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大魔導師の育成  作者: 春夏秋冬
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怒る鬼

「どう?似合う?」

「す、凄く綺麗だ。言葉が出ない。」

「アンナさん凄く綺麗です。」

夜、マリアムとエマとリーユーをランペドも屋敷に送って、次の日、ナタリアとアンナを連れてやってきた。ヤンとミザリは今日も武術道場に置いてきた。ナタリアは『フジ』独特の服の話と書物を見せて貰えることになったので話すと付いてきてくれた。着物という『フジ』の服、着方が難しい。天才ナタリアに是非覚えて貰いたかった。

城でナタリアとアンナが奥の部屋に消えたので待っているとアンナが着物を着て登場した。昨日のミツムネ殿の夫人のとは違い、青色の生地の着物…美しい…

「これはこれは。大陸の女性は手足が長いので一段と映えるであるなぁ。」

ミツムネ殿も誉めてくれている。


昼を城で食べさせてもらったあと、アンナと町に散策に出掛けた。着物のままでは歩きづらいということで今は昨日のマリアムと同じ町娘ファッションだ。ナタリアは書物庫に消えていった。本を読むことが好きなんだろうな。とてもウキウキしていた。

「あ、この店、昨日の鬼族の少女がしていたような髪飾りの店だな。」

「わぁ、すごーい。きれ…」

アンナに見て貰いながら10個ほど購入して1個をアンナの頭に付けてあげる。これだけ買って1万イェン。ミツムネ殿はけっこうお金くれたんだな。

「凄いね、『フジ』って見たことない物がいっぱい。」

店を出て、歩きながらアンナと話す。

「ああ、私も驚いたよ。建物も食べ物も素晴らしいな、ここは。」

「うん。あの米とかいうパンのかわりに食べる穀物。あれ大陸でも出来ないのかな?」

「ロマニコフに言えば育てるかもな。金になりそうだし。」

さすがアンナ。1番気になるのは食べ物みたいだ。


アンナと買い物したり買い食いしたりしながら歩いているときだった。

ドーーン

という音が遠くから聞こえてきた。

「なんかあったみたいだな。行ってみるよ。アンナはどうする?一旦城に送ろうか?」

「付いて行くわよ。なんかあっても守ってくれるんでしょ?」

「それはもちろん。では行くよ。」

私はアンナを抱えて空中に舞い上がり、音がした方に飛んだ。この方角は…昨日マイという鬼族の少女を見たあたりだな…


「ぐらぁぁぁぁー!」

現場に着くとマイが正気を失い、変な奇声を上げながら暴れていた。身体から魔力が溢れだしている。昨日の髪飾りがないな。

周りには鬼族や刀を抜いた人族の男たちがいて必死に取り押さえようとしているが、鬼族は投げ飛ばされ、人族は刀をぐにゃりと曲げられ殴られて吹き飛ばされる。そのさらに周りでマイを苛めていたであろう子供たちが股間を濡らしながら尻餅を付いていた。あいにく死者はいなさそうだ。

「マイ…」

「あの子のこと知っているの?」

私の呟きにアンナが聞いてくる。

「ああ、昨日子供たちに苛められているのを見た。マイは昨日していた母親の形見だという髪飾りがないから、それが壊されたかして切れちゃったんじゃないかな。」

「そう…かわいそう…」

私とアンナが少し離れたところに降りて様子を伺っているときだった。

「みんなー。離れてー。拙に任せてー。」

キキョウが走ってやってきた。私をチラリと見たあと、ふんとそっぽを向いた。ありゃ、嫌われたな。

「キキョウ殿だ。」

「任せてよう。」

囲んでいた男たちが離れていく。

「ハリム殿ー。」

ゲンゾウも武士を4人連れて走ってきた。

「ゲンゾウ。ちょっと待った。キキョウに対応を任せてみよう。」

「はい。」

キキョウを見守る。

「マイ、拙よ。キキョウよ。どうしちゃったの?」

「ぐらぁー!」

キキョウは優しく話し掛けるがマイはキキョウに向けて殴り掛かる。なんとか避けたがギリギリだ。キキョウが悪いのではなくマイが速いのだ。

「マイ。お母さんに言われたから、絶対に手を上げないって言ってたじゃない。どうしちゃったのよ…」

「ぐらぁー!」

また殴り掛かるが、キキョウは避ける。

「キキョウー。たぶん髪飾りだ。マイが髪飾りをしていないっ。」

私は叫ぶ。

「あ、そういうことか…大切にしてもんね…」

「ぐらぁー!」

「キキョウー。このままでは埒が明かないぞ!」

「分かってるわよ!」

私が言った言葉にキキョウが切れ、腰のカタナを1本抜いた。

「おまっ。」

「峰打ちよ。峰打ちで気絶させるわ。」

キキョウは刃がない方で構え、マイに斬りかかる。しかし遅い。キキョウの力量はシロウ殿ほどではないし、刃が逆ではスピードが乗らないのだろう。案の定避けられて殴られてしまった。マイのスピードは私が魔力循環法を使わないといけないレベルだ。まぁこうなる。

