人の場合はまずは挨拶してからなんだよ。」
「なるほど。勉強なります。」
村長さんに挨拶してから、討伐に向かった。なんていうかさ、あっという間だったよ。前衛のジーク強すぎなんだね。あたしもルーチェも出番なかった。村長さんに依頼完了のサインを貰ってその日のうちにシャワラムに戻った。馬車の中で、ルーチェから土魔法を教えてもらう。昨日見たけど、土魔法って便利だよね。この調子だったら3つの依頼すぐ終わるな。もう何個か受けれるかな。