「わっ!」

キキョウ吹き飛んでいく。私はアンナに大量に持たせている宝石のひとつに物理結界を付与した。

「ちょっと待ってて。」

「あ、うん。」

アンナから離れ、倒れているキキョウの元に行き、回復魔法を掛ける。

「いてててて。これが魔法?助かったわ。」

「私が対処しようか?」

「マイは拙の友達なの。部外者は引っ込んでて。」

キキョウは立ち上がり再びマイに向かって構える。

「ふしょー。ふしょー。」

マイは呼吸がおかしい。魔力がどんどん膨れ上がっていく。

「やっ。」

キキョウが斬りかかるがまた避けられ吹き飛ばされた。これはダメだな。私が対処しよう。私はマイに掌を向けると、私とマイの間にひとりの女性が立ちはだかった。アンナだ。

「アンナ…」

「ハリム。ここは私に任せて。大丈夫。ちょっと見てて。」

アンナはマイに近付いていく。マイはアンナに殴り掛かる。

ガキン

マイの拳はアンナの結界に阻まれた。

「マイちゃん、だっけ?私はアンナ。」

アンナは両手を広げてマイに話し掛ける。

ガキンガキンガキン

その間もマイは結界を殴り続ける。このまま殴り続けられるとまずいな。

「マイちゃん。怖かったよね。辛かったよね。」

アンナはどんどんマイに近付く、マイは一段と力を込めて…あれ?殴る力弱まってる?ついにマイの動きは止まった。

「寂しかったんだよね。」

アンナは広げた両手でマイを抱き締めた。

「う、うぇーーーん。うぇーーーん。」

マイはアンナに抱き締められたまま泣き出してしまった。

「ハリム殿の奥方、すごいな…」

ゲンゾウは驚いている。私も驚いている。アンナは凄いな。そしていい女だ。

その光景をキキョウはぼんやりと眺めていたのだった。


「マイ、母親の形見の髪飾りはどうしたんだい?」

騒動が終わったので、アンナとマイに近付き聞いてみる。マイは泣きながら向こうの地面を指差した。そこには粉々に砕けた髪飾りがあった。

「男の子たちに取られて…石で粉々に…わたし、それを見たらカッとなっちゃって…」

まぁそういうことだろうな。私はさっき買った髪飾りの中から1番マイがしていたのに近いのをマイの髪に付けてあげる。

「これは?」

「あげるよ。さっき買ったんだ。母親の形見の代わりにはならないだろうけど、直るまでの代替えだ。」

「え?直るの?」

「どうだろうか?私の仲間に戦闘以外はなんでもできる子がいてね。その子ならなんとかしてくれるかもしれない。」

「本当?直らなくてもいい。その気持ちだけで嬉しい。」

マイから離れたアンナも良いこと言ったとウインクをくれる。さて、事後処理だな。このままではマイが処刑されてしまう。

「マイ、私と一緒に来ないかい?」

「マイを外国に連れて行くなんて許さない。」

キキョウだ。

「ではキキョウ。今回のマイの罪、庇い切れるのかい?」

「そ、それは…」

「私はマイみたいな特集な力を持った子供を何人か預かっていてね。マイを特別扱いせずに育てることが出来る。」

「でも、ミツムネ様が…」

「ミツムネ殿とは仲良くさせて頂いていてね。『フジ』からの追放という形で片付けて貰おうと思っている。」

「じっちゃんが言ってた、城に来ている拙の婿候補の大陸の人ってもしかしてあなた?」

「ああ、シロウ殿がそんなことを言っていたかな。気付いてなかったのかい?」

「いや、その、異国の人間は珍しいけど、全くいないわけじゃないからな。」

「まぁ婿とか嫁とかは置いておくとして、これからよろしく頼むよ。」

「ああ。」

「さて、ゴンゾウ?どうだ?追放だけでなんとかなりそうか?」

「まぁ死者も出てませんし、なんとかなるでしょう。」

「だそうだ。マイ。どうする?マイ次第だよ。」

「あの…付いていったら歳が近い友達出来るかな?」

「マイ、何歳だ?」

「10歳だけど…」

「じゃあ、それくらいの年齢のは何人かいるよ。馬鹿なやつもいるけど苛めるようなやつはいないよ。すぐ仲良くなれるさ。」

「じゃあ、付いて行く。」

「あ、え?では、せ、拙も…」

マイが付いて来る決心を決めるとキキョウも付いて来たいという。なんだよ、キキョウの方がマイに依存してたんじゃねぇか。なんとなく昨日そんな気がしてたよ。

「キキョウはダメだ。私では抜刀術を教えられない。7年、シロウ殿に鍛えられるんだろ?聞いてないのか?」

「聞いたけど…」

「じゃあ決まりな。今からマイを連れて城へ行くよ。ゲンゾウ。悪いけど先に走ってミツムネ殿に報告を頼む。」

「はい。承知した。」

ゲンゾウは武士たちを連れて城の方へ走って行く。私とアンナとマイは、まだ不服そうなキキョウを置いて城へと向かったのであった。

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